
プレ男心臓まで石の巨人!? トールとどっちが強いの?

メル美決闘の結末はトールの勝ち。でも、トールの頭には石のかけらがのこっちゃったんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回は北欧神話の巨人フルングニルです。スノッリ・ストゥルルソンの『新エッダ』の「詩語法」の「トールとフルングニル」(R.B.アンダーソン英訳『The Younger Edda』1879年、Project Gutenberg)を読みました。北欧神話の全体は北欧神話の入門へ。

ルートヴィヒ・ピーチュ「トールとフルングニル」(R.F.ロイシュ『北欧の神々の伝説』1865年の挿絵)。ウィキメディア・コモンズ(パブリックドメイン)
プロフィール
| すがた | 心臓は石で、とがった三角。頭も石 |
| 武器 | 砥石(といし) |
| 防具 | 広くてあつい石の盾 |
| 馬 | グルファクシ(英訳では Goldfax) |
| 強さ | 巨人の中でいちばん強い者 |
1. 馬の競走
- オーディンは、愛馬スレイプニルに乗って巨人の国へ行き、フルングニルのもとへ来ました。フルングニルが「金のかぶとで空と海をかけてくるのはだれだ。いい馬だな」と言うと、オーディンは「この馬にかなう馬は、巨人の国にはいない。首をかけてもいい」と答えました
- フルングニルは「わしの馬グルファクシのほうが、歩はばが大きい」と言い、おこって馬にとびのり、オーディンを追いかけました
- オーディンははやく走りましたが、かっとなったフルングニルは、気づいたときには神々の国アースガルズの門の中まで来ていました
2. 酒の席での大口
- 神々はフルングニルを酒にまねき、ふだんトールが使う大杯で酒を出しました。フルングニルはそれをみな飲みほし、よっぱらって大口をたたきはじめました
- 「ヴァルハラを巨人の国へもっていき、アースガルズをこわし、神々をたおしてやる。アースの酒はみんな飲みほしてやる」
- 神々はうんざりして、トールの名をよびました。たちまちトールがあらわれ、ハンマーをふりあげて「だれが巨人をここで飲ませているのだ」といかりました

メル美名前をよんだだけで、すぐ来るんだ! トールは神々の用心棒みたい。
3. 決闘の約束
- フルングニルは言いました。「わしはオーディンにまねかれ、その守りのもとにいる。武器をもたないわしを殺しても、トールの名誉にはなるまい。わしの国の境のグリョートゥナガルザルで、決闘する勇気があるか」
- トールは、決闘をいどまれたのははじめてだったので、ことわるような神ではありませんでした
- 巨人たちは、この決闘をとても大事なことと考え、フルングニルの味方として、粘土の巨人モックルカールヴィをつくりました。けれども、それに見あう大きな心臓が見つからず、牝馬の心臓を入れたので、トールが来るとふるえてしまいました
4. ハンマーと砥石
- フルングニルの心臓は、石でできていて、とがった三角でした。頭も石、盾も石。砥石を肩にかついで、トールを待ちました
- トールのおとものシャールヴィが、さきにかけていって言いました。「盾を前にかまえているな。でもトールは、地の下から攻めるつもりだぞ」。フルングニルはあわてて盾を足もとにしいてその上に立ち、砥石を両手でにぎりました
- いなずまと大きな音とともに、トールがハンマーを投げつけ、フルングニルも砥石を投げました。ふたつは空中でぶつかり、砥石はわれて、ひとつは地に落ちて火打ち石の山になり、もうひとつはトールの頭にささって、トールはたおれました
- いっぽうハンマー・ミョルニルは、フルングニルの頭を打ちくだき、巨人はトールの上にたおれこんで、その足がトールの首にのしかかりました

プレ男勝ったけど、巨人の下じきに! どうなっちゃうの?
5. 生まれて3晩の息子
- シャールヴィも、神々も、だれも巨人の足をどけられませんでした
- そこへ、トールと巨人の女ヤールンサクサの子マグニがやってきました。生まれてまだ3晩でしたが、巨人の足をはねのけて言いました。「父さん、ぼくがおそく来たのは残念だった。この巨人に会っていたら、こぶしでたおせたのに」
- トールは息子をほめ、フルングニルの馬グルファクシをあたえました

アンダーソン訳では、トールのハンマーとフルングニルの砥石は空中でぶつかり、われた砥石のかけらがトールの頭にささりました。
6. 頭の中の石
- 家に帰ったトールの頭には、まだ砥石のかけらがささっていました。巫女グローアが、まじないの歌でかけらをゆるめはじめました
- トールはお礼に、グローアの夫アウルヴァンディルを北の国からかごにいれて運んできたこと、こごえた足の指を空へなげて「アウルヴァンディルの足の指」という星にしたことを話し、「夫はもうすぐ帰ってくる」と伝えました
- グローアはよろこびのあまり、まじないの歌をわすれてしまい、かけらはそれ以上ゆるみませんでした。「だから、火打ち石を床の上で投げてはいけない。トールの頭の石が動くから」と、スノッリは書いています
まとめ
- フルングニルは、石の心臓・石の頭・石の盾をもつ、巨人いちばんの強者
- オーディンとの馬の競走でアースガルズまで来て、酒によって大口をたたいた
- トールとの決闘で、ハンマーと砥石が空中でぶつかり、フルングニルはたおれた
- 巨人の足の下じきになったトールを、生まれて3晩の息子マグニが助けた
- 砥石のかけらは、いまもトールの頭にのこっている、と語られる
- ハンマーなしで巨人の館へ行ったトールとゲイルロズ、雷の神トール、スレイプニルに乗ったオーディン、同じ「詩語法」の詩の蜜酒もどうぞ
参考文献
- Rasmus B. Anderson(英訳). The Younger Edda(1879年). Skaldskaparmal, “Thor and Hrungner”. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/18947 (閲覧日:2026年10月10日)
- ウィキメディア・コモンズ. Thor und Hrungnir(Ludwig Pietsch〈1824–1911〉、R. F. Reusch『Die nordischen Göttersagen』1865年、パブリックドメイン). https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Thor_und_Hrungnir.jpg (閲覧日:2026年10月10日)
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