
プレ男トールって、ハンマーを持った雷の神さまだよね。映画でもかっこいい!

メル美じつは、花嫁さんの姿になったこともあるんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまの解説、今回は北欧神話のトールです。スノッリ『新エッダ』(R.B.アンダーソン訳、1879年)と、『古エッダ』の「スリュムの歌」(H.A.ベロウズ訳、1923年)の英訳を、プロジェクト・グーテンベルクで読みました。北欧神話の全体は北欧神話の入門へ。
プロフィール
| 立場 | アース神族の筆頭。「神々と人間の中でいちばん強い」 |
| 家族 | 父オーディン、母ヨルズ(大地)。妻シヴ |
| 国と館 | 国はスルーズヴァング。館ビルスキールニルには540の床(部屋)があり、「人が作った家の中でいちばん大きい」 |
| 乗りもの | 2頭のヤギタングニョーストとタングリスニルが引く車 |
| 3つの宝 | ハンマーミョルニル、力の帯メギンギョルズ、鉄の手袋 |
1. 3つの宝
『新エッダ』の『ギュルヴィたぶらかし』21節は、トールの宝をこう説明します。
- ミョルニル:霜の巨人や山の巨人は、このハンマーがふり上げられると、それとわかる。トールはこれで、巨人たちの父や仲間の頭を何度もわってきた
- メギンギョルズ(力の帯):しめると、力が2倍になる
- 鉄の手袋:ハンマーの柄をにぎるときに、なくてはならない
- 「トールの大きな仕事をすべて語れるほど、かしこい者はいない。わたしが知っていることを話すだけでも、夜がふけてしまう」
2. ハンマーがない!(スリュムの歌)
『古エッダ』の「スリュムの歌」です。ベロウズは、北欧神話でいちばん有名な詩のひとつで、「世界でいちばんすばらしいバラッド」とよばれたこともある、と紹介しています。
- 目をさましたトールは、ハンマーがないことに気づき、怒ってひげをふるわせます。「聞け、ロキ。地上でも天でも、だれも知らない。わたしたちのハンマーがぬすまれた」
- ロキは女神フレイヤの羽の衣を借りて、巨人の国へ飛んでいきます。巨人の王スリュムは、犬に金のひもをつけ、馬のたてがみをなでながら、こう言いました
- 「トールのハンマーは、わたしがかくした。地の底8マイルのところに。フレイヤをわたしの妻にくれなければ、だれにも返さない」
- 神々がフレイヤに「花嫁のベールをつけて」とたのむと、フレイヤは激しく怒り、神々の館がゆれ、首かざりブリーシンガメンがはじけ飛びました
3. トール、花嫁になる
- 神々と女神たちが集まって相談すると、見張りの神ヘイムダルが言います。「トールに花嫁のベールをつけよう。ブリーシンガメンの首かざりもかけよう。腰にはかぎをじゃらじゃらさせ、ひざまでの女の服、胸には大きな宝石、頭にはかわいい帽子を」
- トールは「そんなことをしたら、神々に男らしくないと言われる」といやがりますが、ロキが「だまれ、トール。ハンマーを取りもどさないと、巨人たちがアースガルズに住みつくぞ」と言い、トールはしぶしぶ花嫁姿になりました。ロキは侍女の役でついていきます

プレ男いちばん強い神さまが、花嫁のベールをかぶってお嫁入り!?
4. 大食いの花嫁と、するどい目
- 結婚の宴。花嫁(トール)は、牛1頭、サケ8匹、女たちのためのごちそうもぜんぶ食べ、はちみつ酒を3たる飲みほします
- スリュムが「こんなにがつがつ食べる花嫁は見たことがない」とおどろくと、侍女(ロキ)が答えます。「フレイヤは、巨人の国に来たくて、8夜のあいだ何も食べなかったのです」
- スリュムがベールの下をのぞいてキスしようとすると、広間のはしまで飛びのきました。「フレイヤの目はなぜこんなにおそろしい。目から火がもえているようだ」。侍女はまた答えます。「巨人の国に来たくて、8夜ねむれなかったのです」
- スリュムは言います。「花嫁を清めるために、ハンマーを持ってこい。ミョルニルを花嫁のひざにおけ」
- ハンマーを見たトールの心は、胸の中で笑いました。トールはまずスリュムを、それから巨人の一族をたおしました。「こうして、オーディンの子は、ハンマーを取りもどした」

メル美ロキの言いわけが、毎回うまい! このときはロキが味方で大活躍だね。
5. ほかの冒険と、最後の戦い
- 巨人の王との力くらべでは、大食い・飲みくらべ・ネコ持ち上げに負けたように見えて、じつは相手は「火」「海」「世界の大蛇」でした(トールとウートガルザ・ロキ)
- 巨人ヒュミルと海に出て、牛の頭をえさに世界の大蛇をつりあげたこともあります(ヨルムンガンド)
- 世界の最後の日ラグナロク、トールはミズガルズの大蛇をたおして大きな名誉を得ますが、大蛇がふきかけた毒で、9歩さがったところでたおれて死にます(『新エッダ』)

エミール・ドープラー「トールとミズガルズの蛇」1905年ごろ刊『ヴァルハラ ゲルマンの神々の世界』より(ドープラーは1922年没)。ウィキメディア・コモンズ(パブリックドメイン)

『新エッダ』は、トールの大きな仕事をすべて語れるほどかしこい者はいない、知っていることを話すだけで夜がふけてしまう、と書いています。
まとめ
- トールは「神々と人間の中でいちばん強い」雷の神。父オーディン、妻シヴ
- 3つの宝は、ハンマーミョルニル、力を2倍にする帯、鉄の手袋。2頭のヤギが車を引く
- 巨人スリュムにハンマーをぬすまれ、花嫁のベールをつけてフレイヤのふりをし、宴でハンマーを取りもどした
- ラグナロクではミズガルズの大蛇をたおし、その毒で9歩さがってたおれる
- 北欧神話の全体は北欧神話の入門へ。父オーディンの記事もどうぞ
参考文献
- Snorri Sturluson. The Younger Edda; Also called Snorre’s Edda, or The Prose Edda(英訳:Rasmus B. Anderson、1879年). The Fooling of Gylfe, section 21 and Ragnarok. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/18947 (閲覧日:2026年10月7日)
- The Poetic Edda(英訳:Henry Adams Bellows、The American-Scandinavian Foundation、1923年). Thrymskvitha(The Lay of Thrym), stanzas 1–33 and introductory note. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/73533 (閲覧日:2026年10月7日)
- Wikimedia Commons. File:Thor und die Midgardsschlange.jpg(Emil Doepler『Walhall, die Götterwelt der Germanen』ca. 1905、PD-old). https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Thor_und_die_Midgardsschlange.jpg (閲覧日:2026年10月7日)
- Wikidata. Emil Doepler(Q315103、1855年10月29日〜1922年12月21日). https://www.wikidata.org/wiki/Q315103 (閲覧日:2026年10月7日)
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