
プレ男アキレウスって、「アキレス腱」の人だよね! かかとが弱点の。

メル美でも『イリアス』には、かかとが弱点という話は出てこないんだって。親友や父への思いがえがかれているの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はギリシャ神話のアキレウスです。ホメロス『イリアス』(A.T.マレー英訳、1924年)の9巻・18巻・24巻と、アポロドーロス『ビブリオテーケー(ギリシャ神話)』(J.G.フレイザー英訳)を、ペルセウス・デジタル・ライブラリーで読みました。ギリシャ神話の全体はギリシャ神話の入門へ。

ジュゼッペ・ジロメッティ「ヘクトルのなきがらを願うプリアモス」1815〜25年ごろ。オニキスと金のカメオ。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
プロフィール
| 父 | 人間の王ペレウス |
| 母 | 海の女神テティス |
| 育ての親 | ケンタウロスのケイロン(アポロドーロス) |
| 親友 | パトロクロス |
| 2つの運命 | 戦えば名はくちず、帰れば命が長い(『イリアス』9巻) |
| さいご | パリス(アレクサンドロス)とアポロンの矢を足首にうけた(アポロドーロス摘要) |
1. 火の中の赤ちゃん
アポロドーロス(3.13.6)です。
- テティスは、ペレウスとのあいだに生まれた赤ちゃんを不死にしようとしました。夜、ペレウスにないしょで赤ちゃんを火の中にかくし、父からうけついだ人間の部分をほろぼそうとし、昼はアンブロシア(神々の食べもの)をぬっていました
- ところが、ペレウスがそれを見て、火の中でもだえる子に声をあげたので、テティスは目的をはたせず、子をおいて海の女神たちのもとへ帰ってしまいました
- ペレウスは子を、ケンタウロスのケイロンにあずけ、ケイロンがアキレウスと名づけました
2. 2つの運命
『イリアス』9巻です。総大将アガメムノンにはずかしめられたアキレウスは、戦いからしりぞいていました。使者がたくさんの贈りものをもって説得に来ると、アキレウスは答えます。
- 「牛や羊は、うばえば手に入る。けれども、人の命は、一度歯のかきねをこえて出ていったら、うばっても、勝ちとっても、もどってはこない」
- 「母の女神テティスは言う。2つの運命が、わたしを死へとはこんでいる。ここにのこってトロイアのまわりで戦えば、故郷へ帰ることはできないが、わたしの名はくちることがない。故郷へ帰れば、名はうしなわれるが、命は長くつづく」

メル美「名誉」と「長生き」の、どっちかしかえらべないなんて…。
3. 親友の死
『イリアス』18巻です。
- 親友パトロクロスが、トロイアの英雄ヘクトルに討たれました。アキレウスのなげきの声を聞いて、母テティスが海の底からやってきます
- アキレウスは言いました。「わたしの大切な友パトロクロスが死んだ。だれよりも、自分自身と同じくらい大切にしていた友を、わたしはうしなった」
- 「ヘクトルがわたしの槍にうたれて命をおとし、パトロクロスのつぐないをするまでは、わたしの心は、生きて人の中にいることをゆるさない」
- テティスは涙を流して言いました。「そんなことを言うなら、わが子よ、おまえの死は近い。ヘクトルのあとすぐに、おまえの死が待っているのだから」
アキレウスは、それでも戦いにもどり、ヘクトルを討ちました。母は、鍛冶の神ヘパイストスに、新しいよろいと盾をつくってもらいました。
4. プリアモスとの涙
『イリアス』24巻です。
- ヘクトルの父、トロイアの老王プリアモスは、ヘルメスにみちびかれて、ひとりでアキレウスの小屋に入りました。そして、アキレウスのひざをだき、「自分の息子たちを殺した、おそろしい手」に口づけしました
- 「アキレウスよ、あなたの父を思い出してください。わたしと同じ年ごろで、老いの戸口に立っています。……あなたの父よりも、わたしはもっとあわれです。息子たちを殺した人の顔に、手をのばしたのですから」
- アキレウスは、自分の父を思って泣きたくなり、老人の手をとって、そっとはなしました。「ふたりはそれぞれの死者を思って泣いた。ひとりはヘクトルを思って、アキレウスの足もとで。アキレウスは、自分の父を思って、そしてまたパトロクロスを思って」
- やがてアキレウスは立ちあがり、老王の白い頭と白いひげをあわれんで、手をとって起こし、こう言いました。「神々は、あわれな人間たちが苦しみの中で生きるように、運命の糸をつむいだ。……さあ、いすにすわりなさい。悲しみは、心の中にしずかにしまっておこう」

プレ男敵どうしなのに、いっしょに泣いたんだ…。いちばん強い英雄の、いちばんやさしい場面だね。

『イリアス』24巻では、プリアモスはヘクトルを思い、アキレウスは自分の父とパトロクロスを思って、ふたりはともに泣きました。
5. さいご
- 『イリアス』は、ヘクトルの葬儀で終わり、アキレウスの死はえがかれていません
- アポロドーロスの摘要(5.3)は、別の叙事詩にもとづいて、「アキレウスは、スカイア門で、アレクサンドロス(パリス)とアポロンによって、足首を矢でうたれた」と書いています
まとめ
- アキレウスは、人間の王ペレウスと海の女神テティスの子
- テティスは火で不死にしようとしたが、ペレウスに見つかってはたせなかった(アポロドーロス)
- 「名はくちないが帰れない」か「名はのこらないが命は長い」か、2つの運命を知っていた
- 親友パトロクロスの死で、自分の死が近いと知りながら戦いにもどった
- 老王プリアモスと、それぞれの死者を思ってともに泣いた
- 最後は足首に矢をうけた(アポロドーロス摘要)
- アキレウスに討たれたトロイアの王子ヘクトル、同じトロイア戦争の英雄オデュッセウス、よろいをつくったヘパイストス、ギリシャ神話の入門もどうぞ
参考文献
- Homer. The Iliad(英訳:A. T. Murray、1924年), 9.397–416; 18.65–96, 428–441; 22.289–300; 24.469–524, 777–804. Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0134 (閲覧日:2026年10月10日)
- Apollodorus. The Library(英訳:J. G. Frazer、1921年), 3.13.6; Epitome 5.3. Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0022 (閲覧日:2026年10月10日)
- メトロポリタン美術館. Giuseppe Girometti, Priam Supplicating Achilles for the Body of Hector, ca. 1815–25(40.20.40、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/198621 (閲覧日:2026年10月10日)
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