
プレ男ヘカテって、魔女の女神ってイメージがあるけど…。

メル美ヘシオドスの『神統記』では、天にも地にも海にも力をもつ、とってもたよりになる女神としてえがかれているんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はギリシャ神話の女神ヘカテです。ヘシオドス『神統記』404〜452行と、『ホメロス風讃歌』第2歌「デメテルへ」(H.G.エヴリン=ホワイト英訳と注、1914年、プロジェクト・グーテンベルク)を読みました。ギリシャ神話の全体はギリシャ神話の入門へ。
プロフィール
| ヘカテ | ゼウスが「だれよりもうやまった」女神 |
| 親 | ペルセスとアステリア。アステリアは、コイオスとポイベの娘で、レトの姉妹 |
| 分けまえ | 大地と海、そして星空の天に、ほまれをもつ |
| かかわること | 王の裁き、集会、いくさ、競技、騎手、漁、家畜をふやすこと |
| もうひとつの役目 | 若い者たちを育てる女神 |
| ひとりっ子 | 母のただひとりの子 |
1. ゼウスがうやまった女神
- 『神統記』です。ポイベとコイオスの娘アステリアは、ペルセスにむかえられて妻となりました。「そして身ごもって、ヘカテを生んだ。クロノスの子ゼウスは、だれよりもヘカテをうやまった」
- ゼウスはヘカテに、大地と実りのない海の分けまえをあたえました。ヘカテは星空の天でもほまれを受け、不死の神々にも、たいそううやまわれています
- 「いまでも、地上のだれかが、ならわしどおりにゆたかないけにえをささげて、めぐみを祈るときは、ヘカテの名をよぶ」
2. とりあげられなかった分けまえ
- 「クロノスの子(ゼウス)は、ヘカテにわるいことをせず、むかしのティタンの神々のあいだでの分けまえを、何ひとつとりあげなかった」と書かれています
- ヘカテは、はじめの分けかたのとおり、大地にも、天にも、海にも特権をもちつづけました
- 「ひとりっ子だからといって、ほまれが少ないのではなく、ずっと多い。ゼウスがうやまっているからだ」——エヴリン=ホワイトの注は、ヘカテには自分の言い分をささえてくれる兄弟がいないので、軽んじられてもおかしくなかった、というファン・レネプの説明を紹介しています

メル美王さまがかわっても、ヘカテの力はそのまま。ゼウスがしっかり守ってくれたんだね。
3. どこにでもあらわれる助け手
『神統記』は、ヘカテが助ける場面をつぎつぎにならべます。
- 「尊い王たちのそばで裁きにすわり、集会では、思う人を人々のあいだで目立たせる」
- 「人々がいくさにそなえるとき、女神はそばにいて、思う人に勝利とほまれをあたえる」
- 「競技でも、女神は人々とともにいて助ける」。騎手のそばにも立つ
- 「灰色の海ではたらく人々が、ヘカテと地をゆるがす神(ポセイドン)に祈れば、女神はたやすく大漁をあたえる。そして、思えば、見えたとたんに、たやすくとりあげる」
- 「ヘルメスとともに家畜小屋にいて、家畜をふやす」。牛や山羊や羊の群れを、思えば少しから多くし、また少なくもする
- そしてゼウスは、ヘカテを「若い者たちを育てる者」にしました

プレ男裁判にも、スポーツにも、漁にも、牧場にも…! なんでも助けてくれる女神なんだ。でも「とりあげることもある」のは、ちょっとこわいね。
4. ペルセポネの声を聞いた女神
- 『ホメロス風讃歌』「デメテルへ」で、ハデスにつれさられるペルセポネのさけびを聞いたのは、「洞窟の中の、心やさしいヘカテ」と、太陽神ヘリオスだけでした
- むすめをさがして9日さまよったデメテルのもとに、10日目の夜明け、ヘカテがたいまつを手にしてやってきて、言いました。「デメテルさま、天の神か人間のだれが、ペルセポネをつれさって、あなたの心を悲しみでつらぬいたのでしょう。わたしは声を聞きましたが、だれなのか、この目では見ていません」
- ふたりはたいまつをもって、すべてを見はるヘリオスのもとへ行きました(くわしくはデメテル)
- 母と娘が再会したあと、ヘカテはそこへやってきて、何度もペルセポネをだきしめました。「そのときから、ヘカテはペルセポネにつかえ、つきそう者となった」

『神統記』では、ゼウスはヘカテをだれよりもうやまい、ティタンの時代からの、大地・海・天の分けまえを、何ひとつとりあげなかった、と書かれています。
まとめ
- ヘカテは、アステリアとペルセスの娘で、ゼウスがだれよりもうやまった女神
- 大地・海・天に分けまえをもち、ゼウスはそれを何ひとつとりあげなかった
- 王の裁き、いくさ、競技、騎手、漁、家畜…どこにでもあらわれて、思うままに助ける
- 若い者たちを育てる女神でもある
- ペルセポネの声を聞き、たいまつを手にデメテルをたずね、のちにペルセポネにつきそった
- 同じ『神統記』の神々のちかいの水ステュクス、むすめをさがしたデメテル、冥界の女王ペルセポネ、ともに声を聞いたヘリオスとセレネもどうぞ
参考文献
- Hesiod. Theogony, ll. 404–452(注1617をふくむ); Homeric Hymn II (To Demeter), ll. 19–73, 438–440(英訳:H. G. Evelyn-White、1914年). In: Hesiod, the Homeric Hymns, and Homerica. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/348 (閲覧日:2026年10月12日)
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