
プレ男海の神と山の女神の夫婦? 住むところでもめそう…。

メル美まさにそれが、スノッリの『エッダ』に出てくるんだって。歌でおたがいの気持ちを言いあうの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまの解説、今回は北欧神話のニョルズとスカジです。スノッリの『エッダ』(R.B.アンダーソン訳『新エッダ』、1879年、プロジェクト・グーテンベルク)の英訳を読みました。北欧神話の全体は北欧神話の入門へ。

W.G.コリングウッド「ニョルズの海へのあこがれ」(オリーヴ・ブレイ訳『詩のエッダ』1908年のさし絵)。ウィキメディア・コモンズ(パブリックドメイン。作者は1932年没)
プロフィール
| ニョルズ | スカジ | |
|---|---|---|
| すまい | 天にある海辺の館ノーアトゥーン | 山のスリュムヘイム(父スィアチの家) |
| 生まれ | ヴァン神族。人質としてアース神族へ | 巨人スィアチの娘 |
| 力・すがた | 風の流れをおさめ、海と火のあらぶりをしずめる。船乗りと漁師が祈る | スキーで山をかけ、弓でけものを狩る「スキーの女神」 |
| 子 | フレイとフレイヤ | ― |
1. 海と風の神ニョルズ
スノッリ『エッダ』の「ギュルヴィたぶらかし」23章です。
- 「3番目のアース神はニョルズという。天にあるノーアトゥーンに住む。風の流れをおさめ、海と火のあらぶりをしずめる。船乗りや漁師たちが祈る神である」
- 「とても豊かで、祈る人には、広い土地とゆたかさをあたえることができる」
- ニョルズはヴァン神族のもとで育ちましたが、ヴァン神族は和平のしるしとして、ニョルズをアース神族への人質にさしだし、かわりにアース神族のヘーニルを受けとりました。こうしてニョルズは、神々とヴァン神族のあいだに平和をもたらしました
2. 足でえらんだ結婚
- 巨人スィアチがイズンをさらってたおされたあと、娘スカジは、兜とよろいをつけて、父のかたきをうちにアースガルズへやってきました(くわしくはイズンとリンゴ)
- 神々はつぐないとして、スカジにアース神族の中から夫をえらばせましたが、見てよいのは足だけでした。スカジはいちばん美しい足を見て、「この人にする。バルドルには、きずがほとんどないはずだから」と言いましたが、それはニョルズの足でした

プレ男足だけで夫をえらぶなんて、ちょっとこわい婚活だ…。
3. 山で9夜、海で3夜
- スカジは、父の住んでいた山のスリュムヘイムに住みたいと思い、ニョルズは海の近くがいいと思いました
- そこで2人は、スリュムヘイムで9夜、ノーアトゥーンで3夜すごすことに決めました
- ところが、山からノーアトゥーンに帰ってきたニョルズは、こううたいます
- 「山にはあきた。いたのは長くない、たった9夜。オオカミの遠ぼえは、白鳥の歌にくらべて、いやな音に聞こえた」
- スカジも、こううたいました
- 「海辺の寝床では、ねむれなかった。海鳥がさけぶから。海からやってくるカモメが、毎朝わたしを起こす」

メル美どっちが悪いわけでもなく、育った場所がちがうと、心地よい音もちがうんだね。
4. スキーの女神
- そこでスカジは山へもどり、スリュムヘイムに住みました。スカジは、よくスキーをはいて弓をもち、けものを狩ります。それで「スキーの女神」とよばれる、とスノッリは書いています
- スノッリは、『詩のエッダ』の「グリームニルの歌」11節を引いています。「スリュムヘイムというところ。もっとも強い巨人スィアチが住んでいた。いまは神々のきよい花嫁スカジが、父の古い家に住んでいる」
5. フレイとフレイヤの父
- 「ギュルヴィたぶらかし」24章は、ニョルズはノーアトゥーンで、のちに2人の子をもうけたと書いています。息子フレイと娘フレイヤで、どちらも美しく、力のある神でした

スノッリ『エッダ』では、ニョルズは山のオオカミの遠ぼえを、スカジは海辺のカモメの声を、それぞれいやだったとうたっています。
まとめ
- ニョルズは、海辺の館ノーアトゥーンに住む、風と海の神。ヴァン神族から人質としてきて、神々に平和をもたらした
- スカジは、巨人スィアチの娘で、足だけを見てニョルズを夫にえらんだ
- 2人は山で9夜、海で3夜ずつ住もうとしたが、どちらも相手の土地になじめなかった
- スカジは山へもどり、スキーと弓で狩りをする女神になった
- ニョルズの子フレイとフレイヤ、スカジの父が登場するイズンとリンゴもどうぞ
参考文献
- Rasmus B. Anderson(英訳). The Younger Edda(1879年). Gylfaginning 23–24; Bragaroedur(How Njord got Skade to wife). Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/18947 (閲覧日:2026年10月10日)
- W.G. Collingwood. Njörd’s desire of the Sea(Olive Bray, The Elder or Poetic Edda, 1908年のさし絵). Wikimedia Commons(パブリックドメイン). https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Njörd's_desire_of_the_Sea.jpg (閲覧日:2026年10月10日)
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