
プレ男ヘラって、ゼウスの奥さんで、やきもちやきの女神だよね?

メル美古い本を読むと、神々の女王としての堂々としたところも見えてくるんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまの解説、今回はギリシャ神話のヘラです。ヘシオドス『神統記』と『ホメロス風讃歌』(H.G.エヴリン=ホワイト訳、1914年、プロジェクト・グーテンベルク)、ホメロス『イリアス』(A.T.マリー訳、1924年、ペルセウス・デジタル・ライブラリー)の英訳を読みました。ギリシャ神話の全体はギリシャ神話の入門へ。

「バルベリーニのヘラ」2世紀、ローマ時代の模刻(もとの像は紀元前5世紀のギリシャ)。大理石。ヴァチカン美術館ピオ・クレメンティーノ美術館所蔵。ウィキメディア・コモンズ(撮影者がパブリックドメインとして公開)
プロフィール
| 立場 | 神々の女王。「金の玉座のヘラ」「牛の目をした女王ヘラ」(英訳のよび名) |
| 親 | クロノスとレア |
| 夫 | 弟のゼウス。ゼウスの最後の妻 |
| 子 | ヘベ、アレス、エイレイテュイア。そして、ひとりで生んだヘパイストス |
| 愛する町 | アルゴス、スパルタ、ミュケナイ(『イリアス』) |
1. 神々の女王
『ホメロス風讃歌』第12歌(ヘラへの讃歌)は、たった5行の短い歌です。
- 「わたしは、レアが生んだ金の玉座のヘラをうたう。不死の神々の女王で、美しさでだれにもまさる。とどろく雷のゼウスの姉で、妻。オリンポスの幸いな神々はみな、雷をよろこぶゼウスと同じように、この栄光の女神をうやまい、たたえる」
2. 最後の妻、ひとりで生んだ子
ヘシオドス『神統記』です。
- 453行以下では、クロノスとレアの子として、ヘスティア、デメテル、そして「金のサンダルのヘラ」の名があげられています(くわしくはヘスティア)
- 921〜923行。「最後に、ゼウスはヘラを若い妻とした。ヘラは神々と人間の王とむすばれ、ヘベ、アレス、エイレイテュイアを生んだ」
- 924〜929行。ゼウスが自分の頭からアテナを生むと、「ヘラは、とても怒って夫と口論し、ゼウスとまじわることなく、名高いヘパイストスを生んだ。天の子らのだれよりも、わざにすぐれた神である」

プレ男ゼウスがひとりでアテナを生んだから、ヘラもひとりでヘパイストスを生んだんだ!
3. 「わたしもまた神なのだから」
『イリアス』第4歌50〜61行。トロイア戦争のゆくえをめぐって、ヘラがゼウスと話す場面です。
- 「わたしには、何よりもたいせつな町が3つある。アルゴスとスパルタと、広い道のミュケナイ。これらがあなたの心にさわるときは、ほろぼすがいい。わたしはかばわない」
- 「あなたのほうが、ずっと強いのだから。それでも、わたしの苦労がむだにならないようにしてほしい。わたしもまた神で、あなたと同じ血すじから生まれた。悪知恵のクロノスは、わたしを娘たちの中でいちばん重んじられる者として生んだ。いちばん年上であることと、あなたの妻とよばれていることと、2つの意味で」
- 「だから、ここはおたがいにゆずりあいましょう。わたしはあなたに、あなたはわたしに。そうすれば、ほかの神々もみなしたがうでしょう」

メル美「おたがいにゆずりあいましょう」って、ゼウスと対等に交渉しているんだね。
4. 秘密の相談を見ぬく
『イリアス』第1歌531〜567行です。
- 海の女神テティスが、ゼウスのひざにすがって、息子アキレウスのためにたのみごとをしました。ゼウスが自分の館にもどると、ヘラはすぐに、テティスがゼウスと相談したことに気づきます
- ヘラは言いました。「悪だくみの人、こんどはどの神と相談したの? あなたはいつも、わたしからはなれて、こっそり考えたことを決めたがる。考えていることを、すすんでわたしに話してくれたことなんて、一度もない」
- ゼウスは答えます。「ヘラよ、わたしの言葉をすべて知ろうとするな。妻であっても、おまえにはつらいことになる。おまえが聞くべきことなら、神にも人にも、おまえより先に知る者はいない。だが、わたしがひとりで決めたいことは、たずねるな」
- それでもヘラは、「けさ早く、テティスがあなたのひざにすがっていた。あなたはアキレウスの名誉のために、うなずいたのでしょう」と見ぬいてみせました
5. ヘラクレスとヘラ
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『イリアス』第15歌では、ゼウスが、かつてヘラが北風と組んで、ゼウスの子ヘラクレスの船を海に流し、コス島へ運んでしまったことを持ちだして、ヘラを責めています。ゼウスはヘラクレスを救い出し、アルゴスへつれもどしました(くわしくはヘラクレス)
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アポロドーロス『ビブリオテーケー』では、ヘラは、自分をうやまわないイオルコスの王ペリアスをこらしめようとして、英雄イアソンにはたらきかけた、とも書かれています

『イリアス』第4歌で、ヘラは「わたしもまた神で、あなたと同じ血すじから生まれた」とゼウスに語り、おたがいにゆずりあうことをもとめています。
まとめ
- ヘラは、クロノスとレアの娘で、ゼウスの姉であり妻。神々の女王
- ゼウスの最後の妻となり、ヘベ・アレス・エイレイテュイアを生み、怒ってひとりでヘパイストスを生んだ
- 『イリアス』では、アルゴス・スパルタ・ミュケナイを愛し、ゼウスに「おたがいにゆずりあいましょう」と語った
- 夫の秘密の相談をするどく見ぬいた
- ゼウス、ヘパイストス、ヘラクレス、ヘスティア、ヘラ(ユノ)がアルゴスに見はらせたイオもどうぞ
参考文献
- Homeric Hymn 12 (To Hera); Hesiod, Theogony, lines 453–458, 921–929(英訳:Hugh G. Evelyn-White、1914年). Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/348 (閲覧日:2026年10月10日)
- Homer. The Iliad, 1.531–567; 4.50–67; 15.1–33(英訳:A.T. Murray、1924年). Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0134 (閲覧日:2026年10月10日)
- 「バルベリーニのヘラ」(ヴァチカン美術館、Inv. 254). Wikimedia Commons, File:Hera Barberini Pio-Clementino Inv254.jpg(撮影者 Jastrow によるパブリックドメイン). https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Hera_Barberini_Pio-Clementino_Inv254.jpg (閲覧日:2026年10月10日)
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