
プレ男麒麟って、首の長い動物園のキリンのこと? それともビールのラベルの…?

メル美もとは中国の古い本に出てくる、めでたい獣なんだって。孔子が麒麟を見て泣いた話もあるの。
こんにちは、Dr. Taro です。 幻獣の解説、今回は中国の麒麟(きりん)です。『詩経』周南「麟之趾」、『礼記』礼運篇、『春秋公羊伝』哀公14年の原文(ウィキソース)を読みました。中国神話の全体は中国神話の入門へ。

「麒麟の補子(ほし、官服の胸につける位のしるし)」17世紀後半、中国・清。絹と金属糸の刺繍。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
プロフィール
| 名前 | 麟、麒麟 |
| すがた | 『春秋公羊伝』では、見た人が「角のあるノロジカ(麇)」と言った |
| 性質 | 「仁の獣」(『春秋公羊伝』) |
| あらわれるとき | 「王者がいれば来て、王者がいなければ来ない」 |
| なかま | 麟・鳳・亀・竜の「四霊」(『礼記』) |
1. 『詩経』の麒麟
『詩経』周南の「麟之趾(りんのし)」は、麒麟をうたった短い歌です。
- 「麟の趾(あし)。さかんなる公子たち。ああ、麟よ」
- 「麟の額。さかんなる公の一族。ああ、麟よ」
- 「麟の角。さかんなる公の一族。ああ、麟よ」
- 毛詩の序は、この歌を、徳がゆきわたって、「おとろえた世の公子たちでさえ、麟の足のころのように、まことがあつい」ことをうたったもの、と説明しています
2. 四霊のひとつ
『礼記』礼運篇です。
- 「何を四霊というのか。麟・鳳・亀・竜を四霊という」
- つづけて、竜・鳳・麟をやしなうと、魚・鳥・けものがそれぞれどうなるかが書かれています。原文は「龍以爲畜,故魚鮪不淰;鳳以爲畜,故鳥不獝;麟以爲畜,故獸不狘」です

メル美竜と魚、鳳と鳥、麟とけもの…。四霊とほかの生きものが、セットで書かれているんだね。
3. 西に狩りして麟を獲たり
歴史書『春秋』は、魯の国の哀公14年の春の、こんな一文で終わっています。「西に狩りして、麟を獲たり」。『春秋公羊伝』は、この一文をこう説明します。
- 「なぜ書いたのか。ふしぎなことだからだ。何がふしぎなのか。中国の獣ではないからだ」
- 「だれが狩ったのか。薪をとる人だ。身分の低い人なのに、なぜ『狩り』と書いたのか。大きなことだからだ。なぜ大きいのか。麟をつかまえたからだ」
- 「麟は仁の獣である。王者がいれば来て、王者がいなければ来ない」

プレ男りっぱな王がいないのに、麒麟が来て、しかもつかまっちゃったんだ…。
4. 「わたしの道はきわまった」
- ある人が孔子に知らせました。「角のあるノロジカがいました」
- 孔子は言いました。「だれのために来たのだ! だれのために来たのだ!」。そして、そでをかえして顔をぬぐい、涙が衣をぬらしました
- 『春秋公羊伝』は、つづけてこう書きます。弟子の顔淵が死んだとき、孔子は「ああ、天はわたしをほろぼした」と言い、子路が死んだときも「ああ、天はわたしをたちきった」と言った。そして、西の狩りで麟がつかまったとき、孔子は「わたしの道はきわまった」と言った
- 「『春秋』は、なぜ哀公14年で終わるのか。そなわったからだ」と、『春秋公羊伝』は結んでいます

『春秋公羊伝』では、麒麟は「仁の獣」で、王者がいれば来て、王者がいなければ来ない、とされています。
まとめ
- 麒麟は、中国の古い本に出てくるめでたい獣
- 『詩経』では、麟の足・額・角がうたわれた
- 『礼記』では、麟・鳳・亀・竜が「四霊」
- 『春秋公羊伝』では、「仁の獣」で、王者がいるときにだけあらわれる
- 魯で麒麟がつかまったとき、孔子は「だれのために来たのだ」と泣き、「わたしの道はきわまった」と言った
- 同じ四霊の鳥鳳凰、ヨーロッパの角のある幻獣ユニコーン、不死の鳥フェニックス、中国神話の入門もどうぞ
参考文献
- 『詩經』周南「麟之趾」(毛詩序をふくむ). ウィキソース. https://zh.wikisource.org/wiki/詩經/麟之趾 (閲覧日:2026年10月10日)
- 『禮記』禮運. ウィキソース. https://zh.wikisource.org/wiki/禮記/禮運 (閲覧日:2026年10月10日)
- 『春秋公羊傳』哀公十四年. ウィキソース. https://zh.wikisource.org/wiki/春秋公羊傳/哀公 (閲覧日:2026年10月10日)
- メトロポリタン美術館. Rank Badge with Qilin, China, Qing dynasty, late 17th century(36.65.6、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/69079 (閲覧日:2026年10月10日)
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