
プレ男海のむこうのふしぎな国で、何百年もたっていた…って、浦島太郎みたい!

メル美アイルランドにも、そっくりな話があるんだって。玉手箱のかわりに「馬からおりるな」という約束が出てくるの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はケルト(アイルランド)の常若の国のオシーンです。T.W.ロールストン『フィンの偉業 ほか古代アイルランドの詩人の物語』(1910年、プロジェクト・グーテンベルク)の第15章「常若の国のオシーン」を読みました。オシーンの父についてはフィン・マックールへ。ケルト神話の全体はケルト神話の入門へ。

スティーヴン・リード「ふたりは堂々たる宮殿に乗りつけた」(They rode up to a stately palace)、ロールストン『フィンの偉業』(1910年)のさし絵。ウィキメディア・コモンズ(パブリックドメイン)
プロフィール
| オシーン | 英雄フィンの息子。戦士として名高いが、それ以上に歌と物語の詩人として名高い |
| ニアヴ | 「金の髪のニアヴ」。常若の国の王の娘 |
| 常若の国 | 海のかなたの国。悲しみも、つかれも、死もない |
| 約束 | ふるさとで、馬からおりて地面にふれてはいけない |
| すぎていた時 | 300年 |
1. 白い馬の王女
- ある霧の夏の朝、フィンとオシーンが仲間と狩りをしていると、雪のように白い馬に乗った美しい乙女がやってきました。金の冠に、赤い金の星をちりばめた絹のマントを着て、馬のひづめには銀のくつがはいていました
- 乙女は名のりました。「わたしは金の髪のニアヴ。常若の国の王の娘です。ここへ来たのは、あなたの息子オシーンを愛しているからです」
- そして、海のかなたの国のことを歌いました。「一年じゅう木に実がなり、花がさいている。痛みも病も知らず、死もおとろえも近づかない」。オシーンはニアヴと白い馬に乗り、フィアナの騎士たちは、二度と地上でオシーンを見ることはありませんでした
2. 常若の国
- 白い馬は、波の上をかるがるとかけていきました。金色のかすみや、嵐をくぐりぬけると、黄色い砂浜と、森の丘、町の塔が見えてきました
- 町で出会う人は、みな若者と乙女ばかりで、年よりや弱った人はひとりもいません。森のシカやリス、ハトも、おそれずに近よってきました
- 常若の国の王は言いました。「ようこそ、フィンの子オシーン。ここは、悲しみもつかれも死も、けっしてとどかない国だ。わたしたちには楽しいものがすべてあるが、詩だけがなかった」。オシーンはその日、ニアヴと結婚しました

メル美何でもある国に、詩だけがなかったなんて。詩人のオシーンがまねかれたわけがわかるね。
3. ふるさとが恋しくて
- けれども、すべてが完ぺきな国では、とりわけほめたたえたいものがないので、オシーンは竪琴にふれず、詩をつくることもなくなりました
- オシーンは、狩りに出かけ、巨人にとらわれた妖精の王女を助けたりもしましたが、やがて、手がらを語りあったフィアナのなかまや、父フィンの笑顔が恋しくなりました。「しばらくのあいだ、エリン(アイルランド)に帰らせてほしい」
- ニアヴは泣いてとめましたが、とうとう白い馬をつれてきて言いました。「この馬が、あなたをふるさとへ運んでくれます。けれど、ほんのいっときでも、馬からおりてはいけません。足が一度でも地面にふれたら、もう二度と、わたしと常若の国へはもどれません」
4. 300年後のエリン
- 海をこえてエリンにつくと、見たことのない石の建物と、ブロンズの鐘がありました。フィンの城があったアレンの丘には、草におおわれた土の山しかなく、農夫の牛が草を食べていました
- オシーンはフィンやオスカル、猟犬たちの名をよびましたが、聞こえるのは風の音だけでした
- 東へむかうと、畑で、何人もの男たちが大きな石をどかそうとして苦労していました。男たちは、オシーンにくらべて小さく、弱々しく見えました。オシーンはあわれに思い、馬の上から身をかがめて、片手で石を持ちあげ、丘の下へころがしてやりました
5. 落馬
- 男たちは歓声をあげましたが、その声はすぐに悲鳴にかわりました。石を持ちあげたとき、くらの帯が切れて、オシーンは地面に落ちてしまったのです
- 白い馬は、霧のように消えました。地面から起きあがったのは、若い戦士ではなく、白いひげの、ひどく年老いた男でした。赤いマントはそまつな服に、金のつかの剣は、こじきがもつような木の杖にかわっていました
- オシーンがフィンのことをたずねると、監督の男は言いました。「フィンも、その一族も、もう300年も前に死んでいる」
- オシーンは聖パトリックのもとへつれていかれ、パトリックはオシーンをもてなして、その話を書きとめさせました。オシーンはのこりの短い命で、フィアナの物語を語りましたが、常若の国の300年のことは、ほとんど話しませんでした。それは、晴れの日と雨の日のあいだに見た、夜の夢のように思えたからでした

プレ男人を助けようとして石を持ちあげたのに…。浦島太郎より、もっと切ないかも。

ロールストンの本では、ニアヴは「足が一度でも地面にふれたら、もう常若の国へはもどれない」と言いました。オシーンは石を持ちあげたときに馬から落ち、たちまち年老いてしまいました。
まとめ
- オシーンは、英雄フィンの息子で、フィアナの詩人
- 常若の国の王女ニアヴにさそわれ、白い馬で海をわたって、常若の国で結婚した
- ふるさとが恋しくなったオシーンに、ニアヴは「馬からおりてはいけない」と言った
- エリンでは300年がすぎていて、石を持ちあげようとして落馬したオシーンは、たちまち年老いた
- 父の英雄フィン・マックール、日本の浦島子、海のかなたの国の神マナナーンもどうぞ
参考文献
- T. W. Rolleston. The High Deeds of Finn and Other Bardic Romances of Ancient Ireland(1910年), Chapter XV “Oisín in the Land of Youth”. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/14749 (閲覧日:2026年10月10日)
- Stephen Reid. “They rode up to a stately palace”(同書のさし絵). Wikimedia Commons(パブリックドメイン). https://commons.wikimedia.org/wiki/File:15_They_rode_up_to_a_stately_palace.jpg (閲覧日:2026年10月10日)
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