
プレ男イシスって、頭に角と丸いものをのせた女神さまだよね。

メル美呪文の力で、太陽の神ラーにも勝ってしまう女神なんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまの解説、今回はエジプト神話のイシスです。大英博物館のE.A.ウォリス・バッジ訳『神々の伝説』(1912年、プロジェクト・グーテンベルク)と、プルタルコス『イシスとオシリスについて』(F.C.バビット訳、1936年、ラクス・クルティウス)の英訳を読みました。エジプト神話の全体はエジプト神話の入門へ。

「イシスとホルス」紀元前664〜30年、末期王朝時代〜プトレマイオス朝時代。銅合金、貴金属の象眼。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
プロフィール
| 立場 | 「ことばの力(呪文)の女主人」。病をほろぼす呪文をもつ女神 |
| 家族 | 父は大地の神ゲブ、母は天の女神ヌト。夫(兄)オシリス、弟セト、妹ネフティス、子ホルス |
| 生まれ | 1年の360日のあとにたされた5日の、4日目(プルタルコス) |
| よび名 | 「神々の上に立つ者」「かしこい口の女」(メッテルニヒ石碑) |
| 力 | 大地の神ゲブから、毒を追いはらう呪文をさずかったとされる |
1. 太陽神ラーから「秘密の名前」を手に入れる
- トリノのパピルスの「ラーとイシスの伝説」では、イシスは、人間の上に立つことにあきて、神々や霊たちの女主人になりたいと考えます
- そこで、年をとったラーのよだれを土とこねて毒ヘビを作り、ラーをかませました。苦しむラーに「名前を教えてくだされば、毒は出ていきます」と言い、両親がラーの体にかくした秘密の名前を手に入れます(くわしくはラー)
2. 夫オシリスをさがして
プルタルコスが伝える話です(くわしくはオシリス)。
- 夫オシリスが、弟セトの計略で箱にとじこめられ、海に流されると、イシスは髪のひとふさを切り、喪服を着て、エジプトじゅうをさがし歩きました
- 遊んでいた子どもたちから河口の場所を聞き、海をこえたビブロスで、宮殿の柱の中から箱を見つけ出します
- そのあと、セトがオシリスの体を14に分けてまくと、イシスはパピルスの舟で沼地をめぐって、ひとつずつさがし集めました
3. 7匹のサソリをつれて
紀元前4世紀のメッテルニヒ石碑には、イシス自身が語る形の物語がきざまれています。バッジによると、この石碑は1828年にアレクサンドリアで見つかり、ネクタネボ1世(紀元前378〜360年)の時代のものです。
- 「わたしはイシス。弟セトにとじこめられていた住まいから出てきた」
- 知恵の神トトは言いました。「子どもといっしょに身をかくしなさい。その子は大きくなり、2倍の強さがそなわり、父の王座について、父のかたきをうつだろう」
- 夕方、イシスが出発すると、7匹のサソリがついてきました。うしろに2匹、そばに2匹、道をととのえるために前に3匹。イシスは「だれとも知りあうな、だれにも声をかけるな。顔を地面に向けて、道をさがしなさい」と言い聞かせます
4. 戸をしめた女、戸をあけた女
- 町に着くと、ある身分の高い女の人が、旅をするイシスを見て、戸をしめてしまいました。サソリたちがこわかったのです
- サソリたちは相談して、毒をぜんぶ1匹のサソリテフェンのしっぽにあつめます。いっぽう、沼地に住むまずしい女の人が、イシスのために戸をあけてくれました
- テフェンは、戸をしめた女の人の家の戸の下からしのびこみ、その息子をさしました。家には火事までおき、季節でもないのに雨がふって消えた、といいます
- 女の人は町じゅうを泣いて助けをもとめますが、だれも来ません。イシスは言いました
- 「わたしの心は、その子のために、とても悲しかった。罪のない子を生きかえらせたいと思った」
- 「わたしはイシス、ことばの力の女主人。毒よ、出てきて地に落ちよ」
- イシスが子に両手をおいて、7匹のサソリの名前をひとつずつよんで呪文をとなえると、子は助かりました。戸をしめた女の人は、自分の財産を、戸をあけてくれた女の人の家にいっぱいにもってきた、と石碑は語ります

メル美戸をしめた人の子どもでも、イシスは助けたんだね。
5. 太陽の舟が止まった日
- ところがある日、イシスが夫オシリスのために供えものをしにいっているあいだに、沼地で育てていたホルスが、サソリにさされてしまいます
- もどったイシスは、ホルスの口に鼻をよせて息をたしかめ、傷に毒を見つけると、ホルスをだきしめて、「ホルスがさされた、ラーよ。あなたの子がさされた」とさけびました
- 妹のネフティスも泣きながら沼地をめぐってきて、「ラーの舟乗りたちに、しばらく手を止めてもらいましょう。ホルスがたおれているあいだ、ラーの舟は先へ進めないのだから」と言います
- イシスが天に声をあげ、「数百万年の舟」に願うと、太陽の円盤は旅を止め、動かなくなりました
- 舟からおりてきた知恵の神トトが、「ラーの舟がホルスを守っている」と言って、呪文でホルスの毒を取りのぞいた、と石碑は語ります

プレ男お母さんのさけび声で、太陽が止まった…! 最強のお母さんだ。
- この石碑は、サソリやヘビにさされた人をなおすための呪文の石碑でした。物語の中に「子は生き、毒は死ね。ホルスは母イシスのために元気になる。同じように、さされた者もみな元気になる」という言葉がくり返されています

メッテルニヒ石碑のイシスは、戸をしめた女の人の子どもがサソリにさされたとき、「罪のない子を生きかえらせたい」と言って助けています。
まとめ
- イシスは「ことばの力の女主人」。オシリスの妻、ホルスの母
- 年をとったラーから、毒ヘビで秘密の名前を手に入れた
- 夫オシリスをビブロスまでさがしに行き、14に分けられた体をパピルスの舟で集めた
- 7匹のサソリをつれて沼地にかくれ、戸をしめた女の人の子も呪文で助けた
- ホルスがサソリにさされたとき、そのさけびで太陽の舟が止まり、トトが助けにきた
- 夫の話はオシリス、秘密の名前の話はラーへ
参考文献
- E.A. Wallis Budge. Legends of the Gods: The Egyptian Texts, edited with Translations(1912年). The Legend of the Death and Resurrection of Horus, and Other Magical Texts(メッテルニヒ石碑); The Legend of Ra and Isis. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/9411 (閲覧日:2026年10月10日)
- Plutarch. Isis and Osiris, chapters 12–18(英訳:F.C. Babbitt、Loeb Classical Library, Moralia Vol. V、1936年). LacusCurtius. https://penelope.uchicago.edu/Thayer/E/Roman/Texts/Plutarch/Moralia/Isis_and_Osiris*/A.html (閲覧日:2026年10月10日)
- メトロポリタン美術館. Isis and Horus, Late Period–Ptolemaic Period, 664–30 BCE(45.4.4、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/545969 (閲覧日:2026年10月10日)
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