
プレ男飲むと詩人になれるお酒!? ほしい!

メル美北欧神話の「詩の蜜酒」っていうの。オーディンが、ワシに変身してぬすみだしたんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回は北欧神話の詩の蜜酒です。スノッリ・ストゥルルソンの『新エッダ』の「ブラギの話」(R.B.アンダーソン英訳『The Younger Edda』1879年、Project Gutenberg)を読みました。海の巨人エーギルが神々の国をたずね、神ブラギに話を聞くという形で語られます。北欧神話の全体は北欧神話の入門へ。

「詩の蜜酒」(アイスランドの写本 SÁM 66、76r)1765〜66年、ヤーコプ・シグルズソン画。ウィキメディア・コモンズ(パブリックドメイン)。ワシの姿のオーディンが神々のかめに蜜酒をはきだし、巨人スットゥングもワシの姿で追ってきています
プロフィール
| 飲むと | 詩人(スカルド)になり、知恵者になる |
| もとになった者 | 賢者クヴァシル |
| 入れものの名前 | かめのソーンとボズン、釜のオーズレリル |
| かくした巨人 | スットゥング(娘グンロズに見はらせた) |
| うばった神 | オーディン(ボルヴェルクと名のる) |
| 詩のよび名 | 「クヴァシルの血」「スットゥングの蜜酒」「オーディンの獲物」など |
1. 和解のしるしから生まれた賢者
- 神々(アース神族)は、ヴァン神族と戦争をしていました。和解の話しあいで、両方の神々がひとつのかめにつばをはき入れました
- 神々は、この和解のしるしをむだにしたくなかったので、それで人の形をつくり、クヴァシルと名づけました。クヴァシルは「どんな問いにも答えられないことがないほど賢く」、世界じゅうを旅して、人びとに知恵を教えました

メル美仲なおりのしるしから、いちばん賢い人が生まれたんだ。
2. 小人たちのしわざ
- ところが、クヴァシルは、小人のフィアラルとガラルの家で命をうばわれてしまいます。小人たちは、クヴァシルの血を、2つのかめソーンとボズン、そして釜オーズレリルにうけ、蜜をまぜて、「飲めばだれでも詩人になり、知恵者になる」蜜酒をつくりました
- 小人たちは神々に、「クヴァシルは、知恵にむせて死んだ。だれも彼に十分な問いをできなかったから」とうそをつきました
- その後、小人たちは巨人ギリングをもなきものにし、その子スットゥングに、海の満ち潮でしずむ岩にとりのこされます。小人たちは命ごいをして、蜜酒をつぐないとしてさしだしました
- スットゥングは、蜜酒をフニトビョルグという山の中にかくし、娘のグンロズに見はらせました
3. ボルヴェルクの知恵
- オーディンは旅に出て、草をかる9人の下働きに出会い、砥石で鎌をといでやりました。鎌のよく切れるようになった下働きたちは、砥石をほしがります。オーディンが砥石を空になげると、みんながうばいあい、たがいの首に鎌をあててしまいました
- その夜、オーディンは、スットゥングの兄弟バウギの家にとまりました。名前は「ボルヴェルク」と名のりました。バウギが下働きがいなくなったとこぼすと、ボルヴェルクは「9人分の仕事をしよう。かわりに、スットゥングの蜜酒をひと口」と申しでました
- 夏じゅう9人分働いたボルヴェルクでしたが、スットゥングは「1しずくもやらない」とことわりました

プレ男神さまなのに、けっこうずるい手をつかうね…。北欧の神さまって、こういうところが人間っぽい。
4. ヘビになって、ワシになって
- ボルヴェルクは、ラティという錐(きり)をとりだして、バウギに山に穴をあけさせました。バウギがごまかして「あいた」と言ったので、ボルヴェルクが穴に息をふきこむと、くずが顔にとんできました。もう一度あけさせると、こんどはくずが中へとびました
- ボルヴェルクはヘビの姿になって、穴にもぐりこみました。バウギが錐でつきましたが、はずれました
- ボルヴェルクはグンロズのもとで3晩すごし、グンロズは3口だけ蜜酒を飲ませると約束しました。ボルヴェルクは、1口目でオーズレリルを、2口目でボズンを、3口目でソーンを飲みほしました
- そしてワシの姿になって、いそいで飛びたちました。スットゥングもワシになって追いかけます。神々は、オーディンが来るのを見て、庭にかめをならべました。オーディンは、神々の国アースガルズにつくと、蜜酒をかめにはきだしました
5. へぼ詩人の分け前
- けれども、スットゥングにつかまりそうになったオーディンは、蜜酒の一部をうしろへ出してしまいました。それはだれも気にとめなかったので、ほしい者はだれでももらえました。「これを、へぼ詩人の分け前とよぶ」とスノッリは書いています
- スットゥングの蜜酒は、オーディンが、神々と、詩をつくれる人びとにあたえました。だから詩のことを「オーディンの獲物」「オーディンの見つけもの」「オーディンの飲みもの」「神々の飲みもの」ともよぶのだ、といいます

スノッリの「ブラギの話」では、オーディンがうしろへ出してしまった蜜酒は「へぼ詩人の分け前」とよばれ、スットゥングの蜜酒は神々と詩をつくれる人びとにあたえられました。
まとめ
- 詩の蜜酒は、飲めば詩人や知恵者になれるお酒
- 神々とヴァン神族の和解のしるしから生まれた賢者クヴァシルの血に、小人たちが蜜をまぜてつくった
- 巨人スットゥングが山の中にかくし、娘グンロズに見はらせた
- オーディンは「ボルヴェルク」と名のり、ヘビになって山にもぐり、3口で3つの入れものを飲みほし、ワシになって持ち帰った
- うしろへ出してしまった分は「へぼ詩人の分け前」
- 同じ「詩語法」の、石の心臓の巨人フルングニル、蜜酒をうばったオーディン、オーディンにつかえるワルキューレ、北欧神話の入門もどうぞ
参考文献
- Rasmus B. Anderson(英訳). The Younger Edda(1879年). Brage’s Talk, Chapter IV “The Origin of Poetry”(3–5). Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/18947 (閲覧日:2026年10月10日)
- ウィキメディア・コモンズ. SÁM 66, 76r, Mead of Poetry(Jakob Sigurðsson、1765–1766年、パブリックドメイン). https://commons.wikimedia.org/wiki/File:SÁM_66,_76r,_Mead_of_Poetry.jpg (閲覧日:2026年10月10日)
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