
プレ男雷神トールって最強の神さまでしょ?力くらべで負けることなんてあるの?

メル美巨人の国で、ぜんぶ負けた話があるんだって。でも最後に大どんでん返しがあるよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、北欧神話のトールとウートガルザ・ロキの力くらべです。スノッリ・ストゥルルソン『散文のエッダ』の英訳(R.B.アンダーソン訳『The Younger Edda』、1879年)の47〜48節を、プロジェクト・グーテンベルクで読みました。

エルマー・ボイド・スミス「わたしは巨人スクリューミルだ」1902年刊、アビー・ファーウェル・ブラウン『巨人たちの時代に』の口絵(スミスは1943年没)。旅の途中でトールが出会う巨人で、のちに、じつはウートガルザ・ロキだったとわかります。ウィキメディア・コモンズ(パブリックドメイン)
巨人の王の城へ
- トールは、ロキと、家来の若者シャールヴィ(英訳では Thjalfe)たちと、巨人の国ヨトゥンヘイムを旅していました
- 平原に、首をうしろにそらさないと上が見えないほど高い城がありました。門は閉まっていて、一行は格子のすきまから中に入ります
- 大広間には、ほとんどがとても大きな男たち。王のウートガルザ・ロキは、トールを見て歯を見せて笑い、「この若造が、あのトールか」とばかにします。「ふつうの人よりすぐれた技がなければ、ここにはいられない」
5つの力くらべ、ぜんぶ負け
| 勝負 | 挑んだ人 | 相手 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 大食い | ロキ | ロギ | 肉の入った長い桶の両はしから食べ、まんなかで会う。ロキは肉だけ、ロギは肉も骨も桶まで食べた |
| かけっこ | シャールヴィ | フギ | 3回走って3回とも大差で負け |
| 飲みくらべ | トール | 角の杯 | 「1回で飲みほせば上手、3回で飲めないやつはいない」と言われたが、3回でも少ししか減らない |
| ネコ持ち上げ | トール | 灰色の大きなネコ | 全力で持ち上げても、ネコは足を1本上げただけ |
| すもう | トール | 王の育ての親の老婆エッリ | トールが力を入れるほど老婆は強くなり、トールは片ひざをついた |

プレ男おばあさんにまで負けた!?トール、どうしちゃったの…。
別れぎわの、大どんでん返し
翌朝、城を出たところで、王はトールに本当のことを打ち明けます。「城を出たいまだから言おう。あなたがこんなに強いと知っていたら、城には入れなかった。私は、まぼろしであなたをだましていたのだ」
| 勝負 | じつは… |
|---|---|
| 大食いの相手ロギ | 野火(ワイルドファイア)。だから肉と同じ速さで桶まで燃やした |
| かけっこの相手フギ | 王の考え。シャールヴィが考えの速さについていけるはずがない |
| 角の杯 | 先が海につながっていた。海辺に行けば、あなたが飲んだぶんだけ海が減っているのがわかる。それがいま「引き潮」と呼ばれているものだ |
| ネコ | じつは、すべての陸地をとりまくミズガルズの大蛇。あなたは手が天にとどくほど持ち上げた。見ていた者はみなこわくなった |
| 老婆エッリ | 老い。年をとれば、老いに負けない者はいない。それなのに片ひざですんだのは、おどろくべきことだ |
- 王は、旅の途中でトールがハンマーで打った「巨人」もじつは自分で、城の近くの山にある3つの四角い谷は、そのハンマーのあとだったとも明かします
- 怒ったトールがハンマーをふり上げると、王の姿も城も消え、美しく広い平原だけが残っていました
- トールは、このときミズガルズの大蛇との対決を心に決めたといいます。そのお話はヨルムンガンドの記事で

メル美火、考え、海、世界の大蛇、老い!負けて当然の相手ばかりだったんだ。引き潮の説明にもなってるのがおもしろい。

『散文のエッダ』によると、トールがすもうで片ひざをついた老婆エッリの正体は「老い」でした。王は「老いに負けない者はいない」と言っています。
まとめ
- トールは巨人の王ウートガルザ・ロキの城で、5つの力くらべにすべて負けた
- じつはまぼろし。大食いの相手は野火、かけっこの相手は王の考え、角の杯は海につながり、ネコはミズガルズの大蛇、老婆は老い
- 角の杯で海が減ったのが「引き潮」のはじまり、と書かれている
- このあとトールは、大蛇との対決へ。北欧神話はヨルムンガンド、ロキの罰、ラグナロクもどうぞ
参考文献
- Snorri Sturluson. The Younger Edda; also called Snorre’s Edda, or The Prose Edda(英訳:Rasmus B. Anderson、1879年). Gylfaginning 46–48. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/18947 (閲覧日:2026年10月4日)
- Wikimedia Commons. File:I am the giant Skrymir by Elmer Boyd Smith.jpg(Elmer Boyd Smith〈1860–1943〉、Abbie Farwell Brown『In the Days of Giants』1902年、パブリックドメイン). https://commons.wikimedia.org/wiki/File:I_am_the_giant_Skrymir_by_Elmer_Boyd_Smith.jpg (閲覧日:2026年10月9日)
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