
プレ男弓の練習なのに、まず「まばたきをしない」練習!? しかも2年も?

メル美基本をとことんきわめるのが、名人への道なんだって。『列子』には、そんな修業の話がいくつもあるの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回は中国の『列子』の名人の修業です。思想書『列子』の湯問篇の原文(ウィキソース)にある、弓の紀昌と、御者の造父の話を読みました。同じ湯問篇の名人の話は歌と琴の名人たちと偃師のからくり人形へ。太陽を射おとした弓の名人は羿へ。
プロフィール
| 甘蠅 | むかしの弓の名人。弓を引くだけで、けものはふせ、鳥は落ちた |
| 飛衛 | 甘蠅の弟子。わざは師をこえた |
| 紀昌 | 飛衛の弟子。まばたきをしない修業と、小さなものを大きく見る修業をつんだ |
| 泰豆氏 | 御者の名人造父の師 |
| 造父 | 御者の名人。杭の上を歩く修業で、六頭の馬をあやつるわざをえた |
1. まばたきをしない修業
- 甘蠅は、むかしの弓の名人で、弓を引けば、けものはふせ、鳥は落ちてきました。弟子の飛衛は甘蠅に学び、わざは師をこえました
- 紀昌は、その飛衛に弓を学びました。飛衛は言いました。「まず、まばたきをしないことを学べ。それから弓の話をしよう」
- 紀昌は家に帰ると、妻のはたおりの機の下にあおむけにねころび、上下に動く機の部品を目でうけとめつづけました
- 2年たつと、きりの先が目の前にせまっても、まばたきをしなくなりました
2. 小さなものを大きく見る修業
- 紀昌がそれを伝えると、飛衛は言いました。「まだだ。見ることを学べ。小さなものを大きく、かすかなものをはっきり見えるようになったら、また来なさい」
- 紀昌は、長い毛で1ぴきのシラミを窓につるし、南をむいて、それをながめつづけました
- 10日もすると、シラミはだんだん大きく見えてきました。3年たつと、車輪ほどの大きさに見えるようになりました。ほかのものを見ると、どれも丘や山のように大きく見えました
- そこで、燕の角の弓と、朔の蓬の矢がらで射ると、矢はシラミの心臓をつらぬき、つるした毛は切れませんでした。飛衛はとびあがり、胸をたたいて言いました。「おまえは、わざをえた!」

メル美シラミが車輪の大きさに見えたら、そりゃあ当たるよね! 3年もながめつづけるなんて、すごい集中力。
3. 空中でぶつかった矢
- 飛衛のわざをすべて身につけた紀昌は、天下で自分にかなう者は師ひとりだと考え、師を射てしまおうとくわだてました
- 野で出会った2人は、たがいに矢を射ました。矢と矢は、とちゅうで先と先がぶつかって地に落ち、ちりひとつ立ちませんでした
- 飛衛の矢が先につき、紀昌には1本のこりました。紀昌がそれを射ると、飛衛はいばらのとげの先で、それをぴたりとうけとめました
- 2人は泣いて弓を投げすて、道で礼をかわし、「父と子になろう」とちかいました。そして、うでにしるしをつけて、わざを人に伝えないことをちかいあった、と『列子』は語ります
4. 御者の名人、造父
- 御者の名人造父の師は、泰豆氏でした。造父ははじめ、ていねいに礼をつくしましたが、泰豆氏は3年、何も教えませんでした
- 造父がますますつつしむと、泰豆氏は言いました。「古い詩に『よい弓づくりの子は、まず箕(み)をつくる。よいかじやの子は、まず皮ごろもをつくる』とある。まず、わたしの歩きかたを見よ。わたしのように歩けたら、六本の手綱をもち、六頭の馬をあやつれる」
- 泰豆氏は、足がやっとのるほどの木の杭を、歩はばにあわせて立て、その上を走って行き来し、少しもふみはずしませんでした。造父はこれを学び、3日でわざをきわめました
5. 「手でうけ、心でこたえる」
- 泰豆氏は感心して言いました。「なんとかしこいのか。いま、おまえが歩いたのは、足でえて、心でこたえたのだ。馬をあやつるのも、同じことだ」
- 「くつわでえて、手綱でこたえる。手綱でえて、手でこたえる。手でえて、心でこたえる。そうすれば、目で見なくても、むちでおわなくても、心はしずかに、からだはまっすぐで、六本の手綱はみだれない」
- 「山や谷のけわしさも、野のたいらかさも、同じに見える。わたしのわざは、これでつきた。よくおぼえておきなさい」

プレ男弓も馬も、さいごは「心」なんだね。地味な基本練習が、いちばん大事なんだ。

『列子』湯問篇では、紀昌が毛につるしたシラミをながめつづけると、3年後には車輪ほどの大きさに見えるようになった、と語られています。
まとめ
- 弓を学んだ紀昌は、師飛衛に「まず、まばたきをしないことを学べ」と言われ、2年修業した
- 次に、毛につるしたシラミをながめて3年、シラミは車輪ほどに見え、その心臓を射ぬいた
- 師と弟子の矢は空中でぶつかって落ち、2人は「父と子になろう」とちかった
- 御者の造父は、杭の上を歩く修業から、「手でえて、心でこたえる」わざをえた
- 同じ湯問篇の歌と琴の名人たちと偃師のからくり人形、弓の名人羿もどうぞ
参考文献
- 『列子』卷第五 湯問篇(甘蠅・飛衛・紀昌の条、造父と泰豆氏の条). ウィキソース. https://zh.wikisource.org/wiki/列子/湯問篇 (閲覧日:2026年10月12日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。


