
プレ男アザミを一撃でなぎたおす怪力!? …それって、強いの?

メル美小人の国では、すごく強いんだって(笑)。小人の王さまが人間の国で大さわぎする、楽しいお話なの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はケルト神話(アイルランド)の小人の王イウブダンです。T.W.ロールストン『フィンの偉業 ― 古代アイルランドの詩人の物語』(1910年、プロジェクト・グーテンベルク)の第4章「イウブダン王とフェルグス王」を読みました。同じ本の話はラブラ王の秘密へ。北欧の小人たちはドワーフとエルフへ。
プロフィール
| イウブダン | 小人(英訳では Leprecauns、Wee Folk)の国フェイリンの王。黒い髪 |
| ベボ | イウブダンの妃 |
| グロワル | フェイリンの怪力の戦士。戦斧でアザミを一撃でなぎたおす |
| エイシルト | イウブダンの宮廷のいちばんの詩人。金色の髪 |
| フェルグス | レダの子。人間の国アルスターの王 |
| アエダ | フェルグスの小人で詩人。アルスターでいちばん小さい人 |
1. 小人の王のじまん
- アルスターの王がフェルグスだったころ、小人の国フェイリンの王イウブダンは、大きな宴をひらきました。イチイの木の大桶からぶどう酒がそそがれ、ウサギのもも肉や野ネズミのあばら肉がくばられました
- イウブダンは、「わたしより栄光あるふるまいの王を見たことがあるか。わたしの巨人グロワルより強い者は?」とたずね、みな「ありません」と答えました
- すると、詩人エイシルトが笑いだしました。「エリンには、ひとりでフェイリンの4つの軍勢をあいてにできる者がいる国があります」
- おこった王はエイシルトをしばらせましたが、エイシルトは「3日ください。アルスターのフェルグス王の宮廷へ行き、本当だというしるしをもってきます」とたのみました
2. ビールの杯で泳ぐ詩人
- アルスターの都エヴァニアの門の前に、銀の鈴のついた白い青銅の杖をもった、とても小さな人があらわれました。芝生の草が、ひざまでとどくほどの小ささでした
- フェルグスの小人の詩人アエダの手のひらに立っても、まだあまるほどでした。エイシルトは「大きな人たちよ、重い息を近づけないで。いちばん小さい人がはこんで」と言い、アエダの手にのって宴の広間へ入りました
- エイシルトが「食べものも飲みものもいらない」と言うと、えらそうなやつだと、ビールの杯に入れられてしまいました。杯の上で泳ぎながら、エイシルトは、王からはじめて、そこにいる人たちのかくしごとを言いあてはじめ、人々は大笑いしながら、絹のナプキンでかわかしてやりました
- エイシルトは、王イウブダンをたたえる詩をうたい、人々は、背の高い人の高さほどの宝をおくりました。エイシルトはその3分の2を詩人や学者に、3分の1を馬番や道化にわけてあげました

メル美ビールの杯で泳ぐ詩人! 小さいけど、ちっともおじけづかないのがかっこいい。
3. かゆの大鍋
- エイシルトは、アエダをつれてフェイリンへ帰りました。海の上を走ってきた王の馬は、アエダには「赤いたてがみのウサギ」に見えました。フェイリンの人々はアエダを見て「巨人をつれてきた!」とさわぎました
- エイシルトは王に、「アルスターへ行き、今夜フェルグス王のためにつくられる王のかゆを味見してきなさい」と、ちかいをかけました
- イウブダンと妃ベボは、真夜中にエヴァニアの宮殿にしのびこみました。かゆの鍋のふちは高く、王は馬の上からふちにのぼりましたが、銀のひしゃくに手がとどかず、かゆの中へおちて、こしまでうまってしまいました
- 王は「ベボ、夜があけないうちに、馬でにげなさい」と言いましたが、ベボは「あなたがどうなるか見とどけるまで、はなれません」と言いました。朝、2人は宮殿の人々に見つかりました
4. 木を燃やすな
- イウブダンは「ここをはなれないと約束する。約束をやぶったことは一度もない」とちかい、フェルグスは王をしばらずに、りっぱな部屋をあたえました
- 火の番の若者が、スイカズラの木を火にくべると、イウブダンは、木のつかいかたを歌で教えました。「しだれた枝の白い花のリンゴの木を燃やすな。だれもがその頭に手をのばす」
- 「気高い柳を燃やすな。詩のかざり。ミツバチがその花のみつを飲む」「ほっそりしたハシバミも燃やすな」「ヒイラギは、青くてもかれていても燃やしてよい」「イチイは、ぶどう酒やビールの茶色の大桶にせよ」

プレ男つかまっているのに、木のことを教えてあげるなんて、小人の王さまはものしりだね。
5. 水の中を歩けるくつ
- 小人たちは、王をとりかえしに7つの軍勢でやってきました。「毎年、この平原を、たがやさずに麦でいっぱいにしよう」と申しでましたが、フェルグスはことわり、小人たちは、子牛に乳をのませてしまったり、麦の穂を切ったりと、いたずらをつづけました
- イウブダンは「わたしに話させてください」とたのみ、小人たちに「したいたずらをすべてもとにもどして、帰りなさい」と言いました。小人たちは悲しみながらも、王の言うとおりにしました
- イウブダンは、自分の宝をならべ、その中から、フェルグスは「それをはけば、陸の上と同じように、海の上でも下でも歩けるくつ」をえらびました
- フェルグスは、身代金としてくつをうけとり、たくさんのおくりものをもたせて、イウブダンとベボを国へ帰しました

ロールストンの『フィンの偉業』では、イウブダンは、火の番の若者に「しだれた枝の白い花のリンゴの木を燃やすな」と、木のつかいかたを歌で教えています。
まとめ
- 小人の国フェイリンの王イウブダンは、詩人エイシルトに「人間の国には、もっと強い者がいる」と笑われた
- エイシルトはアルスターをたずね、ビールの杯で泳ぎながら、人々のかくしごとを言いあてた
- アルスターをたずねたイウブダンは、かゆの大鍋におちてつかまったが、約束をまもってすごし、木のつかいかたを教えた
- イウブダンは、水の中を歩けるくつを身代金にして、妃ベボと国へ帰った
- 同じ本のラブラ王の秘密、北欧のドワーフとエルフ、ケルト神話の入門もどうぞ
参考文献
- T. W. Rolleston. The High Deeds of Finn, and Other Bardic Romances of Ancient Ireland(1910年). Chapter IV “King Iubdan and King Fergus”. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/14749 (閲覧日:2026年10月12日)
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