
プレ男生きたまま、死者の国へ行ったの? なんのために?

メル美ふるさとへの帰り道を、予言者にたずねるためなんだって。そこで、なつかしい人たちのたましいにも出会うの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はオデュッセウスの冥界くだりです。ホメロス『オデュッセイア』第11巻(サミュエル・バトラー英訳と注、プロジェクト・グーテンベルク)を読みました。同じ第11巻で見た冥界の罰はタンタロスとシシュポスへ。オデュッセウスの旅の全体はオデュッセウスへ。
プロフィール
| たずねた相手 | テーバイの予言者テイレシアス(金の杖をもつ) |
| たましいと話すには | そなえものの血を飲んだたましいだけが、生きていたときのように話せる |
| 予言の警告 | 太陽神の牛と羊に手を出すな |
| ふしぎなしるし | かついだオールを「箕(み)」(英訳では winnowing shovel、穀物をあおる道具)とまちがえる旅人 |
| 出会った人 | 母アンティクレイア、英雄アキレウスなど |
1. テイレシアスの予言
- オデュッセウスは、ふるさとへの帰り道をたずねるために、死者の国をおとずれました。そなえものの血のそばに、つぎつぎとたましいがあつまってきました
- 母アンティクレイアのたましいも来ました。トロイアへ出かけるときは、まだ生きていた母です。オデュッセウスは涙をながしましたが、まずテイレシアスにたずねるまでは、母を血に近づけませんでした
- 金の杖をもったテイレシアスが来て、血を飲み、予言しました。「ポセイドンは、息子の目をつぶされたことを、まだうらんでいる。それでも、トリナキエの島で、すべてを見て聞く太陽神の羊と牛に手を出さなければ、苦しみのすえに、イタケへ帰れるだろう。もし手を出せば、船も仲間もうしなうことになる」
- テイレシアスは、オデュッセウスが家にもどってからのことも予言しました。「よくできたオールをかついで、海を知らず、食べものに塩もまぜず、船もオールも知らない人々の国まで行きなさい。旅人に出会って、『あなたが肩にかついでいるのは、箕でしょう』と言われたら、オールを地面につきたてて、ポセイドンにいけにえをささげなさい」
- 「おまえの死は、海から来る。年をかさね、心おだやかに、とてもしずかに命がつきていくだろう。人々はおまえをたたえるだろう」
- バトラー訳では、家にもどったあとについての予言の部分は、角かっこでかこまれています

メル美オールを見ても、それが何かわからない国…。それくらい、海から遠くまで行きなさいってことなんだね。
2. すりぬける母のたましい
- 「どうすれば、母はわたしに気づいてくれるのでしょう」とたずねると、テイレシアスは「血を飲ませたたましいは、話をしてくれる」と答えました
- 血を飲んだ母は、すぐにわが子に気づきました。「生きているのに、どうしてこんな暗いところへ来たのですか」
- 母は、家のようすを語りました。妻ペネロペは家にいて、昼も夜も泣いていること。息子テレマコスが土地をまもっていること。父ラエルテスはいなかにひきこもり、息子が帰らないことをなげいていること
- そして、自分の死について言いました。「わたしは、病気で死んだのではありません。おまえがどうしているか知りたい気持ちと、おまえを思う心が、わたしの命をうばったのです」
- オデュッセウスは、3度、母をだきしめようとしましたが、そのたびに、母は夢かまぼろしのようにすりぬけてしまいました。母は言いました。「死んだ者は、みなこうなのです。いのちが体をはなれると、たましいは夢のように飛んでいってしまうのです。さあ、早く光のある世界へ帰って、このことをすべて、いつかおまえの妻に話してあげなさい」

プレ男3度だきしめようとしても、すりぬけちゃう…。これは、つらすぎる。
3. アキレウスのことば
- やがて、トロイアでたおれた英雄アキレウスのたましいがやってきました
- オデュッセウスは言いました。「アキレウス、あなたほどしあわせな人はいない。生きているあいだはみなにうやまわれ、ここでは死者のあいだの偉大な王だ。だから、死んだことを、そんなに気にやまないでください」
- アキレウスは答えました。「死をほめるようなことは言わないでくれ。死者の中の王の中の王になるより、貧しい人の家で、雇われ人として地上にいるほうがいい」
- そしてアキレウスは、息子のことや、年老いた父ペレウスのことを、しきりにたずねました

『オデュッセイア』第11巻では、アキレウスのたましいは「死者の中の王の中の王になるより、地上で、貧しい人の家の雇われ人でいるほうがいい」と語っています。
まとめ
- オデュッセウスは、帰り道をたずねるため、死者の国をおとずれた
- 予言者テイレシアスは、太陽神の牛に手を出すなと警告し、オールを「箕」とまちがえる国の話や、おだやかな最期まで予言した
- 母アンティクレイアは、「おまえを思う心が、わたしの命をうばった」と語り、だきしめようとしてもすりぬけた
- アキレウスは、「死者の王より、地上の雇われ人がいい」と言った
- 予言がほんとうになった太陽神の牛、同じ第11巻のタンタロスとシシュポス、旅の主人公オデュッセウス、トロイアの英雄アキレウスもどうぞ
参考文献
- Homer. The Odyssey(英訳:Samuel Butler), Book XI. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/1727 (閲覧日:2026年10月12日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。


