
プレ男ギリシャ神話って、こわい話が多いイメージ…。やさしい話もある?

メル美あるよ。まずしい老夫婦が、旅人をもてなす話なんだって。最後は、ちょっと泣けるの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はギリシャ神話のバウキスとピレモンです。オウィディウス『変身物語』第8巻(B.モア訳、1922年、ペルセウス・デジタル・ライブラリー)の英訳を読みました。英訳では、ゼウスはローマの名前で「ユピテル」、ヘルメスは「メルクリウス」とよばれています。ギリシャ神話の全体はギリシャ神話の入門へ。

ヘンドリック・ハウト「ピレモンとバウキスの家のユピテルとメルクリウス」1612年。エッチング。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
プロフィール
| 名前 | 妻バウキス、夫ピレモン |
| すまい | プリュギアの丘の、アシとわらでふいた小さな小屋 |
| くらし | 若いころに結婚し、同じ小屋で年をとった。まずしさをはじず、使用人もいなかった |
| おとずれた神 | ゼウス(ユピテル)と、その子ヘルメス(メルクリウス) |
| さいご | カシとライム・ツリー(英訳のまま)の、寄りそう2本の木 |
1. 千の家が戸をしめた
- 話を語るのは、老いた英雄レレクスです。神々の力をうたがう若者に、レレクスは「プリュギアの丘で、わたしはこの目で、カシとライム・ツリーの2本の聖なる木を見た。枝がからみあうほど近くにはえていた」と語りはじめます
- むかし、そこへユピテルと、杖と翼をはずしたメルクリウスが、つかれた旅人の姿でやってきました。ふたりは食べものと寝床をもとめて歩きまわりましたが、「千軒の家が、みな戸にかんぬきをかけ、やさしい言葉ひとつかけなかった」
- ようやく、たまたま立ちよった小さな小屋で、親切な老夫婦がふたりをむかえました

プレ男千軒も追いかえされたんだ…。つかれた旅人に、それはつらい。
2. 心をこめたもてなし
- ピレモンは、旅人たちに休むよう言って長いすを出し、バウキスはその上に布をしきました。バウキスは、かまどの灰をかきたて、年老いた息をふきかけて火をおこし、小さななべをかけます
- ピレモンが庭でつんできたキャベツの葉をむき、天井からつるしていた大事なベーコンを少し切って、湯でやわらかくします。そのあいだも、ふたりは楽しい話で、待ち時間をわすれさせようとしました
- 食卓の脚が1本短かったので、バウキスは土器のかけらをはさんで安定させ、ミントでふききよめました。オリーブ、つけもの、チコリ、ラディッシュ、チーズ、灰でやさしく焼いた卵、そしてぶどう酒。2皿目には、木の実、ほしイチジク、ナツメヤシ、プラム、リンゴ、ぶどう、はちみつ
- 「そして、これらすべてのごちそうに、心からのもてなしと、気持ちのよい笑顔がそえられていた」

メル美ぜいたくな料理じゃなくても、心をこめてもてなすって、いちばんのごちそうだね。
3. へらないぶどう酒
- ところが、ふたりは気づきました。何度ついでも、ぶどう酒の器が、ひとりでにみたされるのです。客が神々だとさとったふたりは、手をあげて、そまつな家と食事のゆるしをこいました
- ふたりは、家の番をしていたたった1羽のガチョウを、神々にささげようと追いかけます。ところがガチョウはすばやくにげて、ほほえむ神々のもとへにげこみました。神々は「殺さなくてよい」と止めました
- 神々は言いました。「この悪い近所の者たちには、罰がくだる。だが、この家にはわざわいはおよばない。ふたりとも、わたしたちについて山の上へのぼりなさい」
4. 小屋は神殿に
- ふたりが杖をついて山をのぼり、ふりかえると、まわりの土地はみな沼にしずんでいて、自分たちの小屋だけがのこっていました
- 友だちの運命をなげいているうちに、小屋はかがやきだし、神々の神殿にかわりました。木の柱は大理石の柱に、わらぶきの屋根は金色に
- ユピテルはやさしく言いました。「正しく誠実な老人と、その妻よ。望みは何か」
5. 「同じときに」
- ピレモンはバウキスと相談してから、こう答えました。「わたしたちに、この神殿のお世話をさせてください。そして、長い年月をなかよくすごしてきたのですから、同じときにこの世を去らせてください。わたしが妻の墓を見ることがないように、妻がわたしをほうむることがないように」
- 願いはかなえられました。ふたりは命のつづくかぎり神殿の番人をつとめ、すっかり年をとったある日、神殿の石段の前で、むかしのことを話していると、バウキスはピレモンの体から、ピレモンはバウキスの体から、葉がめぶくのを見ました
- 木のこずえが顔の上までおおっていくあいだ、ふたりは話せるかぎり言葉をかわしました。「さようなら、さようなら、わたしの大切な人」。そして、そう言いあうあいだに、新しい葉と枝が、ふたりを同時におおいました
- レレクスは、「神々に大切にされた者は神となり、神々をうやまった者は、いまうやまわれている」と話を結んでいます

メル美「同じときに」っていう願い…。最後まで寄りそっていたんだね。

オウィディウスの英訳では、まずしい老夫婦のごちそうに「心からのもてなしと、気持ちのよい笑顔がそえられていた」と書かれています。
まとめ
- バウキスとピレモンは、プリュギアの小さな小屋にすむ、まずしくても仲のよい老夫婦
- 旅人の姿のゼウスとヘルメスを、千の家が追いかえしたが、ふたりだけは心をこめてもてなした
- へらないぶどう酒で、客が神々だと気づいた
- 小屋は神殿にかわり、ふたりは「同じときに死なせてください」とねがった
- さいごに、ふたりは寄りそう2本の木になった
- 旅人に化けたゼウス、ヘルメス、同じ『変身物語』のアラクネ、鳥になって寄りそった夫婦ケユクスとアルキュオネ、旅の女神を追いはらってカエルにされたレトとリュキアの農民もどうぞ
参考文献
- Ovid. Metamorphoses, 8.611–724(英訳:Brookes More、1922年). Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.02.0028:book=8:card=679 (閲覧日:2026年10月10日)
- メトロポリタン美術館. Hendrick Goudt, Jupiter and Mercury in the House of Philemon and Baucis, 1612(28.82.1、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/360167 (閲覧日:2026年10月10日)
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