
プレ男王さまの位を、兄弟でうばいあうんじゃなくて、ゆずりあったの?

メル美そうなの。ゆずりあいすぎて、ささげものを運ぶ海人がこまってしまったんだって。ことわざのもとになったお話なの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回は日本の『古事記』のウヂの若郎子と位のゆずりあいです。『古事記』中つ巻の応神天皇の段(武田祐吉訳、青空文庫)を読みました。のちに天下をおさめたオホサザキの命(仁徳天皇)の話は仁徳天皇と民のかまどへ。同じ応神天皇の段の話はアメノヒボコへ。
プロフィール
| 応神天皇 | ホムダワケの命。26人の御子がいた |
| オホヤマモリの命 | 年上の皇子。「海や山のことを管理せよ」と言われた |
| オホサザキの命 | のちの仁徳天皇。「天下の政治をとって天皇に申しあげよ」と言われた |
| ウヂの若郎子 | 年下の皇子。父は、この子に位をさずけようと考えていた |
| ことわざ | 「海人だから、自分の物ゆえに泣くのだ」 |
1. 父の問い
- 応神天皇は、オホヤマモリの命とオホサザキの命にたずねました。「あなたたちは、上の子と下の子と、どちらがかわいいか」
- 天皇がこうたずねたのは、年下のウヂの若郎子に天下をさずけたいと思っていたからでした
- オホヤマモリの命は「上の子のほうがかわいく思われます」と答えました
- オホサザキの命は、父の心を知って答えました。「大きい子は、もう一人前ですから心配はいりません。小さい子はまだ若いので、かわいく思われます」
- 天皇は「オホサザキよ、あなたの言うことは、わたしの思うとおりだ」と言い、オホヤマモリの命には海と山のこと、オホサザキの命には天下の政治、ウヂの若郎子には位、と役目をわけました。オホサザキの命は、父の命令にそむきませんでした

メル美お父さんの気持ちを、ちゃんと読みとったんだね。オホサザキの命、やさしい人だな。
2. 宇治川のできごと
- 天皇がなくなると、オホサザキの命は、父の言いつけどおり、天下をウヂの若郎子にゆずりました
- ところが、オホヤマモリの命は、父の命令にそむいて天下を手に入れようとし、ひそかに兵をそなえました。オホサザキの命はそれを知り、使いをやってウヂの若郎子に知らせました
- ウヂの若郎子は、山の上に幕をはって、めしつかいを王のように椅子にすわらせ、自分はそまつな布の服を着て、宇治川の渡し舟の船頭の姿になって、棹をもって立ちました
- オホヤマモリの命は、船頭が弟だと気づかずに舟に乗り、「この山には、おこった大イノシシがいるそうだ。わしにとれるだろうか」とたずねました。船頭は「とれますまい」と答えました。川の中ほどで舟がかたむき、オホヤマモリの命は水に落ちて、たすかりませんでした
3. ゆずりあう兄弟
- そののち、オホサザキの命とウヂの若郎子は、たがいに天下をゆずりあいました
- そのとき、海人がささげものをもってきました。兄は受けとらずに「弟の王にさしあげよ」と言い、弟もまた「兄の王にさしあげよ」と言いました
- こうしたゆずりあいが、1度や2度ではなく、多くの日がすぎたので、海人は行ったり来たりにつかれて、泣いてしまいました
- それで、ことわざに「海人だから、自分の物ゆえに泣くのだ」というのだ、と『古事記』は語ります
- やがて、ウヂの若郎子がはやくなくなったので、オホサザキの命が天下をおさめました

プレ男兄弟はおたがいを思ってゆずっているのに、そのあいだで海人さんがへとへとに…。ちょっと笑っちゃうけど、気の毒だね。

武田祐吉訳の『古事記』では、兄と弟がささげものをたがいにゆずりあったので、海人は行き来につかれて泣き、「海人だから自分の物ゆえに泣く」ということわざができた、と語られています。
まとめ
- 応神天皇の「上の子と下の子、どちらがかわいいか」という問いに、オホサザキの命は父の心を見ぬいて答えた
- 父の死後、天下をうばおうとしたオホヤマモリの命は、船頭にふんしたウヂの若郎子のはかりごとで、宇治川に落ちた
- オホサザキの命とウヂの若郎子は、天下をたがいにゆずりあった
- ささげものを運ぶ海人は行き来につかれて泣き、「海人だから自分の物ゆえに泣く」ということわざが生まれた
- のちのオホサザキの命の仁徳天皇と民のかまど、同じ応神天皇の段のアメノヒボコ、雄略天皇の段の引田部の赤猪子もどうぞ
参考文献
- 武田祐吉訳『古事記』(中つ巻 応神天皇「オホヤマモリの命とオホサザキの命」「オホヤマモリの命とウヂの若郎子」). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/001518/card51732.html (閲覧日:2026年10月12日)
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