
プレ男人をブタに変える魔女!? こわすぎる…。

メル美でも、ブタにされても心は人間のままだったんだって。それに、さいごはオデュッセウスたちを助けてくれるの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はギリシャ神話のキルケです。ホメロス『オデュッセイア』第10巻(A.T.マレー英訳、1919年、ペルセウス・デジタル・ライブラリー)を読みました。オデュッセウスの旅の全体はオデュッセウスへ。ギリシャ神話の全体はギリシャ神話の入門へ。

アントニオ・テンペスタ「キルケによってブタに変えられるオデュッセウスの仲間たち」(Circe Changing Ulysses’ Men into Swine)、オウィディウス『変身物語』の挿絵135、1606年、エッチング。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
プロフィール
| キルケ | 人のことばを話す、おそるべき女神。魔法の薬をつかう |
| 親 | 太陽神ヘリオスと、オケアノスの娘ペルセ |
| きょうだい | 「心のわるい」アイエテス(コルキスの王) |
| すみか | アイアイエの島。みがいた石の館 |
| 道具 | 薬と杖 |
| きかなかったもの | ヘルメスの薬草「モーリュ」 |
1. 歌声の館
- オデュッセウスたちは、アイアイエの島にたどりつきました。高い所から見ると、森のむこうのキルケの館から煙があがっていました
- 22人の仲間が館をさがしに行くと、森の中に、みがいた石でつくった館がありました。まわりには山のオオカミとライオンがいました。キルケが薬で魔法をかけたけものたちで、仲間たちにおそいかからず、犬が主人にじゃれつくように、長い尾をふってまとわりつきました
- 中からは、キルケが大きな機(はた)の前を行き来しながら、美しい声で歌うのが聞こえました
2. ブタになった仲間たち
- 仲間たちがよびかけると、キルケは戸をあけて、みんなをまねき入れました。エウリュロコスだけは、わなをうたがって外にのこりました
- キルケは、チーズと大麦と黄色いはちみつをプラムノスのぶどう酒にまぜた飲みものをつくり、そこにふるさとをすっかりわすれさせる薬をまぜました
- みんなが飲みほすと、キルケは杖でふれて、彼らをブタ小屋にとじこめました。仲間たちは、頭も声も毛も姿もブタになりましたが、心はもとのままでした。彼らは泣きながら、ドングリやミズキの実をあたえられました

メル美心は人間のままでブタの姿にされるなんて…。そのほうが、つらいかも。
3. ヘルメスの薬草モーリュ
- エウリュロコスから知らせを聞いたオデュッセウスは、ひとりで館へむかいました。とちゅうで、金の杖をもつヘルメスが、ひげの生えはじめた若者の姿であらわれました
- ヘルメスは、地面から薬草をぬいてわたし、その性質を教えました。「根は黒く、花は乳のように白い。神々はモーリュとよぶ。人間がほりだすのはむずかしいが、神々にはなんでもできる」
- ヘルメスはまた、キルケの杖でふれられたら剣をぬいてせまること、そして、キルケに「もう害をくわえない」と神々にかけてちかわせることを教えました
4. ちかいと、もとの姿
- キルケは、オデュッセウスに薬入りの飲みものをあたえ、杖でふれて「ブタ小屋へ行け」と言いました。けれども、モーリュのおかげで、魔法はききませんでした
- オデュッセウスが剣をぬいてせまると、キルケはおどろいて言いました。「この薬を飲んで、魔法にかからなかった人はいない。あなたはきっとオデュッセウス。トロイアからの帰りに来ると、ヘルメスがいつも言っていた」。キルケは、オデュッセウスに害をくわえないとちかいました
- もてなしの食事が出ても、オデュッセウスは手をつけませんでした。「仲間たちを自由にして、この目で見るまでは、食べものも飲みものものどを通らない」
- キルケは杖を手にブタ小屋をあけ、ブタたちに別の薬をぬりました。すると毛がぬけおち、仲間たちは人間にもどりました。しかも、前より若く、背が高く、見た目もりっぱになっていました。みんなは泣いてよろこび、女神もあわれに思いました

プレ男もとにもどったうえに、若返ってる! キルケ、本当はやさしいのかも。
5. 1年の宿
- キルケは、「あなたたちが海と陸でどれだけ苦しんだか、わたしは知っています。食べて飲んで、元気をとりもどしなさい」と言いました
- 一行は、まる1年のあいだキルケの館にとどまりました。1年がたって季節がめぐると、仲間たちが「そろそろ、ふるさとのことを思いだしてください」とオデュッセウスに言いました

『オデュッセイア』では、ブタにされた仲間たちは、頭も声も毛も姿もブタになりましたが、心はもとのままでした。キルケが別の薬をぬると、前より若く、背が高くなって人間にもどりました。
まとめ
- キルケは、太陽神ヘリオスの娘で、アイアイエの島にすむ魔女の女神
- 館のまわりには、薬で手なずけたオオカミとライオンがいた
- オデュッセウスの仲間たちを、薬と杖でブタに変えたが、心は人間のままだった
- ヘルメスの薬草モーリュ(根が黒く、花が乳のように白い)のおかげで、オデュッセウスには魔法がきかなかった
- キルケは害をくわえないとちかい、仲間たちを前より若くしてもとにもどした
- 旅の主人公オデュッセウス、モーリュをくれたヘルメス、キルケが教えた海の怪物セイレーンもどうぞ
参考文献
- Homer. The Odyssey(英訳:A. T. Murray、1919年), 10.133–474. Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0136:book=10:card=133 (閲覧日:2026年10月10日)
- メトロポリタン美術館. Antonio Tempesta, Plate 135: Circe Changing Ulysses’ Men into Swine, from Ovid’s ‘Metamorphoses’, 1606(51.501.3986、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/401169 (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。



