
プレ男2人が松の木になった!? どうして?

メル美夜どおし話しこんで、朝になって人に見られるのがはずかしくなっちゃったんだって。常陸の国の言いつたえなの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回は日本の『常陸国風土記』の童子女の松原と白鳥の里です。『常陸国風土記』の原文(ウィキソース「古風土記/常陸國風土記」)の香島郡と那賀郡の条を読みました。同じ風土記の話は福慈と筑波の神と夜刀の神へ。人の名や地名には、原文にない読みがなはつけていません。
プロフィール
| 話 | あらすじ |
|---|---|
| 童子女の松原 | うたがきで出会った那賀の寒田の郎子と海上の安是の嬢子が、松の木になった |
| 2本の松の名 | 郎子は「奈美松」、嬢子は「古津松」 |
| 白鳥の里 | 天から来た白い鳥が乙女になり、池の堤をきずこうとした |
| 角折の浜 | 大蛇が海へ出ようとして浜をほり、角が折れた、という地名のいわれ |
| 大櫛の岡 | 大むかしの巨人が食べた貝が、つもって丘になった |
1. うたがきの出会い
- 『常陸国風土記』は、香島郡の南に「童子女の松原」がある、と書いています
- むかし、若い男女がいました。男は那賀の寒田の郎子、女は海上の安是の嬢子といい、2人とも姿が美しく、そのかがやきは里じゅうに知られていました
- 2人はたがいのうわさを聞いて、会いたいと思いつづけていました。月日がたち、嬥歌(うたがき)の会——土地のことばで「うたがき」とも「かがい」ともいう集まり——で、2人はめぐりあいました
- 郎子が歌をよみ、嬢子が歌をかえしました
2. 松のかげで
- 2人は語りあいたいと思いましたが、人に知られるのをおそれて、あそびの場をはなれ、松のかげにかくれました
- 手をとり、ひざをよせあって、胸の思いを語りあいました。これまでの恋しさはとけ、新しいよろこびの笑みがこぼれました
- 風土記は、その夜の景色を美しく書いています。「玉のような露がこずえにおり、秋の風がふく。月が明るくてらし、鶴が西の州で鳴き、松風がさわさわと歌い、雁が東の山をわたる」
- 「山はしずかで、岩の泉はむかしのまま。近くの山には、黄葉のちる林の色、遠い海からは、青い波が石の浜にうちよせる音だけが聞こえる」
- 「今夜の楽しさにまさる楽しさはない」と、2人は語らいのあまさにひたり、夜があけそうなのも忘れてしまいました

メル美月と、鶴と、松風と、波の音…。景色の書きかたが、とってもきれいだね。
3. 松になった2人
- とつぜん、鶏が鳴き、犬がほえ、空はあけて、日がのぼりました
- 2人は、どうしていいかわからず、人に見られるのをはじて、松の木になってしまいました
- 郎子の松は「奈美松」、嬢子の松は「古津松」とよばれ、むかしからついた名は、いまもかわらない、と風土記は結んでいます

プレ男いまでも松原に2本の松がならんでいる…って思うと、ちょっとせつないね。
4. 白鳥の里
- 香島郡の北には「白鳥の里」があります。風土記は、古老の話として、こう伝えています
- 伊久米の天皇の時代に、白い鳥が天からとんできて、乙女(僮女)の姿になりました。乙女たちは、夕方にのぼり、朝におりてきて、石で池をつくり、その堤をきずこうとしました
- けれども、むなしく月日がたち、きずいてはくずれ、きずいてはくずれて、できあがりませんでした
- 乙女たちは歌をうたいながら天へのぼっていき、二度とおりてきませんでした。それで、そこを「白鳥の郷」とよぶのだ、といいます
5. 角折の浜と大櫛の岡
- 白鳥の里の南の平原は「角折の浜」とよばれます。むかし、大蛇が東の海へ出ようとして、浜をほって穴をつくったとき、角が折れたからだといいます。別の話では、倭武の天皇がここにとまったとき、水がなかったので、シカの角で地面をほったら、角が折れたからだ、ともいいます
- 那賀郡には「大櫛の岡」があります。大むかし、からだのとても大きな人がいて、丘の上にいながら、海辺の大きな貝をとって食べました。食べた貝が積みかさなって、丘になったのだ、と伝えられています。その足あとは、長さ30歩あまり、はば20歩あまりあった、と書かれています

『常陸国風土記』では、夜どおし語りあった郎子と嬢子は、朝になって人に見られるのをはじて松の木になり、「奈美松」「古津松」とよばれた、と伝えています。
まとめ
- 『常陸国風土記』香島郡の「童子女の松原」では、うたがきで出会った若い2人が、松のかげで夜どおし語りあった
- 朝になり、人に見られるのをはじた2人は松の木になり、「奈美松」「古津松」とよばれた
- 「白鳥の里」では、天から来た白い鳥が乙女になり、堤をきずこうとしたが、できずに天へ帰った
- 「角折の浜」は大蛇やシカの角、「大櫛の岡」は巨人が食べた貝の山から名がついた、と伝えられる
- 同じ風土記の福慈と筑波の神と夜刀の神、天から来た乙女の話羽衣の娘もどうぞ
参考文献
- 『常陸國風土記』(香島郡の童子女松原・白鳥里・角折濱の条、那賀郡の大櫛岡の条). ウィキソース(古風土記/常陸國風土記). https://zh.wikisource.org/wiki/古風土記/常陸國風土記 (閲覧日:2026年10月12日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
