
プレ男女媧って、中国の神話で人間を作った女神さまだっけ?

メル美こわれた空を直したこともあるんだって。スケールが大きい!
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまの解説、今回は中国神話の女媧(じょか)です。古い漢文の原文をウィキソースで読みました(書き下しと訳は Claude によるものです)。中国神話の全体は中国神話の入門へ。
プロフィール
| 名前 | 女媧(じょか)。『帝王世紀』では「女希」ともよばれ、「女皇」とされる |
| すがた | 「人頭蛇身」(人の頭に蛇の体)。「1日に70回すがたを変える」 |
| 姓 | 「風」(『帝王世紀』) |
| したこと | 5色の石で天をつくろった。黄土から人間を作った。楽器の笙簧(しょうこう)を作った |
| 伏羲との関係 | 『帝王世紀』は、女媧は伏羲(ふっき)のしくみを受けついだと書く。『淮南子』の古い注は「伏羲をたすけて治めた」とする |
1. 人の頭に、蛇の体
- 古い詩集『楚辞』の「天問」は、こう問いかけます。「女媧に体あり、孰(たれ)か之を制匠せる」(女媧には体があるが、だれがそれを作ったのか)
- その注で、王逸は「伝えによると、女媧は人の頭に蛇の体で、1日に70回変化する」と説明しています
- 地理書『山海経』大荒西経には、「女媧の腸」が変わって10柱の神になり、栗広(りっこう)の野に住んでいる、という話があります。郭璞は注で「女媧は、古代の神である女性で帝となった者。人の顔に蛇の体、1日に70回変わる」と書いています
- 三国時代の曹植も、「女媧の賛」で「人の首に蛇の形、70回神のように変わる」とうたっています
2. こわれた天をつくろう
後漢の班固『漢書』芸文志にも名前が出る思想書『淮南子』の覧冥訓です。
- 「往古の時、四極廃れ、九州裂け、天は兼ね覆わず、地は周(あまね)く載せず」
- 大むかし、天をささえる四方の柱がこわれ、大地はさけ、天はすべてをおおえず、地はすべてをのせられなくなった
- 火はもえさかって消えず、水はあふれて止まらず、猛獣が人を食べ、猛禽が老人や子どもをさらいました
- そこで女媧は
- 5色の石をねって、青い天をつくろい
- 大亀の足を切って、四方の柱を立て
- 黒い竜を殺して、冀州(中国の中心の地)を救い
- アシの灰を積んで、あふれた水を止めた
- 「蒼天補われ、四極正しく、淫水涸れ、冀州平らぎ」——天はつくろわれ、柱はまっすぐになり、水はひき、国は平らかになって、人びとは生きのびました

メル美空の穴を、石でパッチワークしたんだ!
3. そのあと、天が西北にかたむいた
『列子』湯問篇は、同じ話を、こう続けます。
- 「天地もまた物である。物には足りないところがある。だから昔、女媧氏は5色の石をねって、その欠けたところをつくろい、大亀の足を切って四方の柱を立てた」
- 「そののち、共工(きょうこう)氏が顓頊(せんぎょく)と帝の位をあらそい、怒って不周山(ふしゅうざん)に頭をぶつけ、天の柱をおり、大地をつなぐ綱を切ってしまった」
- 「だから天は西北にかたむき、太陽・月・星はそちらへ動く。大地は東南が足りず、川の水はみなそちらへ流れる」
- 中国の大きな川が東へ流れ、星が西へしずむことの説明にもなっているわけです
4. 黄土から人間を作る
『太平御覧』巻78が引く『風俗通』です。
- 「俗に説く。天地開闢して、いまだ人民あらず。女媧、黄土を摶(まる)めて人を作る」
- でも、ひとりずつ手で作るのは「劇務(いそがしすぎて)、力供するに暇あらず」。そこで女媧は、縄を泥の中に引いてふりあげ、とびちった泥を人にしたといいます
- 『風俗通』は、続けて「だから、富みたっとい人は黄土で作った人、まずしい人は縄で作った人だ」という当時の俗説も書いています。身分のちがいを神話で説明しようとした、むかしの言い伝えです

プレ男神さまでも、手作業がまにあわなくなるんだ…。でも、生まれで人の価値が決まるなんて、むかしの言い伝えだよね。
5. 楽器「笙簧」を作る
- 『太平御覧』巻78が引く『礼』には「女媧の笙簧」という言葉があり、その注は『世本』を引いて「女媧が笙簧を作った」と書いています。笙簧は、竹の管をたばねた楽器笙(しょう)の、音を出す簧(した)のことです
- 占いの書『帰蔵』には、女媧が雲の幕をはって占い、「吉。九州は明るく、太陽と月はかわるがわるめぐり、土地は平らかに、四方の国はなかよくなる」という答えを得た、という話も引かれています

「鏡」25〜220年、中国・後漢。青銅。クリーブランド美術館所蔵(CC0)。美術館の解説は、東の竜と西の虎のあいだの小さな生きものを「伏羲と女媧をあらわしているのかもしれない(?)」としています

『淮南子』によると、女媧は5色の石で天をつくろい、大亀の足で四方の柱を立て、アシの灰であふれた水を止めました。
まとめ
- 女媧は「人の頭に蛇の体、1日に70回変わる」古代の女神(『楚辞』の王逸注、『山海経』の郭璞注)
- 天がこわれたとき、5色の石で天をつくろい、大亀の足で四方の柱を立て、アシの灰で水を止めた(『淮南子』)
- のちに共工が不周山にぶつかり、天は西北に、大地は東南にかたむいた(『列子』)
- 黄土をまるめて人間を作り、まにあわなくなると縄で泥をはね飛ばした(『風俗通』)
- 楽器の笙簧を作ったとも伝えられる
- 中国神話の全体は中国神話の入門へ。日本の国生みのイザナギとイザナミ、土で最初の女性パンドラが作られたギリシャのパンドラとも読みくらべてみてください
参考文献
- 淮南子 覧冥訓. ウィキソース(中国語版). https://zh.wikisource.org/wiki/淮南子/覽冥訓 (閲覧日:2026年10月7日)
- 列子 湯問篇. ウィキソース(中国語版). https://zh.wikisource.org/wiki/列子/湯問篇 (閲覧日:2026年10月7日)
- 楚辞章句 巻3(天問、王逸注). ウィキソース(中国語版). https://zh.wikisource.org/wiki/楚辭章句/卷03 (閲覧日:2026年10月7日)
- 山海経 大荒西経. ウィキソース(中国語版). https://zh.wikisource.org/wiki/山海經/大荒西經 (閲覧日:2026年10月7日)
- 太平御覧 巻78(女媧氏の項。『帝王世紀』『帰蔵』『山海経』郭璞注、『礼』、『淮南子』、『風俗通』、曹植「女媧賛」の引用). ウィキソース(中国語版). https://zh.wikisource.org/wiki/太平御覽/0078 (閲覧日:2026年10月7日)
- The Cleveland Museum of Art. Mirror, China, Eastern Han dynasty, 25–220 CE(1915.606、CC0). https://clevelandart.org/art/1915.606 (閲覧日:2026年10月7日)
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