
プレ男ハヌマーンって、サルの姿の勇者だよね?

メル美『ラーマーヤナ』で大活躍する勇者なんだって。海をひとっとびするの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまと英雄の解説、今回はインド神話のハヌマーンです。R.T.H.グリフィス訳『ラーマーヤナ』(1870〜1874年、プロジェクト・グーテンベルク)の英訳を読みました。インド神話の全体はインド神話の入門へ。

「ラーマとラクシュマナの前のハヌマーン」(マンコートの『ラーマーヤナ』画帖の1枚)1710〜1725年ごろ、インド・パンジャーブ丘陵のマンコート王国。紙に墨と不透明水彩。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
プロフィール
| すがた | ヴァーナラ(サルの一族)の勇者 |
| 父母 | 父は風の神、母はアンジャナー(天女がのろいでヴァーナラの姿になった) |
| 名前のいわれ | 赤ん坊のとき、インドラの雷であご(ハヌ)をくだかれたから(グリフィスの注:ハヌマーンは「大きなあごをもつ者」の意味) |
| 力 | 風の神の力。体を大きくも小さくもでき、ひととびで遠くへ飛ぶ |
| 恵み | ブラフマーは「戦いで刃物に殺されない」、インドラは「雷で傷つけない」とちかった |
| 仕えた人 | サルの王スグリーヴァ、そしてラーマ王子 |
1. 太陽にとびかかった赤ん坊
『ラーマーヤナ』第4巻66歌で、年老いたクマの賢者ジャーンバヴァーンが、ハヌマーンの生まれを語ります。
- ハヌマーンの母アンジャナーは、もとは天女でしたが、神々にのろわれて、地上でヴァーナラの姿になって暮らしていました。そこへ風の神があらわれ、生まれたのがハヌマーンです
- ある朝、赤ん坊のハヌマーンは、森の上にのぼる太陽を見て、木の実だと思ってとびあがりました。「地面から300ヨージャナもの高さへ、ふしぎなひとっとび」。太陽の神が怒って熱い光をあびせても、こわがりませんでした
- そこへインドラの手から、怒りの炎につつまれた赤い雷がとんできて、赤ん坊は岩に落ち、ほおがくだけました。それから「ハヌマーン」とよばれるようになったといいます
- グリフィスの注によると、「ハヌ」は「あご」の意味で、ハヌマーンは「大きなあごをもつ者」という意味です

プレ男太陽をおやつだと思ってとびつく赤ちゃん…! スケールがちがう。
2. 風がとまった世界
- 倒れたわが子を見た風の神は、悲しみと怒りで、香りのよいそよ風をひとつも吹かせなくなりました。「すべての世界の息が止まり」、神々はおそれて風の神をなだめます
- 怒りがしずまると、ブラフマーは「戦いで、だれも刃物で風の神の子を殺せない」という恵みをあたえ、インドラも千の目でハヌマーンを見つめて、「天から投げる雷が、この子を傷つけることは決してない」とちかいました
- ジャーンバヴァーンは言います。「風の神の力を受けつぐのは、あなただけだ。立ちあがれ、大海をとびこえよ」。するとハヌマーンは、仲間の目の前で、巨大な姿にふくれあがりました
3. 大海の跳躍
- 第5巻1歌「ハヌマーンの跳躍」。ハヌマーンは山の上に立ち、創造の神と太陽、風、インドラに祈ると、仲間たちに言いました。「ラーマの弓からはなたれた矢のように、ラーヴァナの都へ飛んでいこう。そこにいなければ、空をさがそう」
- ハヌマーンは、牛の群れの強い雄牛のように身がまえ、力をこめて、海の向こうの島ランカーへとびました
4. ラーマの指輪
- ランカーの都で、ハヌマーンは、アショーカの森にとらわれたシーターを見つけます
- 第5巻36歌。ハヌマーンは言いました。「このたいせつな指輪を受けとってください。夫である王さまからの、たしかなしるしです。いつもはめていた金の指輪。ほら、ラーマの名がきざまれています」
- 指輪を受けとったシーターは、よろこびの涙を流し、「夫の手にふれたような気がした」といいます。シーターは、ハヌマーンを「おそれを知らない、かしこく、勇ましく、誠実な使い」とよびました

メル美名前のきざまれた指輪で、「本当に夫の使いだ」ってわかったんだね。
5. 尾の火で、ランカーを焼く
- ハヌマーンはつかまり、羅刹(ラークシャサ)の王ラーヴァナの前につれていかれます。使者を殺すのはよくない、という意見を聞いたラーヴァナは、「サルにとっていちばん大事なのは尾だろう。尾に火をつけて帰らせよ」と命じました(第5巻53歌)
- 羅刹たちは、ハヌマーンの尾に綿の布をまいて油をしみこませ、火をつけて、町じゅうを引きまわします
- それを聞いたシーターは、火に向かって祈りました。「わたしが夫にしたがい、身をつつしんできたのなら、どうかこのヴァーナラを傷つけないで」。すると炎は高くのぼって答え、ハヌマーンは熱さを感じなくなりました
- ハヌマーンは体を小さくして縄をぬけ、もとの大きさにもどると、燃える尾のまま、宮殿の屋根から屋根へととびうつり、町に火を広げました(第5巻54歌)。ただ、ラーヴァナの弟で、ハヌマーンを殺すことに反対したヴィビーシャナの家だけは焼けませんでした

グリフィス訳『ラーマーヤナ』で、シーターはハヌマーンを「おそれを知らない、かしこく、勇ましく、誠実な使い」とよんでいます。
まとめ
- ハヌマーンは、風の神の子のヴァーナラの勇者
- 赤ん坊のとき太陽を果物と思ってとびつき、インドラの雷であご(ハヌ)をくだかれて、その名がついた
- 体を山のように大きくして大海をとびこえ、ランカーでシーターにラーマの指輪をとどけた
- 尾に火をつけられると、シーターの祈りで熱さを感じなくなり、燃える尾でランカーの町を焼いた
- インド神話の全体はインド神話の入門へ。ハヌマーンがつかえた王子ラーマ、ヴィシュヌ、火の神アグニの記事もどうぞ
参考文献
- Griffith, Ralph T.H.(英訳). The Rámáyan of Válmíki, translated into English verse(1870–1874年). Book IV, Canto LXVI(注783を含む); Book V, Cantos I, XXXVI, LIII, LIV. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/24869 (閲覧日:2026年10月10日)
- メトロポリタン美術館. Hanuman before Rama and Lakshmana: Folio from the dispersed “Mankot” Ramayana series, ca. 1710–25(1976.16、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/37986 (閲覧日:2026年10月10日)
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