
プレ男フェニックスって、燃えて灰からよみがえる不死鳥だよね!

メル美古代の本では、どう書かれているか見てみよう。ちょっとイメージとちがうかも。
こんにちは、Dr. Taro です。 幻獣の解説、今回はフェニックス(不死鳥)です。ヘロドトス『歴史』(A.D.ゴドリー訳、1920年)、オウィディウス『変身物語』(B.モア訳、1922年)、プリニウス『博物誌』(J.ボストックとH.T.ライリー訳、1855年)の英訳を、ペルセウス・デジタル・ライブラリーで読みました。

『アバディーン動物寓意譚』のフェニックス、12世紀、イングランド。アバディーン大学図書館所蔵。ウィキメディア・コモンズ(パブリックドメイン)
プロフィール
| すがた | ワシくらいの大きさで、羽は金と赤(ヘロドトス)。首まわりは金、体は紫、尾は青にバラ色の羽(プリニウス) |
| 数 | 世界に1羽だけ(プリニウス) |
| 寿命 | 500年(ヘロドトス・オウィディウス)、540年(プリニウスが伝えるマニリウスの説) |
| 食べもの | 穀物も草も食べず、乳香のしずくとアモムムの汁だけ(オウィディウス) |
| ふるさと | アラビア |
| 向かう先 | エジプトの太陽の神殿(ヘリオポリス) |
1. ヘロドトス「絵でしか見たことがない」
紀元前5世紀のヘロドトス『歴史』第2巻73節です。
- 「もう1つ、聖なる鳥がいる。名をフェニックスという。わたし自身は見たことがなく、絵で見ただけだ。この鳥はめったにエジプトに来ないからだ。ヘリオポリスの人びとによると、500年に一度だという」
- 「父鳥が死ぬと、やってくるという。絵が本当の大きさとすがたをあらわしているなら、羽は金色のところと赤いところがあり、形も大きさもワシにいちばん似ている」
- 「この鳥がするという話は、わたしには信じられない」。フェニックスは、アラビアからミルラ(没薬)で父鳥をつつんで、エジプトの太陽の神殿へ運び、そこにほうむるというのです
- 運び方はこうです。まず、運べるかぎり重いミルラの卵を作って、持ちあげてためします。それから卵をくりぬいて父鳥を入れ、そのあなをまたミルラでふさぎます。父鳥を入れても、もとと同じ重さになるのです

プレ男ヘロドトス本人が「信じられない」って書いてるの、正直でいいな。
2. オウィディウス「みずから生まれかわる鳥」
紀元1世紀はじめのオウィディウス『変身物語』第15巻です。哲学者ピタゴラスが語る場面に出てきます。
- 「ほかの生きものは、別の生きものから生まれる。だが、みずから生まれ、みずから新しくなる鳥が1羽いる。アッシリアの人びとは、この鳥をフェニックスとよんだ」
- 「穀物も草も食べず、乳香のしずくとアモムムの汁だけで生きる。この鳥は500年の一生を終えると、かぎづめとかがやくくちばしで、ヤシの木のてっぺんに巣を作る」
- 「新しい巣に、カシアの皮、甘いナルドの穂、くだいたシナモンと黄色いミルラをしきつめると、その上に横たわり、香りにつつまれて一生を終える。すると、死んだ鳥の体から、同じだけの年を生きる小さなフェニックスが生まれるという」
- 若いフェニックスは、力がつくと、巣を高い木から持ちあげ、「自分のゆりかごであり、親の墓でもある巣」を運んで、太陽の神ヒュペリオンの都の神殿の扉の前におきます

メル美巣が「ゆりかごで、親のお墓でもある」って、すてきな言い方だね。
3. プリニウス「つくり話かもしれない」
紀元1世紀のプリニウス『博物誌』第10巻2章です。
- 「その先頭に立つのが、名高いアラビアの鳥フェニックスだ。もっとも、その存在がすべてつくり話ではないとは、わたしもいいきれない」
- 「世界にただ1羽しかいないといわれ、めったに見られない」
- ローマの元老院議員マニリウスによると、フェニックスが物を食べるのを見た人はいない。アラビアでは太陽の聖なる鳥とされ、540年生きる。年をとると、カシアと乳香の小枝で巣を作り、香りでみたして、その上で死ぬ。その骨と髄から、はじめは小さな虫のようなものが生まれ、やがて小鳥になる
- 若い鳥が最初にするのは、先代のとむらい。巣をまるごと太陽の都へ運び、祭壇にささげる
- プリニウスは、クラウディウス帝の時代に、フェニックスがローマにつれてこられて公開されたと記録にあるが、「それがにせものだったことを疑う人はいない」とも書いています

ヘロドトス、オウィディウス、プリニウスの3つの本では、フェニックスは香りの巣で一生を終え、新しい鳥が親の巣を太陽の都へ運ぶ、と書かれています。燃えて灰からよみがえる話は出てきません。
まとめ
- フェニックスは、アラビアから、500年(または540年)に一度、エジプトの太陽の神殿へやってくるといわれた鳥
- ヘロドトスは「絵でしか見たことがない。信じられない」と書いた
- オウィディウスは「みずから生まれかわる、ただ1羽の鳥」とうたい、香木の巣で死に、その体から新しい鳥が生まれるとした
- プリニウスは「つくり話かもしれない」と書き、ローマで見せられたフェニックスはにせものだったとした
- 燃えて灰からよみがえる話は、この3つの本には出てこない
- 中国の四霊のひとつ麒麟、同じく古代の本にえがかれた幻獣グリフィン、マンティコア、エジプトの太陽神ラーもどうぞ
参考文献
- Herodotus. The Histories, 2.73(英訳:A.D. Godley、1920年). Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0126:book=2:chapter=73 (閲覧日:2026年10月10日)
- Ovid. Metamorphoses, Book 15, 391–407(英訳:Brookes More、1922年). Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.02.0028:book=15:card=391 (閲覧日:2026年10月10日)
- Pliny the Elder. The Natural History, Book 10, Chapter 2(英訳:John Bostock, H.T. Riley、1855年). Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.02.0137:book=10:chapter=2 (閲覧日:2026年10月10日)
- 『アバディーン動物寓意譚』(12世紀)のフェニックス. Wikimedia Commons, File:Phoenix rising from its ashes.jpg(パブリックドメイン). https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Phoenix_rising_from_its_ashes.jpg (閲覧日:2026年10月10日)
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