
プレ男天若日子って、はじめて聞く名前だ。どんな神さま?

メル美天から地上へ「仕事」でつかわされたのに、8年も連絡しなかった神さまなんだって。最後は、自分が射た矢がかえってきちゃうの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回は日本神話の天若日子(あめのわかひこ)です。『古事記』上巻の「天若日子」の段を、武田祐吉の現代語訳(青空文庫)で読みました。この話は、タケミカヅチが出雲へくだる「国ゆずり」の前の出来事です。日本神話の全体は日本神話の入門へ。

歌川広重「キクとキジ」(英題 Pheasant with Chrysanthemums)1835年ごろ。木版画。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)。天若日子のもとへ、天の使いとしてキジがつかわされました
プロフィール
| 父 | アマツクニダマの神 |
| 天からさずかったもの | りっぱな弓矢 |
| 妻 | 大国主の娘、下照姫(したてるひめ) |
| したこと | 地上の国を自分のものにしようと思い、8年返事をしなかった |
| さいご | 自分が射た矢を、天から投げかえされて命を落とした |
| にていた神 | 下照姫の兄、アヂシキタカヒコネの神 |
1. 8年たっても返事がない
- 天照大神は、「葦原の水穂の国(地上の国)は、わたしの子がおさめる国だ」と言いました。でも、地上には乱暴な神が多いようです
- はじめにつかわされたホヒの神は、大国主にしたがってしまい、3年たっても返事をしませんでした
- そこでオモヒガネの神のすすめで、アマツクニダマの神の子天若日子に、りっぱな弓矢をさずけてつかわしました
- ところが天若日子は、地上におりると、大国主の娘下照姫を妻にして、その国を自分のものにしようと思い、8年たっても返事をしませんでした

メル美3年の次は8年…。地上って、そんなにいいところだったのかな。
2. キジの鳴女(なきめ)
- 天の神々は、「キジの鳴女をつかわしましょう」と決め、キジにこう言わせることにしました。「なぜ8年たっても返事をしないのか」
- 鳴女は天からおりてきて、天若日子の門にある桂の木の上で、天の神の言葉をそのまま伝えました
- それを聞いた天の探女(あめのさぐめ)という女が、「この鳥は、鳴き声がよくありません。射殺しておしまいなさい」とすすめました
- 天若日子は、天の神からさずかった弓矢で、キジを射殺してしまいました
3. かえってきた矢
- その矢は、キジの胸をつきぬけて、天まで飛んでいき、天のヤスの河原にいた天照大神と高木の神(タカミムスビの神)のもとにとどきました
- 高木の神が矢を見ると、羽に血がついていました。「この矢は、天若日子にあたえた矢だ」
- 高木の神は、神々に見せて言いました。「もし天若日子が、命令どおりに乱暴な神を射た矢なら、天若日子にあたるな。もし、悪い心があるなら、天若日子はこの矢で死ね」
- そして、矢が飛んできた穴から、矢をつきかえしました。矢は、朝の床でねていた天若日子の胸にあたり、天若日子は命を落としました
- キジは天に帰ってこなかったので、いまでもことわざに「行ったきりのキジのお使い」というのだ、と『古事記』は書いています

プレ男自分が射た矢が、自分にかえってくる…。「悪い心がなければあたらない」っていうのが、こわいね。

『古事記』では、高木の神が「悪い心があるなら、この矢で死ね」と言って矢をつきかえし、それが朝ねていた天若日子の胸にあたります。
4. 鳥たちのとむらい
- 妻の下照姫の泣く声は、風にのって天までとどきました
- 天にいた父アマツクニダマの神や、天若日子の天でのもとの妻子たちがおりてきて、葬式のための家(喪屋)をつくりました
- 『古事記』は、鳥たちのやくわりを書いています。ガンは死者の食べものをもつ役、サギはほうきをもつ役、カワセミは料理人、スズメは臼をつく女、キジは泣く役の女。こうして8日8晩、「あそび」(とむらいの歌や舞)をしました
5. そっくりな友
- そこへ、下照姫の兄アヂシキタカヒコネの神が、とむらいにやってきました
- すると、天若日子の父や妻が、「わが子は死ななかった!」「わたしの夫は死ななかったのだ!」と、手足にすがりついて泣きました。ふたりの神の姿が、とてもよくにていたからです
- アヂシキタカヒコネの神は、とてもおこりました。「わたしは親しい友だから、とむらいに来たのだ。なぜ、死んだ者とまちがえるのか」。そして剣をぬいて喪屋を切りたおし、足でけとばしました。それが、美濃の国の喪山(もやま)になったといいます
- おこって飛びさる兄の名をあらわそうと、下照姫は「谷を2つ、一度にわたる、アヂシキタカヒコネの神です」と歌いました。この歌は「夷振(ひなぶり)」とよばれる、と書かれています
まとめ
- 天若日子は、地上の国をおさめるために天からつかわされた神
- 大国主の娘下照姫と結婚し、8年返事をしなかった
- ようすを見に来たキジの鳴女を射ると、矢は天にとどき、高木の神が「悪い心があるならあたれ」とつきかえした矢で命を落とした
- 「行ったきりのキジのお使い」ということわざのはじまり
- とむらいには、鳥たちがそれぞれの役をつとめた
- このあと地上へくだったタケミカヅチ、国をゆずった大国主、日本神話の入門もどうぞ
参考文献
- 『古事記』武田祐吉訳. 上卷「天若日子」. 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/001518/card51732.html (閲覧日:2026年10月10日)
- メトロポリタン美術館. Utagawa Hiroshige, Pheasant with Chrysanthemums, ca. 1835(JP3148、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/56699 (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。



