
プレ男「手を出すな」って言われてたのに、牛を食べちゃったの?

メル美風がやまなくて、食べものがなくなって…。追いつめられた仲間たちの話なんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はギリシャ神話の太陽神の牛です。ホメロス『オデュッセイア』第12巻(サミュエル・バトラー英訳、プロジェクト・グーテンベルク)を読みました。この島のことを予言したテイレシアスの話はオデュッセウスの冥界くだりへ。太陽神ヘリオスについてはヘリオスとセレネへ。
プロフィール
| 島 | トリナキエの島 |
| 群れ | 太陽神の牛の群れ7つと羊の群れ7つ。それぞれ50頭 |
| ふしぎ | 子どもを生まず、数がへることもない |
| 番をする女神 | 太陽神ヒュペリオンとネアイラの娘、パエトゥーサとランペティエ |
| 警告した者 | 予言者テイレシアス、魔女キルケ |
| やまなかった風 | 南風(と東風)が1か月 |
1. キルケの警告
- キルケは、オデュッセウスにこう教えていました。「あなたはトリナキエの島に着くでしょう。そこには、太陽神の牛の群れが7つ、羊の群れが7ついて、それぞれ50頭。子を生むことも、数がへることもない」
- 「その群れは、太陽神ヒュペリオンとネアイラの娘、パエトゥーサとランペティエの女神たちが世話をしている。群れに手を出さず、帰ることだけを考えれば、苦しみのすえにイタケへ帰れるでしょう。けれども、手を出せば、船も仲間もほろびる」
2. 島にとどまる
- 島が見えると、オデュッセウスは、上陸せずに通りすぎようと言いました。けれども、つかれきった仲間のエウリュロコスが、「夜の海はあぶない。今夜はここで食事をして、あすの朝に出発しよう」と言い、みなが賛成しました
- オデュッセウスはしかたなく、ひとりひとりに「牛や羊の群れに出会っても、1頭も殺さない。キルケがくれた食べもので満足する」とちかわせました
- ところが、その夜から大嵐になり、それから1か月のあいだ、南風と東風しかふかず、船を出せませんでした
3. つきた食べもの
- 船の穀物とぶどう酒があるあいだは、仲間たちは牛に手を出しませんでした。けれども、それがなくなると、つり針やつり糸で魚をとり、鳥をつかまえ、手にはいるものを何でもとって食べました。みな飢えていたのです
- ある日、オデュッセウスは、神々に祈るために、ひとりで島の奥へ行きました。祈っているうちに、神々は彼をあまいねむりにおとしました
- そのあいだに、エウリュロコスが言いました。「どんな死もつらいが、飢え死にほどつらいものはない。いちばんよい牛を神々へのいけにえにしよう。イタケに帰れたら、太陽神にりっぱな神殿をたてればいい」
- 仲間たちは賛成し、いちばんよい牛たちを追いたてて、いけにえにしてしまいました

メル美おなかがすいて、どうしようもなかったんだろうね…。でも、ちかいをやぶってしまった。
4. 太陽神の怒り
- 目をさましたオデュッセウスが船にもどると、肉を焼くにおいがしました。「ゼウスよ、神々よ、あなたがたは、わたしをねむらせて、ひどいことをなさった」
- 番をしていたランペティエは、すぐに太陽神のもとへ行き、牛が殺されたことを告げました
- 太陽神は怒り、神々に言いました。「のぼるときも、しずむときも、ながめるのがたのしみだった牛を殺した。つぐないをしないなら、わたしは冥界へおりて、死者たちを照らそう」
- ゼウスは答えました。「太陽よ、神々と人間を照らしつづけてくれ。船が海に出たら、わたしが雷でうちくだこう」。オデュッセウスは、このことを、のちにカリュプソから聞いたと語っています
5. 鳴きだした肉
- 「神々は、すぐにふしぎなしるしを見せはじめた。牛の皮ははいまわり、焼き串の肉は、牛のように鳴きだした。焼いた肉も、生の肉も、牛のように声をあげつづけた」
- 6日のあいだ、仲間たちは牛を食べつづけ、7日目に風がおさまったので、船を出しました
- 島が見えなくなり、空と海しか見えなくなったとき、ゼウスは船の上に黒い雲をおこし、はげしい西風と雷で船をくだきました。仲間たちはみな海に投げだされ、ふるさとへ帰ることはできませんでした
- オデュッセウスだけが、帆柱と竜骨をしばりつけてつかまり、波にはこばれて、10日目の夜、女神カリュプソの島に流れつきました

プレ男焼いた肉が鳴きだすなんて、こわすぎる…。テイレシアスの予言は、ほんとうになっちゃったんだ。

『オデュッセイア』第12巻では、太陽神の牛は7つの群れにそれぞれ50頭いて、子を生むことも数がへることもなく、太陽神の娘パエトゥーサとランペティエが世話をしている、と書かれています。
まとめ
- トリナキエの島には、ふえもへりもしない太陽神の牛と羊の群れがいた
- テイレシアスとキルケは「けっして手を出すな」と警告していた
- 風が1か月やまず、食べものがつきると、仲間たちは、ねむるオデュッセウスのいないあいだに牛をいけにえにしてしまった
- 太陽神の怒りで、ゼウスは船に雷を落とし、オデュッセウスだけがカリュプソの島へ流れついた
- 予言を告げたオデュッセウスの冥界くだり、太陽神ヘリオスとセレネ、流れついた島の女神カリュプソもどうぞ
参考文献
- Homer. The Odyssey(英訳:Samuel Butler), Book XII. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/1727 (閲覧日:2026年10月12日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
