
プレ男浦島太郎って、むかし話だよね? 神話にも出てくるの?

メル美『日本書紀』や『万葉集』に、「浦島子」として出てくるんだって。カメも竜宮城も、ちょっとちがうの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回は浦島子(うらしまこ)、浦島太郎のもとになった伝説です。『日本書紀』巻第十四(雄略天皇)と、『万葉集』巻第九の原文と訓読(ウィキソース)を読みました。日本神話の全体は日本神話の入門へ。

河鍋暁斎「亀に乗る浦島太郎」1888年以後。掛け軸、絹本着色(表装をのぞき切り出し)。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン。作者は1889年没)
プロフィール
| 名前 | 水江浦嶋子(みずのえのうらしまこ)(『日本書紀』)、水江の浦島の子(『万葉集』) |
| ふるさと | 丹波国餘社郡管川(『日本書紀』)。『万葉集』の長歌は住吉(すみのえ)の岸からうたい出す |
| 出会い | 釣りあげた大きなカメが女性になった(『日本書紀』)。海の神の娘(『万葉集』) |
| 行き先 | 蓬莱山(『日本書紀』)、常世(とこよ)の海の神の宮(『万葉集』) |
| 約束 | 「この箱を、けっして開けないで」(『万葉集』) |
1. 『日本書紀』の短い記事
『日本書紀』巻第十四、雄略天皇22年(秋7月)の記事です。
- 「丹波国の餘社郡、管川の人、水江浦嶋子(みずのえのうらしまこ)が、舟に乗って釣りをしていた。すると大きなカメがつれた。カメはたちまち女性にかわった」
- 「浦嶋子は心をうたれて妻とし、ともに海に入り、蓬莱山にいたって、仙人たちを見てまわった」
- そして、「くわしいことは別の巻にある」と結ばれています

プレ男『日本書紀』だと、カメそのものが女の人になるんだ! しかも行き先は蓬莱山。
2. 『万葉集』の長歌:常世の宮
『万葉集』巻第九、1740番の長歌「水江の浦島の子を詠む一首」(高橋虫麻呂の歌集から)です。
- 歌は、「春の日の かすめる時に 住吉の 岸に出でゐて 釣舟の とをらふ見れば いにしへの ことぞ思ほゆる」と、作者が住吉の岸で釣り舟を見て、むかしの話を思い出すところからはじまります
- 水江の浦島の子は、カツオやタイを釣ることにむちゅうになり、7日も家に帰らず、海の境をこえてこいでいきました
- そこで、たまたま海の神の娘と出会い、ことばをかわして心が結ばれ、常世(とこよ)へいたります
- 2人は、海の神の宮の、奥のりっぱな御殿に入って、「老いもせず 死にもせずして 長き世に ありけるものを」——年もとらず、死にもせず、いつまでもくらしていたのに……と歌はつづきます
3. 「この箱を開けないで」
- ところが浦島の子は、妻に言いました。「しばらく家に帰って、父と母にこのことを話したい。あしたにはもどってくる」
- 妻は答えます。「常世にまた帰ってきて、いまのように会いたいと思うなら、この櫛笥(くしげ、箱)を、けっして開けないで」
- 住吉にもどった浦島の子は、家をさがしても家が見つからず、村をさがしても村が見つかりません。「家を出てから3年のあいだに、垣根もなく家がなくなるなんて」とふしぎに思い、「この箱を開ければ、もとのように家があるかもしれない」と、箱を少し開けてしまいました

メル美本人は「3年」のつもりだったのに、ふるさとはすっかり変わっていたんだね…。
4. 白い雲がたなびいて
- すると、「白雲の 箱より出でて 常世辺に たなびきぬれば」——白い雲が箱から出て、常世のほうへたなびいていきました
- 浦島の子は、走り、さけび、袖をふり、ころげまわり、足ずりをしましたが、たちまち気をうしない、「若くありし 肌も皺みぬ 黒くありし 髪も白けぬ」——若かった肌はしわになり、黒かった髪は白くなりました
- やがて息もたえて、ついに命が終わります。歌は「水江の 浦島の子が 家ところ見ゆ」——ここに浦島の子の家のあとが見える、と結ばれています
- 反歌(1741番)は、「常世辺に 住むべきものを 剣大刀 汝が心から おそやこの君」——常世に住んでいられたのに、自分の心のせいで……なんとおろかなことよ、とうたっています

『万葉集』の長歌では、箱を開けると白い雲が常世のほうへたなびき、浦島の子の若かった肌はしわになり、黒かった髪は白くなりました。
まとめ
- 浦島太郎のもとは、奈良時代の本にのこる「浦島子」の伝説
- 『日本書紀』では、丹波国の浦嶋子が釣った大きなカメが女性になり、ともに蓬莱山へ行った
- 『万葉集』の長歌では、海の神の娘と常世で「老いもせず死にもせず」くらした
- 「開けないで」と言われた箱を開けると、白い雲がたなびき、浦島の子は年老いて亡くなった
- 海の宮殿でむすばれたトヨタマヒメ、常世の国へ去ったスクナビコナ、アイルランドのにた話常若の国のオシーン、日本神話の入門もどうぞ
参考文献
- 『日本書紀』卷第十四(大泊瀬幼武天皇 雄略天皇)二十二年秋七月. ウィキソース. https://zh.wikisource.org/wiki/日本書紀/卷第十四 (閲覧日:2026年10月10日)
- 『万葉集』第九巻 1740番(詠水江浦嶋子一首并短歌)・1741番(反歌). ウィキソース. https://ja.wikisource.org/wiki/万葉集/第九巻 (閲覧日:2026年10月10日)
- メトロポリタン美術館. Kawanabe Kyōsai, Urashima Tarō Riding on a Tortoise, after 1888(57.70.4、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/50771 (閲覧日:2026年10月10日)
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