
プレ男アヌビスって、黒いイヌの頭の神さまだよね。ピラミッドのイメージ!

メル美死んだ人の心臓をはかる天秤の場面に出てくるんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまの解説、今回はエジプト神話のアヌビスです。大英博物館のE.A.ウォリス・バッジ訳『死者の書』(1920年版、プロジェクト・グーテンベルク)の解説と、プルタルコス『イシスとオシリスについて』(F.C.バビット訳、1936年、ラクス・クルティウス)の英訳を読みました。エジプト神話の全体はエジプト神話の入門へ。

「ふせたイヌ科の動物の姿のアヌビス像」紀元前343〜30年、末期王朝時代の終わり〜プトレマイオス朝。石灰岩(もとは黒くぬられていた)。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
プロフィール
| 名前 | アヌビス(エジプト語ではアンプ、バッジの英訳) |
| すがた | イヌ科の動物(ジャッカルなど)、またはその頭の人 |
| 親 | バッジの解説では「太陽神ラーの子」。プルタルコスではネフティスの子で、イシスに育てられた |
| 役目 | オシリスのなきがらをととのえる。死者の審判で大きな天秤をあずかる |
| プルタルコスの説明 | 神々を守る番犬のような存在。夜も昼も見える |
1. オシリスのなきがらをととのえる
- バッジ訳『死者の書』の解説によると、セトがオシリスを殺したあと、イシスは妹のネフティスとともにオシリスのなきがらを救い出しました
- そして2人の女神は、「太陽神ラーの子アンプ(アヌビス)」の助けをかりて、なきがらに防腐の処置をほどこし、墓におさめた、と書かれています(くわしくはオシリス)

メル美だから、ミイラづくりの神さまっていわれるんだね。
2. 心臓をはかる天秤
『死者の書』第125章の「真理の広間」の場面です。
- 広間のおくには、オシリスが玉座にすわり、42の神々が両側にならびます。オシリスの近くには「大きな天秤」があり、それはアンプ(アヌビス)のあずかりでした
- 『アニのパピルス』の絵では、天秤の柱の上にトトの仲間のヒヒがすわり、「天秤の針は、アンプがあずかっていた」。アンプのうしろには、神々の書記トトと、怪物アメミトがひかえています
- アメミトは、ワニの頭、ライオンの前足と肩、カバの後ろ足をもつ怪物で、天秤で軽かった心臓を食べてしまう役目でした
- 天秤の片方の皿には、死者アニの心臓、もう片方には、真理と正しさのしるしの羽根がのせられます。心臓は、意志・感情・理性のやどる場所と考えられていました
- アニは、心臓に向かって「わたしの母の心臓よ……証言のとき、わたしにさからわないでおくれ」と語りかけます。そして、トトが「この者の心臓はたしかにはかられた」と神々に告げるのです

プレ男心臓が軽いと、ワニとライオンとカバがまざった怪物に食べられちゃうの!?
3. イヌたちに見つけられた子
プルタルコス『イシスとオシリスについて』第14章です。
- ネフティスは、セトの妻でしたが、オシリスとのあいだに子をもうけます。ネフティスは、セトをおそれて、生まれた子をすぐにすててしまいました
- イシスはそれを知ると、子どもをさがしに行きます。大変な苦労のすえ、イヌたちの案内で子どもを見つけ、育てました。その子はイシスの守り手、つきそいとなり、「アヌビス」と名づけられました
- 「イヌが人を守るように、アヌビスは神々を守る」といわれる、とプルタルコスは書いています
4. 夜も昼も見える目
プルタルコスは、第44章で、アヌビスについての「たとえ」も紹介しています。
- ネフティスは地の下の見えないもの、イシスは地の上の見えるもの。その2つにふれる円、つまり地平線が、2人に共通するものとして「アヌビス」とよばれ、イヌの姿であらわされる
- 「イヌは、夜も昼も同じように目で見ることができるからだ」
- 「アヌビスは、地の下の神であると同時に、オリンポスの神でもある」とも書かれています
- また、むかしエジプトではイヌがいちばんの名誉をうけていたが、ペルシャ王カンビュセスが聖牛アピスを殺してすてたとき、そのなきがらに近よって食べたのがイヌだけだったので、イヌはその地位をうしなった、という話も伝えています

バッジ訳『死者の書』の解説では、死者の審判の大きな天秤はアンプ(アヌビス)のあずかりで、片方の皿に心臓、もう片方に真理の羽根がのせられます。
まとめ
- アヌビスは、イヌ科の動物の姿の、死者を守る神。エジプト語ではアンプ
- イシス・ネフティスとともに、オシリスのなきがらをととのえた
- 死者の審判では、心臓と真理の羽根をのせた大きな天秤をあずかった
- プルタルコスは、ネフティスの子で、イヌたちに見つけられ、イシスに育てられたと伝えた
- 「イヌは夜も昼も見える」ことから、地の上と下をむすぶ地平線にたとえられた
- オシリス、イシス、トトもどうぞ
参考文献
- E.A. Wallis Budge(英訳・解説). The Book of the Dead(1920年版). 序論(オシリスの伝説、第125章「真理の広間」、『アニのパピルス』の審判の場面). Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/7145 (閲覧日:2026年10月10日)
- Plutarch. Isis and Osiris, chapters 14, 44(英訳:F.C. Babbitt、Loeb Classical Library, Moralia Vol. V、1936年). LacusCurtius. https://penelope.uchicago.edu/Thayer/E/Roman/Texts/Plutarch/Moralia/Isis_and_Osiris*/A.html および https://penelope.uchicago.edu/Thayer/E/Roman/Texts/Plutarch/Moralia/Isis_and_Osiris*/C.html (閲覧日:2026年10月10日)
- メトロポリタン美術館. Statue of Anubis as a recumbent canid, 343–30 BCE(69.105、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/544075 (閲覧日:2026年10月10日)
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