
プレ男ネズミ1ぴきに大金をはらおうとする司教!? どういう話なの?

メル美ウェールズの『マビノギオン』のお話なんだって。マナウィダンっていう人が、知恵と根気で国にかけられた魔法をとくの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はケルト神話(ウェールズ)のマナウィダンです。ウェールズの中世の物語集『マビノギオン』の第3の枝「スィールの子マナウィダン」(シャーロット・ゲスト英訳、プロジェクト・グーテンベルク)を読みました。この話は、第1の枝のリアンノンの物語とつながっています。ケルト神話の全体はケルト神話の入門へ。
プロフィール
| マナウィダン | スィールの子。兄ベンディゲイド・ヴラン(祝福されたブラン)をうしなった |
| なかま | プラデリ(ダヴェドの王)、その母リアンノン、プラデリの妻キグヴァ |
| できごと | 雷と霧のあと、ダヴェドの国から人も家畜も家も消えた |
| わざ | 鞍、盾、そして金の留め金のついた靴づくり |
| ネズミ | 麦畑を荒らした無数のネズミのうちの1ぴき |
| 魔法をかけた者 | キルコエドの子スルイド |
1. 消えた国
- ベンディゲイド・ヴランの首をロンドンに葬ったあと、マナウィダンは「今夜、休む場所がないのは、わたしだけだ」となげきました
- プラデリは、自分の国ダヴェドの7つの地方と、母リアンノンをマナウィダンにゆずりたいと申し出ました。ダヴェドで語りあううちに、マナウィダンとリアンノンは心をかよわせ、宴のうちに結ばれました
- ある晩、4人がナルベルスの丘(ゴルセッズ)にすわっていると、雷が鳴り、濃い霧がおりてきました。霧が晴れると、家も、家畜も、煙も、火も、人も、見えなくなっていました。のこったのは、4人だけでした
2. 腕がよすぎる職人
- 2年がすぎると、4人は国の外へ出て、くらしをたてるわざをさがしました
- マナウィダンがつくる鞍は青いエナメルでいろどられ、町のだれも、ほかの鞍職人から買わなくなりました。すると鞍職人たちはおこって、4人を殺そうと相談しました
- プラデリは「たたかおう」と言いましたが、マナウィダンは「たたかえば悪いうわさがたち、牢に入れられる。ほかの町へ行こう」と止めました
- 次の町では盾、その次の町では靴をつくりました。マナウィダンは町いちばんの金細工師に靴の金の留め金をつくらせ、そのやり方をおぼえたので、「金の靴をつくる3人」のひとりとよばれるようになりました。どの町でも、ねたまれては、争わずに町を出ました

メル美やりかえさずに、さっと次の町へ。マナウィダンって、ほんとうに落ちついた人だね。
3. 城の金の鉢
- ダヴェドにもどったある朝、マナウィダンとプラデリが狩りに出ると、やぶからまっ白なイノシシがあらわれ、見たこともない新しい城へにげこみました
- マナウィダンは「この国に魔法をかけた者が、この城を置いたのだ」と止めましたが、プラデリは犬をとりもどしに城へ入りました
- 城の中には、大理石でかこまれた泉と、大理石の台にのった金の鉢がありました。プラデリが鉢をつかむと、手が鉢に、足が台にくっついて、ことばも出なくなりました
- 話を聞いたリアンノンも城へ行き、鉢をつかんで、同じように動けなくなりました。夜になると、また雷と霧がおこり、城は2人とともに消えました
4. 麦畑のネズミ
- のこったマナウィダンとキグヴァは、また靴をつくってくらしたあと、ダヴェドにもどりました。マナウィダンは小麦をもちかえり、3つの畑にまきました。世界一みごとな麦が実りました
- ところが、刈ろうとした朝、1つめの畑は穂がすべて切りとられ、わらだけになっていました。次の朝には2つめの畑も
- 3つめの畑を夜どおし見はっていると、真夜中、数えきれないネズミの大群があらわれ、1ぴきが1本ずつわらにのぼって穂を切り、運んでいきました
- マナウィダンが追いかけても、ブヨや空の鳥のようにつかまりません。ただ1ぴきだけが動きがにぶく、マナウィダンはそれをつかまえて手ぶくろに入れ、口をひもでしばりました
5. ゆずらないマナウィダン
- マナウィダンは「わたしの麦をぬすんだどろぼうとして、さばく」と言い、ナルベルスの丘で、ネズミをさばく台をくみはじめました。7年のあいだ、4人のほかに人を見たことはありませんでした
- そこへ、ぼろを着た学者が来て「1ポンドあげるから、はなしてやりなさい」と言いましたが、マナウィダンはことわりました
- 次に馬に乗った司祭が来て「3ポンド」、さらに司教が来て「7ポンド」「24ポンド」、ついには「ここにいる馬すべてと、7つの荷」と言いましたが、マナウィダンはことわりつづけました
- 司教が「では、のぞむ値で」と言うと、マナウィダンはもとめました。「リアンノンとプラデリを自由に」「ダヴェドの7つの地方から魔法と幻をとりのぞくこと」。さらに、「このネズミはだれなのか」とたずねました
- 司教は答えました。「わたしの妻だ。わたしはキルコエドの子スルイド。ダヴェドに魔法をかけた者だ」

プレ男司教の正体が、魔法をかけた本人だったんだ! だからネズミを、どうしてもとりもどしたかったんだね。
6. 魔法がとける
- スルイドは、むかしヘヴェイズ・ヘンの宮廷で、プラデリの父プウィスが「袋の中のアナグマ」というあそびでこらしめたグワウルの友で、そのかたきうちのために魔法をかけたのだ、と明かしました
- 麦畑は、ネズミに姿を変えたスルイドの家の者たちが荒らしたもので、3日めの夜には、スルイドの妻と宮廷の女性たちも来ていました
- マナウィダンは、さらに「これからダヴェドに魔法をかけないこと」「このことで、プラデリにもリアンノンにも自分にも、しかえしをしないこと」も約束させました。スルイドは「それをもとめたのは賢い」と言いました
- プラデリとリアンノンがあらわれると、マナウィダンはネズミをはなしました。スルイドが魔法の杖でふれると、ネズミは若い女性の姿にもどりました。あたりを見ると、国じゅうの畑はたがやされ、家畜と家がもどっていました

ゲスト訳の『マビノギオン』では、マナウィダンは、司教がどんな値をつけてもネズミを手ばなさず、リアンノンとプラデリを自由にすることと、ダヴェドの魔法をとくことを約束させました。
まとめ
- 雷と霧のあと、ダヴェドの国から人も家畜も消えた
- マナウィダンは、鞍・盾・金の留め金の靴で評判になるが、ねたまれても争わずに町を出た
- プラデリとリアンノンは、ふしぎな城の金の鉢にくっついて、城とともに消えた
- 麦畑を荒らしたネズミの1ぴきをつかまえたマナウィダンは、どんな値にも応じず、魔法をとかせ、しかえしもしないと約束させた
- 第1の枝のリアンノン、同じ『マビノギオン』のスリッズとスレヴェリス、ケルト神話の入門もどうぞ
参考文献
- Lady Charlotte Guest(英訳). The Mabinogion. “Manawyddan the Son of Llyr”. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/5160 (閲覧日:2026年10月12日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。



