
プレ男ズーって、名前がかわいいけど、どんな幻獣?

メル美嵐の鳥なんだって。神さまから、世界を動かす大事な書板をぬすんだの。
こんにちは、Dr. Taro です。 幻獣の解説、今回はメソポタミアのズーです。モリス・ジャストロウ『バビロニアとアッシリアの宗教』(1898年、プロジェクト・グーテンベルク)の「ズーの神話」の英訳と解説を読みました。メソポタミア神話の全体はメソポタミア神話の入門へ。

「象嵌(ぞうがん):人の頭をもつ牛と、ライオンの頭のワシのたたかい」紀元前2600〜2500年ごろ、シュメール(初期王朝時代)。貝殻。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)。嵐の鳥のイメージとしてのせています。美術館の題名には「ズー」の名はありません
プロフィール
| 名前 | ズー(ジャストロウの英訳では Zu) |
| 正体 | 嵐の神を、鳥の姿であらわしたもの。名前のもとの語は「強さ・あらあらしさ」を意味する(ジャストロウ) |
| よび名 | 「悪をはたらく者のかしら」(エタナの伝説) |
| ぬすんだもの | 神エンリルの「天命の書板」 |
| すみか | 近づけない山のかくれが |
1. 嵐はなぜ鳥なのか
- ジャストロウによると、ズーは、嵐の神を鳥の姿であらわしたものです。名前のもとの語は「強さ、あらあらしさ」を意味します
- 嵐が鳥にたとえられたのは、嵐のときの雲が、鳥の群れのように空を動いていくように見えるからだろう、とジャストロウは考えています
- 嵐は、雲と太陽のたたかいとみなされていました
2. 天命の書板をうばう
- ニップルの神エンリルは、「天命の書板」をもっていました。これをもつ者は、神々と人間を支配する、最高の力をもつのです
- ズーはそれを見て、ねたみの心をおこしました。「わたしが神々の書板をとり、すべての神々の決まりを定めよう。わたしの玉座をすえ、おきてを告げよう。天の神々(イギギ)すべてに命令しよう」
- ズーはエンリルの住まいへ行き、入口を見はりながら、夜明けを待ちます
- 「エンリルが、かがやく水をそそぎ、玉座にすわって王冠をかぶったとき、ズーはその手から天命の書板をうばいとった。そして、ズーは飛びさり、自分の山にかくれた」

プレ男王冠をかぶった、そのすきをねらったんだ!
3. 神々はみな、ことわった
- 書板をうばわれたエンリルは、力をうしないます。天の神アヌは、子である神々に言いました。「だれがズーをしたがわせ、全世界にその名を高めるか」
- まず、嵐の神ラマンがよばれます。アヌは「わが子ラマンよ、だれにもまけない勝利者よ。武器でズーをしたがわせよ。勝てば、多くの町におまえの神殿をたてよう」と約束しました
- けれどもラマンはことわります。「父よ、だれがあの近づけない山へ行けるでしょう。あなたの子の神々の中に、ズーのような者がいるでしょうか」。書板をもつズーは、神々の運命さえ決められるので、だれもかなわない、というのです
- そのあと、さらに2柱の神がよばれますが(ひとりはイシュタルの子とされます)、どちらも同じようにことわりました

メル美神さまたちがみんなこわがるなんて、ズーはそれだけ強かったんだね。
4. 結末はどうなったのか
- 粘土板はここからこわれていて、結末はのこっていません
- ジャストロウは、ほかの研究者(ハーパー)が「太陽の神シャマシュがズーをたおした」と考えたのに対し、マルドゥクがズーをたおして書板を手に入れた話だったのだろう、と考えています。マルドゥクへの讃歌に、ズーがマルドゥクにとらえられた悪の力のひとつとして出てくるからです(くわしくはマルドゥク)
- そして、この神話は、もともとエンリル(ニップルの町の神)がもっていた力を、バビロンの町の神マルドゥクがうけついだことを説明する話だろう、とジャストロウは解説しています

ジャストロウは、嵐が鳥にたとえられたのは、嵐のときの雲が鳥の群れのように空を動いていくように見えたからだろう、と考えています。
まとめ
- ズーは、嵐の神を鳥の姿であらわした、メソポタミアの怪鳥
- 神エンリルが王冠をかぶったすきに、天命の書板をうばって山へにげた
- 天の神アヌがよびかけても、嵐の神ラマンらは「ズーにはかなわない」とことわった
- 粘土板の結末はこわれているが、ジャストロウはマルドゥクがたおした話だと考えた
- マルドゥク、同じジャストロウの本のアダパ、翼をもつ幻獣グリフィンもどうぞ
参考文献
- Morris Jastrow. The Religion of Babylonia and Assyria(1898年). Chapter XXIV(Myths and Legends)の「The Zu Myth」. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/20758 (閲覧日:2026年10月10日)
- メトロポリタン美術館. Inlay: combat between a human-headed bull and a lion-headed eagle, Sumerian, ca. 2600–2500 BCE(1984.77、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/326897 (閲覧日:2026年10月10日)
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