
プレ男「大いなる医者」とよばれた女神さま!? メソポタミアにも、病気をなおす神さまがいたんだ。

メル美グラっていう女神なんだって。夫は、アッシリアの王さまたちに人気の、力の強い神さまなの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はメソポタミア神話のニン・イブとグラです。アメリカのアッシリア学者モリス・ジャストロウ『バビロニア・アッシリアの宗教』(1898年、プロジェクト・グーテンベルク)の第10章と第12章のニン・イブとグラの項を読みました。ニン・イブと同じとされたラガシュの神と、グラと同じとされた女神はニンギルスとバウへ。ニン・イブとともに狩りでたよられた神はネルガルへ。
プロフィール
| ニン・イブ | 名前の読みは仮のもの。アッシリアで「神々の中の力ある者」とよばれた |
| ニン・イブの神殿 | アッシュルナシルパル王が都にしたカルフに、大きな神殿があった |
| ニン・イブの祭り | シャバトの月(11番めの月)とウルルの月(6番めの月) |
| グラ | ニン・イブの妻。「命をあたえる者」「大いなる医者」 |
| グラのほかの名 | ダム、マム(メメ)。「宮殿の女主人」ともよばれた |
| グラの位置 | 生きる者の神々と、死者の国の神々のあいだに立つ女神 |
1. 力ある神ニン・イブ
- ジャストロウによると、ニン・イブが最初に出てくるアッシュルリシシ王の碑文で、ニン・イブは「神々の中の力ある者」とよばれています
- ティグラト・ピレセル1世は、ニン・イブを「勇ましい者」とよび、王の敵をうちやぶる神としました。ジャストロウは、主神アッシュールとならべられることから、ニン・イブがはっきりと戦いの神だったことがわかる、と書いています
- アッシュルナシルパル王は、とくにニン・イブをうやまいました。年代記を、ほかの神々ではなくニン・イブへのよびかけではじめ、「強く力ある、いちばん上の者、戦いで負けることのない英雄、天と地のかぎをにぎる者、深い海をひらく者」と、たくさんのことばでたたえました
2. 狩りの神
- アッシュルナシルパル王は、都カルフに大きな神殿をたて、そこにニン・イブの大きな像をおきました。シャバトの月とウルルの月を、ニン・イブの祭りの月とさだめました
- アッシリアの王たちは、ライオンや野生の馬、象、シカ、イノシシ、牛などの狩りを好み、その狩りでも、ニン・イブをネルガルとともにたよりました
- ジャストロウは、王たちは主神アッシュールのほかに、自分を特別にまもってくれる神をえらび、ある王はラムマンを、ある王はニン・イブを、ある王はシャマシュやナブーをえらんだ、と説明しています

メル美王さまごとに「推しの神さま」がちがったんだね。ちょっと親しみがわく!
3. 大いなる医者グラ
- ニン・イブの妻グラは、ジャストロウによると、もっとも広い意味での「命をあたえる者」でした
- グラは「大いなる医者」とよばれ、からだを健やかにたもち、「手でふれる」ことで病をとりさる女神とされました
- また、グラは死者を新しい命へみちびく女神でもあり、その力を夫ニン・イブとわかちあっていました
- グラの力は、よいことにも、わるいことにもはたらきました。敵の目を見えなくするよう、よびかけられることもあり、「人の創造者」とよばれることさえありました
4. 生と死のあいだ
- ジャストロウは、バビロニアの人々が死後の世界について考え、死者の国の神々をつくりだしていったことにふれ、グラは、生きる者の神々と死者の神々のあいだに立つ、めずらしい位置にいる、と書いています
- グラは、ネブカドネザル1世の碑文では「エシャラ(地)の花嫁」とよばれ、バラツ・グラ、アラド・グラのように、人の名前にもつかわれました
- ラガシュの女神バウは、ニンギルスの妻として、グラと同じとされるようになった、とジャストロウは説明しています

プレ男病気をなおして、死んだ人を新しい命へみちびく…。命をまるごと見守る女神さまなんだね。

ジャストロウの本では、女神グラは「大いなる医者」とよばれ、手でふれて病をとりさり、死者を新しい命へみちびく女神とされた、と説明されています。これは古代の信仰の話です。
まとめ
- ニン・イブ(仮の読み)は、アッシリアの王たちが戦いや狩りでたよった、「神々の中の力ある者」
- アッシュルナシルパル王は、都カルフにニン・イブの神殿と大きな像をつくり、祭りの月をさだめた
- 妻のグラは「命をあたえる者」「大いなる医者」とよばれ、手でふれて病をとりさり、死者を新しい命へみちびくとされた
- グラは、生きる者の神々と死者の神々のあいだに立つ女神で、ラガシュのバウと同じとされた
- グラと同じとされた女神のニンギルスとバウ、狩りの神ネルガル、アッシリアの主神アッシュールもどうぞ
参考文献
- Morris Jastrow, Jr. The Religion of Babylonia and Assyria(1898年). Chapter X “The Minor Gods in the Period of Hammurabi”(Gula)、Chapter XII “The Assyrian Pantheon”(Nin-ib; Gula). Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/20758 (閲覧日:2026年10月12日)
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