
プレ男古代エジプトの人は、死んだあとの世界をどう考えていたの?

メル美『死者の書』では、審判のあとに「葦の野」っていう、農園みたいな国へ行くと考えられていたんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はエジプト神話の葦の野(セケト・アアル)です。大英博物館のE.A.ウォリス・バッジ『死者の書』(1920年版、プロジェクト・グーテンベルク)の解説の第8章「オシリスの王国」を読みました。死者の心臓をはかる審判の場面はアヌビスへ。冥界の王についてはオシリスへ。

チャールズ・K・ウィルキンソン「イアルの野のセンネジェムとイイネフェルティ」1922年の写し(もとの壁画は紀元前1300〜1224年ごろ)。紙にテンペラ。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
プロフィール
| 葦の野 | セケト・アアル(バッジの英訳では Sekhet Aaru、「葦の野」) |
| 場所 | オシリスの王国。冥界(トゥアト)の第6の区域(『門の書』などによる、とバッジ) |
| ようす | たいらな野を運河がはしる。運河には「魚もヘビもいない」 |
| くらし | 畑をたがやし、麦を刈り、牛に麦をふませる |
| 麦の高さ | 3キュビット。そこにすむ「かがやくたましい」の背は7キュビット |
| ふしぎな舟 | たましいの行きたいところへ、ひとりでに進む2そうの舟 |
1. オシリスの王国
- バッジによると、『門の書』などの冥界の「案内書」では、オシリスの王国は、冥界(トゥアト)の第6の区域とされました
- ごく古い時代には、デルタの西にあると考えられ、第12王朝ののちには、上エジプトのアビュドスの近くにあると考えられるようになった、とバッジは書いています
- かがやくたましいがそこに着くと、オシリスの家来たちが、オシリスの命令でわりあてられた住まいへつれていき、たましいは新しい生活をはじめました
2. 運河のはしる野
- バッジは、『死者の書』第110章の大きな絵が、その国のようすをよくしめしている、と書いています
- 「国はたいらで、野は、流れる水の運河でくぎられていた。運河には、『魚もヘビもいなかった』」
- その一部には小さな島々があり、そのひとつにオシリスが聖なる者たちとすんでいるとされました。「真理の島」とよばれ、オシリスの渡し守は、トトやオシリスや大いなる神々の「大いなる計算」で「ことばが正しい者」とみとめられなかったたましいは、その島へ渡さなかった、とバッジは説明しています

メル美死んだあとも、畑をたがやして麦を刈るんだ! エジプトの人にとって、いちばんしあわせな風景だったのかな。
3. 麦を刈るたましい
- バッジによると、大きな『死者の書』にえがかれたオシリスの王国は、多くの点で、エジプトのふつうの農園のようでした。死者は、畑をたがやし、麦を刈り、牛に麦をふませています
- 死者は、トトによって、葦の野の一部であるセケト・ヘテプへ案内され、そこで、神々のなかまにくわえられた祖先のたましいに出会いました
- その一角は、かがやくたましい(アアク)の住まいで、たましいの背の高さは7キュビット、刈りとる麦やオオムギは3キュビットの高さにのびた、とされます
- その近くには、いつでも使える2そうの舟がつながれていました。バッジは、それを「ひとりでに進み、かがやくたましいを、つかれさせることなく、行きたいところへ運ぶ舟」だったようだ、と説明しています
4. オシリスのことば
- バッジは、セティ1世の雪花石膏の石棺の絵とことばも紹介しています。そこでは、たましいたちが麦を育て、刈りとっていて、麦の穂は「オシリスの手足」とよばれています
- オシリスは、たましいたちにこう言います。「あなたがたは、真理の中の真理だ。やすらかに休め」
- 「彼らは、地上にいたあいだ、真理をおこなった。……命の家の国の、真理とともにある楽しみへと、よばれるだろう」

プレ男「真理をおこなった人が、やすらかに休める国」…。古代エジプトの人は、正しく生きることを大切にしていたんだね。

バッジの解説では、オシリスの王国は運河のはしるたいらな野で、たましいたちは麦を刈り、牛で畑をたがやす、エジプトの農園のような世界としてえがかれている、と説明されています。
まとめ
- 葦の野(セケト・アアル)は、『死者の書』でえがかれるオシリスの王国の野
- たいらな野を運河がはしり、たましいは畑をたがやし、麦を刈る
- そこにすむかがやくたましいの背は7キュビット、麦は3キュビット。ひとりでに進む舟もある
- 「ことばが正しい者」とみとめられたたましいだけが、オシリスのすむ「真理の島」へ渡れた
- 冥界の王オシリス、心臓をはかる審判のアヌビス、死者を案内するトトもどうぞ
参考文献
- E.A. Wallis Budge(英訳・解説). The Book of the Dead(1920年版). Chapter VIII “The Kingdom of Osiris”. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/7145 (閲覧日:2026年10月12日)
- メトロポリタン美術館. Charles K. Wilkinson, Sennedjem and Iineferti in the Fields of Iaru, 1922; original ca. 1300–1224 BCE(30.4.2、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/548354 (閲覧日:2026年10月12日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。



