
プレ男アマテラスとスサノオは話がいっぱいあるのに、ツクヨミって、なにをした神さまなの?

メル美『古事記』には、ほとんど出てこないんだって。『日本書紀』のほうに、びっくりする話があるみたい。
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまの解説、今回は日本神話のツクヨミです。青空文庫の『古事記』(武田祐吉訳)、ウィキソースの『日本書紀』巻第一の原文(書き下しと訳は Claude によるものです)、伊勢神宮の公式サイトを読みました。日本神話の全体は日本神話の入門へ。
プロフィール
| 名前 | 『古事記』は月読命。『日本書紀』は月神、別の伝えでは月弓尊・月夜見尊・月読尊とも |
| 生まれ | 父イザナギが、黄泉の国からもどって体を洗ったとき、右の目から(『古事記』) |
| きょうだい | 姉アマテラス、弟スサノオ。3柱あわせて「三貴子」 |
| 治める場所 | 「夜の世界」(『古事記』)、「夜の食国(よるのおすくに)」 |
| まつる神社 | 伊勢神宮の別宮月読宮(内宮の近く)、月夜見宮(外宮の近く) |
1. 『古事記』では、たった2回
- 『古事記』(武田祐吉訳)で「月読」の名前が出てくるのは、2回だけです
- 1回目:イザナギが「左の目を洗ったときにアマテラス、右の目を洗ったときに月読の命、鼻を洗ったときにスサノオ」が生まれた
- 2回目:よろこんだイザナギが、アマテラスに「天を」、月読の命に「あなたは夜の世界をお治めなさい」、スサノオに「海を」治めるように言った
- そのあと、アマテラスとスサノオには、天の岩戸やヤマタノオロチなどの大きな物語が続きますが、ツクヨミの話は『古事記』には出てきません

プレ男三きょうだいなのに、セリフもないの!?
2. 『日本書紀』のいろいろな言い伝え
『日本書紀』巻第一には、本文と「一書に曰く(ある書によると)」の別の伝えがあり、ツクヨミの生まれ方もいろいろです。
- 本文:イザナギとイザナミは、まず日の神大日孁貴(おおひるめのむち)を生み、「次に月の神を生む。その光彩、日に亜(つ)げり」(その光は太陽に次ぐものだった)。そこで、日の神とならんで治めるように、天に送りました
- 一書(第1):イザナギが「世を治めるすぐれた子を生みたい」と言い、左手に白銅の鏡を持つと大日孁尊が、右手に白銅の鏡を持つと月弓尊が生まれた。首をめぐらしてふり返ったときには、スサノオが生まれた
- 一書(第11):イザナギが3柱に役目をわたし、「月夜見尊は、日にならんで天のことを治めよ」と言った
3. 保食神を斬り、昼と夜が分かれる
『日本書紀』巻第一の一書(第11)の話です。
- 天にいるアマテラスが言います。「葦原中国(地上の国)に、保食神(うけもちのかみ)がいるそうだ。月夜見尊よ、行って見てきなさい」
- 月夜見尊がたずねると、保食神は
- 国のほうを向いて、口からごはんを出し
- 海のほうを向いて、口から大小の魚を出し
- 山のほうを向いて、口から毛のあらいけもの、やわらかいけものを出して
- たくさんの机にならべて、もてなしました
- 月夜見尊は顔色をかえて怒ります。「けがらわしい、いやしい。口からはき出したものを、わたしに食べさせるのか」。そして剣をぬいて、保食神を斬ってしまいました
- 帰って報告すると、アマテラスは、とても怒りました。「汝(いまし)は是れ悪しき神なり。相見じ」(おまえは悪い神だ。もう会わない)
- こうしてアマテラスと月夜見尊は、「一日一夜、隔て離れて住みたまう」——太陽と月が、昼と夜にはなれてすむようになりました

メル美太陽と月がいっしょに空に出ないのは、きょうだいげんかのせいだったんだ…!
4. 保食神の体から、作物と蚕
- そのあと、アマテラスが天熊人(あまのくまひと)を見に行かせると、保食神はもう死んでいて、その体から
- 頭のてっぺんから牛と馬
- ひたいからアワ
- まゆから蚕(かいこ)
- 目からヒエ
- おなかからイネ
- 体の下のほうからムギと大豆・小豆 が生まれていました
- アマテラスはよろこび、「これは、この世の人びとが食べて生きていくものだ」と言って、アワ・ヒエ・ムギ・豆を畑の種に、イネを田んぼの種にしました。口に蚕のまゆをふくむと糸がひけたので、ここから蚕を飼う道が始まった、と書かれています
- 『古事記』では、これとよく似た話がスサノオとオホゲツ姫の話として出てきます。武田祐吉は訳の注に「日本書紀では、月の神が保食の神を殺す形になっている」と書いています。くわしくはスサノオへ
5. 伊勢の月読宮と月夜見宮
伊勢神宮の公式サイトによると
- 月読宮(つきよみのみや)は、内宮の別宮で、伊勢市中村町に鎮座します。ご祭神は月読尊で、「天照大御神の弟神です。『月を読む』と記すとおり、月の満ち欠けを教え暦を司る神です」と説明されています。となりに月読荒御魂宮、伊佐奈岐宮、伊佐奈弥宮の4つの別宮がならびます
- 4つの宮は、延暦23年(804年)の『皇太神宮儀式帳』に「月読宮一院、正殿四区」と記され、ひとつの垣の中にまつられていました。いまのように4つの宮それぞれに垣がめぐらされたのは、明治6年からです
- 月夜見宮(つきよみのみや)は、外宮の別宮で、伊勢市宮後に鎮座します。ご祭神は月夜見尊と月夜見尊荒御魂。『延喜式』では外宮の摂社の第一とされていましたが、承元4年(1210年)に別宮になりました
- 公式サイトは、『日本書紀』がアマテラスの神徳を「光華明彩、六合の内に照り徹らせり」と太陽にたとえ、月夜見尊の神徳はそれに次ぐものとして月になぞらえたと考えられる、と説明しています

『日本書紀』の一書では、アマテラスが「おまえは悪い神だ、もう会わない」と怒り、太陽と月は1日1夜はなれて住むようになった、と書かれています。
まとめ
- ツクヨミは、イザナギが右の目を洗ったときに生まれた月の神。アマテラス・スサノオと並ぶ三貴子
- 『古事記』に名前が出てくるのは2回だけ。「夜の世界を治めよ」と言われた
- 『日本書紀』には、白銅の鏡から生まれた、日にならんで天を治めたなど、いろいろな言い伝えがある
- 一書では、口から食べものを出した保食神を斬り、怒ったアマテラスと1日1夜はなれて住むことに。保食神の体からは、牛馬・アワ・蚕・ヒエ・イネ・ムギ・豆が生まれた
- 伊勢神宮には、内宮の別宮月読宮、外宮の別宮月夜見宮がある
- きょうだいの話はアマテラス、スサノオ、両親の話はイザナギとイザナミへ
参考文献
- 稗田阿礼・太安万侶(武田祐吉訳). 古事記(現代語訳)上巻(底本:古事記、角川文庫、1956年). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/001518/card51732.html (閲覧日:2026年10月6日)
- 日本書紀 巻第一(神代上). ウィキソース(中国語版). https://zh.wikisource.org/wiki/日本書紀/卷第一 (閲覧日:2026年10月6日)
- 伊勢神宮. 別宮(域外):月読宮・月夜見宮. https://www.isejingu.or.jp/about/outerbetsugu/ (閲覧日:2026年10月6日)
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