
プレ男海幸彦と山幸彦の話って、どんな話?

メル美海の宮殿で出会うお姫さまが、トヨタマヒメなんだって。最後は「見ないで」の約束の話になるの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまの解説、今回は日本神話のトヨタマヒメです。『古事記』(武田祐吉訳、青空文庫)を読みました。日本神話の全体は日本神話の入門へ。

青木繁「わだつみのいろこの宮」1907年。油彩、カンヴァス。アーティゾン美術館所蔵。ウィキメディア・コモンズ(パブリックドメイン。作者は1911年没)。『古事記』の海の宮殿の場面で、桂の木にすわる山幸彦と、井戸のそばのトヨタマヒメ・侍女がえがかれています
プロフィール
| 名前 | トヨタマ姫(豊玉毘売) |
| 父 | 海の神(ワタツミ) |
| 夫 | ホヲリ(山幸彦、またの名をヒコホホデミ)。コノハナサクヤヒメの子 |
| 子 | ウガヤフキアヘズ。その子がカムヤマトイハレ彦(神武天皇) |
| 妹 | タマヨリ姫(ウガヤフキアヘズを育て、のちにその妻になる) |
| 本当の姿 | 「八丈もある長い鰐(わに)」 |
1. なくした釣り針
- ニニギとコノハナサクヤヒメの子のうち、兄のホデリは海幸彦として海の魚をとり、弟のホヲリは山幸彦として山の鳥やけものをとっていました
- ホヲリは「道具をとりかえてみよう」と3度たのみ、ようやく兄はうなずきます。ところが、ホヲリは魚を1ぴきもつれず、兄の釣り針を海でなくしてしまいました
- 兄は「もとの釣り針を返せ」とせまります。ホヲリが自分の長い剣をくだいて500本、1000本の釣り針を作ってつぐなおうとしても、兄は受けとりません
2. 海の宮殿の井戸
- 浜辺で泣いていたホヲリのところへ、シホツチの神が来て、すきまのない籠の小船を作り、こう教えます。「道のとおりに行くと、魚のうろこのように作られた宮殿がある。それが海の神の宮だ。門のそばの井戸の上に、りっぱな桂の木がある。その上にいなさい」
- 教えられたとおり、ホヲリが桂の木にのぼっていると、トヨタマ姫の侍女が、玉の器で水をくみに来ました。すると、井戸に光がさしたので、見あげると、りっぱな男がいます
- ホヲリは「水をください」と言いますが、水は飲まず、首にかけていた玉を口にふくんで、器にはき入れました。玉は器にくっついてはなれません。侍女は、そのままトヨタマ姫にさしだしました
- 「門の外に人がいるのですか」。ふしぎに思ったトヨタマ姫は、出てきてホヲリを見て、心をうばわれ、顔を見あわせました。そして父に「門の前に、りっぱな方がいます」と言いました

メル美上の絵は、まさにこの井戸の場面なんだね。
- 海の神は「これは、とうとい御子さまだ」と言って、アシカの皮8枚と絹の敷物8枚をしいてもてなし、トヨタマ姫をホヲリの妻にしました。ホヲリは3年、海の国にとどまりました
3. 3年目のため息
- ある夜、ホヲリは、はじめのことを思い出して、大きなため息をつきました。トヨタマ姫はそれを聞いて、父に「3年いて、一度もなげいたことがないのに、今夜は大きなため息をつきました」と知らせます
- わけを聞いた海の神は、海の魚を大小のこらず集めました。「このごろ、タイがのどに骨を立てて、ものが食べられないと言っています」。タイののどをさぐると、釣り針がありました
- 海の神は、潮みつ珠と潮ひる珠をさずけ、一丈(いちじょう)の鰐の首にホヲリを乗せて、1日で地上へ送りかえしました。兄は貧しくなり、やがてホヲリにしたがいます
4. 「わたくしを見ないでください」
『古事記』の「トヨタマ姫」の段です。
- トヨタマ姫は、みずから海から出てきて言いました。「わたくしは前から身ごもっていましたが、いま生まれるときになりました。天の神の御子を、海の中で生むべきではないので、出てまいりました」
- 浜辺の波うちぎわに、鵜(う)の羽で屋根をふいた産屋を作りはじめますが、屋根がふきおわらないうちに、子が生まれそうになりました
- トヨタマ姫は夫に言います。「よその国の者は、子を生むとき、もとの国の姿になって生むのです。わたくしも、もとの身になって生もうと思います。どうか、わたくしを見ないでください」
- ところが、ホヲリはそれをふしぎに思って、のぞいてしまいます。トヨタマ姫は「八丈もある長い鰐」になって、はいまわっていました。ホヲリはおどろいて、にげだします

プレ男「見ないで」って言われたのに…。イザナギがイザナミをのぞいた話と同じだ。
5. 海の道をふさいで
- のぞかれたことを知ったトヨタマ姫は、はずかしく思い、子を生みおいて言いました。「わたくしは、いつも海の道をとおって、行き来しようと思っていました。でも、わたくしの姿をのぞき見られたのは、はずかしいことです」
- そして、海の道をふさいで、帰ってしまいました。生まれた子の名はアマツヒコヒコナギサタケウガヤフキアヘズ
- それでも姫は、のぞかれたことをうらみながらも、恋しさにたえられず、子を育てるために妹のタマヨリ姫を送り、歌をそえました
- 「赤い玉は、緒(お)までも光りますが、白玉のようなあなたのお姿は、とうといものです」
- ホヲリは、こう答えました
- 「水鳥の鴨がおりる島で、ちぎりを結んだわたしの妻は、忘れられない。世の終わりまでも」
- ウガヤフキアヘズは、のちにタマヨリ姫と結ばれ、その子のひとりがカムヤマトイハレ彦(神武天皇)です(→ヤタガラスと神武東征)

『古事記』のトヨタマ姫は、のぞかれたことをうらみながらも恋しさにたえられず、妹のタマヨリ姫に歌をそえて送りました。
まとめ
- トヨタマヒメは、海の神の娘。なくした釣り針をさがしに来た山幸彦(ホヲリ)と、海の宮殿の井戸で出会った
- 3年の結婚のあと、ホヲリのため息から、タイののどの釣り針が見つかった
- 浜辺の鵜の羽の産屋で「見ないでください」とたのんだが、のぞかれ、八丈もある鰐の姿を見られた
- 海の道をふさいで帰ったが、恋しさから妹タマヨリ姫に歌をそえて送った。孫が神武天皇
- 日本神話の全体は日本神話の入門へ。ホヲリの母コノハナサクヤヒメ、タケミカヅチ、同じく海のかなたの宮へ行った浦島子もどうぞ
参考文献
- 『古事記』武田祐吉訳. 上卷「海幸と山幸」「トヨタマ姫」. 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/001518/card51732.html (閲覧日:2026年10月10日)
- 青木繁「わだつみのいろこの宮」1907年(アーティゾン美術館所蔵). Wikimedia Commons, File:AOKI Shigeru - Paradise under the Sea.jpg(パブリックドメイン). https://commons.wikimedia.org/wiki/File:AOKI_Shigeru_-_Paradise_under_the_Sea.jpg (閲覧日:2026年10月10日)
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