
プレ男ヘルって、英語の hell(地獄)と関係あるの?

メル美北欧神話では、死者の国と、そこを治める女神の名前なんだって。ロキの娘だよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまの解説、今回は北欧神話のヘルです。スノッリ『新エッダ』(R.B.アンダーソン訳、1879年、プロジェクト・グーテンベルク)の英訳を読みました。北欧神話の全体は北欧神話の入門へ。

ジョン・チャールズ・ドールマン「ヘルの前のヘルモーズ」1909年刊、H.A.ガーバー『北欧人の神話』の挿絵(ドールマンは1934年没)。ウィキメディア・コモンズ(パブリックドメイン)
プロフィール
| 立場 | 死者の国の女王 |
| 父母 | 父ロキ、母は巨人の女アングルボザ |
| きょうだい | 狼フェンリル、大蛇ヨルムンガンド |
| 国 | ニヴルヘイム。9つの世界を治める力をあたえられた |
| 迎える人 | 病気や年をとって死んだ人びと |
| すがた | 半分は青く、半分は肌の色。きびしく、おそろしい顔つき |
| 館 | エリューズニル |
1. ニヴルヘイムに投げこまれた娘
『新エッダ』の『ギュルヴィたぶらかし』34節です。
- ロキは、巨人の国の女アングルボザとのあいだに、3人の子をもうけました。狼フェンリル、大蛇ヨルムンガンド、そしてヘルです
- 子どもたちから大きな災いが来るという予言を知ったオーディンは、子どもたちをつれてこさせました
- オーディンはヘルをニヴルヘイムに投げこみ、「9つの世界を治める力」をあたえました。そこへ送られてくる者たち、つまり病気や年をとって死んだ人びとに、住む場所をわりあてるためです
2. 「飢え」の食卓と「心配」の寝床
ヘルの館は、こう書かれています。
- 「大きな館があり、まわりの壁はふしぎなほど高く、門はとても大きい」
- 館や持ちものには、おそろしい名前がついていました
| もの | 名前(英訳から) |
|---|---|
| 広間 | エリューズニル |
| 食卓 | 飢え |
| ナイフ | 飢餓 |
| しもべ(男) | ガングラティ(どちらも「のろのろ」の意味) |
| しもべ(女) | ガングロット |
| しきい | つまずき石 |
| 寝床 | 心配 |
| 寝床のとばり | ぎらぎらする災い |
- 「ヘルの体は、半分が青く、半分が肌の色をしているので、すぐにそれとわかる。顔つきは、とてもきびしくおそろしい」

プレ男家具の名前がぜんぶこわい…! 「飢え」の食卓に「心配」の寝床って。
3. 「すべてのものが泣くなら」
光の神バルドルが死んだとき、ヘルの答えが、世界の運命を決めました(『ギュルヴィたぶらかし』52〜53節)。
- オーディンの子ヘルモーズは、8本足の馬スレイプニルに乗ってヘルの国へ向かいました。ギョッル橋の番人の乙女は言います。「きのうは5つの死者の軍勢がこの橋をわたったのに、あなたひとりのほうが橋がゆれる。あなたは死者の顔色をしていない」
- ヘルモーズはヘルの門を馬でとびこえ、館の上座にすわるバルドルを見つけます。そしてヘルに「バルドルをつれて帰らせてほしい。アース神族はみな、ひどく泣いている」とたのみました
- ヘルは答えました。「バルドルが言われているほど愛されているか、ためしてみよう。生きているものも死んだものも、世界のすべてのものがバルドルのために泣くなら、アース神族のもとへ帰そう。でも、ひとつでも泣かないものがあれば、ここにとどまる」
- 神々は世界じゅうに使いを出し、人もけものも、大地も、石も、木も、あらゆる金属も泣きました。ところが、洞窟にいた巨人の女ソックだけは「ソックはかわいた涙で泣こう。生きているときも死んでからも、あの人はわたしをよろこばせなかった。ヘルは、もっているものを、もっておけばいい」と言ったのです
- 『新エッダ』は、「このソックは、ロキだったと考えられている」と書いています

メル美ヘルは、ちゃんと「帰す方法」を示していたんだね。だめにしたのは、父親のロキ…。
4. ラグナロク
- 世界の最後の日ラグナロク、神々と戦うロキの側には、「ヘルの仲間たちが、みないる」と『新エッダ』は書いています

『新エッダ』のヘルは、「世界のすべてのものがバルドルのために泣くなら、アース神族のもとへ帰そう」と、帰す条件を示しています。
まとめ
- ヘルは、ロキとアングルボザの娘で、死者の国の女王
- オーディンにニヴルヘイムへ投げこまれ、9つの世界を治める力と、病気や年で死んだ人びとを迎える役目をあたえられた
- 体は半分が青く、半分が肌の色。食卓は「飢え」、寝床は「心配」
- バルドルを帰す条件は「すべてのものが泣くなら」。泣かなかった巨人の女ソックは、ロキだったとされる
- 父のロキ、光の神バルドルの記事もどうぞ
参考文献
- Snorri Sturluson. The Younger Edda; Also called Snorre’s Edda, or The Prose Edda(英訳:Rasmus B. Anderson、1879年). The Fooling of Gylfe, sections 34, 52–53 and Ragnarok. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/18947 (閲覧日:2026年10月10日)
- Wikimedia Commons. File:Hermod before Hela.jpg(John Charles Dollman、H.A. Guerber『Myths of the Norsemen』1909年、パブリックドメイン). https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Hermod_before_Hela.jpg (閲覧日:2026年10月10日)
- Wikidata. John Charles Dollman(Q3181222、イギリスの画家、1851〜1934年). https://www.wikidata.org/wiki/Q3181222 (閲覧日:2026年10月10日)
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