
プレ男アラクネって、クモになった女の子の話だっけ?

メル美そう。女神と織物の勝負をしたんだって。腕前は、ほんとうに女神に負けていなかったの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はギリシャ神話のアラクネです。オウィディウス『変身物語』第6巻(B.モア訳、1922年、ペルセウス・デジタル・ライブラリー)の英訳を読みました。英訳では、女神アテナはローマの名前で「ミネルウァ」とよばれています。ギリシャ神話の全体はギリシャ神話の入門へ。

ステファノ・デッラ・ベッラ「パラスとアラクネ」(「神話のゲーム」より)1644年。エッチング。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
プロフィール
| 名前 | アラクネ |
| ふるさと | リュディアの山あいの町 |
| 家族 | 父はコロポンの、紫色に羊毛をそめる職人。母はすでに亡くなっていた |
| 名声 | 生まれや家がらではなく、腕前だけで名高かった |
| 相手 | 織物の女神アテナ(英訳ではミネルウァ) |
| 最後 | クモになり、いまも糸を出して巣を織る |
1. 腕前だけで名高い娘
- アラクネは、名高い町の生まれでも、名家の出でもありませんでした。父は、羊毛を紫にそめる、ささやかな仕事をする職人です。それでも、その織物の腕前で、リュディアじゅうに知られていました
- 山の精たちも、ぶどう畑や川べりをはなれて、アラクネの布を見に、糸をつむぐ手つきを見に、やってきました。羊毛を玉にまくときも、指先でほぐすときも、つむを親指でまわすときも、針で刺繍をするときも、その動きは美しく、「アテナに教わったにちがいない」と思えるほどでした
- ところがアラクネは、それをみとめません。「女神に、わたしと腕くらべをさせればいい。わたしが負けたら、なんでもさしだしましょう」
2. 老婆に化けた女神
- アテナは、白髪で杖をついた老婆に姿をかえて、アラクネのもとへ行きました。「年をとると、知恵がふえる。わたしの言葉をばかにしないでおくれ。人間のあいだで名声をもとめるのはかまわない。でも、女神の技をみとめないのはいけない。ゆるしをこいなさい。そうすれば女神はゆるしてくれる」
- アラクネは、こわい顔でにらみ、言いかえします。「年のせいで、ぼけているのね。そんな忠告は、娘やお嫁さんにしなさい。女神が自分で来ればいい。なぜ勝負をさけるの?」
- 老婆は言いました。「ミネルウァは来ている!」。そして老婆の姿をすて、女神の姿をあらわしました。山の精たちも女たちもひれふしましたが、アラクネだけは、顔を赤くし、青くし、また赤くしながらも、ひかずに立っていました

プレ男目の前に女神があらわれても、ひかないなんて…!
3. 2つの機(はた)
- 2人は、それぞれ機にむかい、たて糸をはり、ひで、よこ糸をとおしていきます。ティルスの紫をはじめ、虹のようにたくさんの色がまじりあい、金の糸もおりこまれました
- アテナが織ったのは、アテナイのアレスの丘。12柱の神々がゼウスをかこみ、海の神ポセイドンが三叉の矛で岩を打って馬を生み、アテナが槍で大地をついてオリーブの木を生やし、神々がオリーブを勝ちとする場面です
- そして布の四すみには、神々と張りあって罰を受けた人間たちの話を小さく織り、まわりを、自分の木であるオリーブの葉でかざりました
- アラクネが織ったのは、神々が姿をかえて人間をだました話の数々です。ゼウスが牛に化けてエウロペをさらう場面は、本物の牛が本物の波の上にいるように見えるほどでした。まわりは、花とツタの葉の模様でふちどられていました
4. ひとつのきずもない布
- アテナは、アラクネの布に、ひとつの小さなきずも、まちがいも見つけられませんでした。オウィディウスは「ねたみでさえ、完全な技をけなすことはできない」と書いています
- アテナは怒って、神々の悪いおこないをえがいた布を引きさき、つげの木のひで、アラクネの頭を何度も打ちました
- 思いつめたアラクネを見て、アテナはあわれに思い、その命をささえて救いました。けれども、怒りはおさまらず、こう言いわたします。「命はあたえよう。でも、おまえは糸にぶらさがって生きるのだ。おまえの子孫も、いつまでも」

メル美腕前では負けていなかったのに…。勝負の結果より、女神の怒りのほうがこわいね。
5. クモになったアラクネ
- アテナは、女神ヘカテの薬草のしるをアラクネにふりかけました。すると、髪がぬけ、鼻と耳がなくなり、頭も体もどんどん小さくなっていきます
- ほっそりした指は、わき腹について長い細い足になり、ほかの部分はおなかにすいこまれて、そこから細い糸を出すようになりました
- 「そしてそれからずっと、アラクネは、クモとして巣を織っている」

オウィディウスの英訳では、アテナはアラクネの布に、ひとつの小さなきずも、まちがいも見つけられなかった、と書かれています。
まとめ
- アラクネは、生まれではなく腕前だけで名高かった、リュディアの織物の名人
- 自分の技はアテナに教わったものではないと言い、女神との織りくらべにいどんだ
- アテナは神々に張りあった人間の罰を、アラクネは神々が姿をかえて人間をだました話を織った
- アラクネの布にはひとつのきずもなかったが、怒ったアテナに引きさかれた
- アラクネはクモにかえられ、いまも糸を出して巣を織っている
- 織物の女神アテナ、馬を生んだポセイドン、同じ『変身物語』のナルキッソス、ムーサに歌くらべをいどんだピエロスの9人の娘もどうぞ
参考文献
- Ovid. Metamorphoses, 6.1–145(英訳:Brookes More、1922年). Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.02.0028:book=6:card=1 (閲覧日:2026年10月10日)
- メトロポリタン美術館. Stefano della Bella, Pallas et Arachne, from ‘Game of Mythology’ (Jeu de la Mythologie), 1644(18.48.2-9、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/376729 (閲覧日:2026年10月10日)
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