
プレ男古代エジプトって、死んだあとの世界をすごく大事にしていたイメージだけど…。「生きているうちに楽しめ」っていう歌もあったの?

メル美そうなんだって。竪琴弾きがうたった歌で、ちょっとしんみりするけど、今を大切にしようって思える歌なの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はエジプトの「アンテフ王の竪琴弾きの歌」です。エピファニウス・ウィルソン編『エジプト文学』(プロジェクト・グーテンベルク)におさめられた、C.W.グッドウィン英訳の「エジプト人のおごそかな宴の挽歌」と、その解説・訳注を読みました。古代エジプトの教えの文学はプタハヘテプとアニの教えへ。
プロフィール
| 歌の名 | 「アンテフ王の家の歌」。グッドウィンは「エジプト人のおごそかな宴の挽歌」とよぶ |
| 書かれた場所 | 歌の最初の行に「竪琴弾きの前に書かれている」とある |
| 伝わりかた(グッドウィンの解説) | ハリス・パピルス第500番(「運命の王子」と同じパピルス)。パピルスそのものは、トトメス3世のころのもの |
| 作者(グッドウィンの解説) | 最初の行は、第11王朝のファラオ、アンテフ王の作としている |
| 出てくる賢者 | イムホテプとハルタテフ |
| 似た歌(訳注) | ネフェルヘテプの墓の「竪琴弾きの歌」がよくにている |
1. 竪琴弾きの前の歌
- グッドウィン訳によると、これは「なくなったアンテフ王の家の歌。竪琴弾きの前に書かれている」ものです
- 「よい王子に、ようこそ。からだは去りゆくさだめにあるが、……祖先の時代からずっと、のこるものもある」
- 「むかしの神々は墓にねむり、聖なる人々のミイラも、同じように墓につつまれている。家をたてる人も、家をもたない人も、見よ、どうなるかを」
2. 「あちらから帰ってくる者はいない」
- 「わたしは、イムホテプとハルタテフのことばを聞いた。……けっきょく、栄えとは何なのか。彼らの城壁はくずれ、その家は、はじめからなかったかのようだ」
- 「あちらから来て、彼らのことばを伝え、彼らのようすを語り、わたしたちの心をはげましてくれる者はいない。あなたがたは、帰ってこられない場所へ行くのだ」
- 訳注によると、イムホテプは、さまざまな技や学問の伝説上の作者とされ、ハルタテフは、メンカウラー王の子で、『死者の書』の一部を見つけたとされる人物です

メル美「帰ってきて話してくれる人はいない」…。昔の人も、死んだあとのことがわからなくて、不安だったんだね。
3. 「生きているうちに」
- だから歌は、こうすすめます。「心を強くもちなさい。……生きているうちに、心のねがいをかなえなさい」
- 「頭に香油をつけ、貴金属でかざった上等の亜麻布をまといなさい。神のめぐみで、よいものをふやしなさい。……地上にいるうちに、心のおもむくままに」
- 「その日は、あなたにもやってくる。ねむっている者には、なげく人々の声が聞こえない日が。なげきの声は、墓の中の人をすくわない」
- 「おだやかに宴をしなさい。自分の持ちものを、あちらへもっていける者はいないのだから。見よ、あちらへ行った者で、帰ってきた者はいない」
4. ヘロドトスが見た宴の人形
- グッドウィンは、この歌はヘロドトスがふれている歌だ、と書いています。訳注は、ヘロドトス『歴史』第2巻(エウテルペ)の記録を引いています
- それによると、エジプトの裕福な人々の宴では、人々が食事をおえて立ちあがろうとするころ、死者の姿をかたどった人形を入れた小さなひつぎが、もちまわされました
- ひつぎをもつ人は、客にひとりずつ見せながら言いました。「この姿をごらんなさい。死んだら、あなたもこうなるのです。だから、飲んで楽しみなさい」

プレ男いつかは終わるからこそ、今日を大事に…ってことか。ちょっとしんみりするけど、いい考えかただね。

グッドウィン訳の「竪琴弾きの歌」では、あの世から帰って話を聞かせてくれる者はいないのだから、生きているうちに心のねがいをかなえなさい、と歌われています。
まとめ
- 「アンテフ王の家の歌」は、竪琴弾きの前に書かれていたとされる、古代エジプトの歌
- むかしの神々も賢者も墓にねむり、その城壁もくずれた。あちらから帰って話を聞かせてくれる者はいない
- だから、生きているうちに香油をつけ、上等の亜麻布をまとい、心のねがいをかなえなさい、と歌う
- 訳注が引くヘロドトスの記録では、宴で死者の人形を入れた小さなひつぎをもちまわり、「だから楽しみなさい」と言った
- 教えの文学のプタハヘテプとアニの教え、同じ本のナイル讃歌、冥界へくだる女神イシュタルもどうぞ
参考文献
- C. W. Goodwin(英訳). “The Solemn Festal Dirge of the Egyptians”(解説と訳注をふくむ). In: Epiphanius Wilson(編). Egyptian Literature. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/28282 (閲覧日:2026年10月12日)
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