
プレ男フリッグって、オーディンの奥さんだよね。どんな女神さま?

メル美運命を知っているのに、だれにも言わない女神なんだって。夫と賭けをする話もあるの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまの解説、今回は北欧神話のフリッグです。『詩のエッダ』(H.A.ベローズ訳、1923年)と、スノッリの『エッダ』(R.B.アンダーソン訳『新エッダ』、1879年)の英訳(どちらもプロジェクト・グーテンベルク)を読みました。北欧神話の全体は北欧神話の入門へ。

カール・エミール・デプラー「フリッグと侍女たち」1880年ごろ(ヴィルヘルム・ヴェグナー『北欧・ゲルマンの神々と英雄』1882年のさし絵)。ウィキメディア・コモンズ(パブリックドメイン。作者は1905年没)
プロフィール
| 立場 | 主神オーディンの妻。女神(アーシュニャ)たちのいちばん目 |
| 住まい | フェンサリル(ベローズの注では「海の館」の意味) |
| 力 | 人の運命を知っているが、自分からは語らない |
| 侍女 | フッラ(髪をなびかせ、金の帯を頭にまく。フリッグの箱をもち、くつの世話をし、秘密を知る) |
| 子 | 光の神バルドル |
1. 運命を知る女神
スノッリ『エッダ』の「ギュルヴィたぶらかし」20章です。
- 「オーディンは、アース神族でいちばん高く、いちばん古い神。……フリッグはその妻で、人の運命を知っているが、自分からはそれを語らない」
- スノッリは、その証拠として、『詩のエッダ』の「ロキの口論」でオーディンがロキに言った言葉を引いています。「ロキよ、おまえは正気をうしなっている。フリッグは、すべての運命を知っている。自分では語らないけれども」

メル美知っていても言わない…。何を知っていたんだろう。
2. 女神たちのかしら
同じ「ギュルヴィたぶらかし」36章「女神たち」です。
- 「女神のいちばん目はフリッグで、フェンサリルというりっぱな館をもっている」
- そのあとに、サガ、医術にすぐれたエイル、ゲフィウン、そしてフッラがつづきます。「フッラも乙女で、髪をなびかせ、頭に金の帯をまいている。フリッグの箱をもち、くつの世話をし、フリッグの秘密を知っている」
- 6番目はフレイヤで、「フリッグとならぶ」女神とされています(くわしくはフレイヤ)
3. 巨人のもとへ行く夫を送りだす
『詩のエッダ』の「ヴァフスルーズニルの歌」1〜4節です。
- オーディンは言います。「フリッグよ、相談にのってくれ。わたしは出かけたい。巨人ヴァフスルーズニルをたずねて、知恵くらべをしてみたいのだ」
- フリッグは答えます。「万物の父よ、神々の住むこの家にいてほしい。巨人たちの中で、ヴァフスルーズニルと知恵がならぶ者を、わたしは知らない」
- それでもオーディンが行きたいと言うと、フリッグは送りだしました。「無事に行って、無事に帰ってきて。道中、ぶじでありますように。人びとの父よ、巨人と言葉をかわすときは、心をとぎすませていて」
4. 育て子をめぐる夫婦の賭け
『詩のエッダ』の「グリームニルの歌」の前書き(散文)です。
- 王の2人の息子、アグナルとゲイルロズは、嵐で流されて、まずしい夫婦のもとで冬をすごしました。妻はアグナルを、夫はゲイルロズを育てます。春、ゲイルロズは先に陸にとびおりると、兄の乗った船をおしだしてしまい、ひとり国に帰って王になりました
- オーディンとフリッグは、高い座から世界を見わたしていました。オーディンは言います。「おまえの育て子アグナルは、洞窟で女巨人と子をもうけている。わたしの育て子ゲイルロズは、王として国を治めているぞ」
- フリッグは言いかえします。「ゲイルロズはけちで、客が多すぎると思えば、客を苦しめるような王です」。オーディンは「とんでもないうそだ」と言い、2人は賭けをしました
- フリッグは侍女フッラをゲイルロズのもとへ送り、「この国に来た魔法使いに気をつけなさい。どんな犬もとびかからない男が、それです」と知らせさせます
- やがて、青いマントの旅人「グリームニル」がやってきました。犬はとびかかりません。ゲイルロズは旅人をとらえ、2つの火のあいだに8晩すわらせて苦しめました。じつはこの旅人こそ、オーディンだったのです
- ゲイルロズの息子アグナルだけが、旅人に角の杯の飲みものをわたしました。旅人は、神々の世界のことを語りはじめ、最後に自分の正体を明かします

プレ男夫婦げんかの賭けで、オーディンが火あぶりに!? フリッグ、なかなかの策士だ…。
5. フェンサリルの涙
- 『詩のエッダ』の「巫女の予言」34節は、わが子バルドルの死のあと、こううたいます。「だがフェンサリルで、フリッグはさめざめと泣いた。ヴァルハラのなげきのために。もっと知りたいか?」
- スノッリ『エッダ』では、フリッグがバルドルを守るため、すべてのものに「バルドルを傷つけない」と約束させたこと、ヤドリギだけが若すぎて約束させなかったことが語られます(くわしくはバルドル)

スノッリ『エッダ』では、フリッグは人の運命を知っているが、自分からはそれを語らない女神とされています。
まとめ
- フリッグは、オーディンの妻で、女神たちのかしら
- 人の運命を知っているが、自分からは語らない
- 館フェンサリルに住み、侍女フッラが箱と秘密をあずかる
- オーディンとの育て子の賭けで、フッラを送り、旅人に化けたオーディンをつかまえさせた
- わが子バルドルの死に、フェンサリルで泣いた
- オーディンと巨人の知恵くらべヴァフスルーズニルの歌、オーディン、バルドル、フレイヤ、北欧神話の入門もどうぞ
参考文献
- Henry Adams Bellows(英訳). The Poetic Edda(1923年). Voluspo 34 と注; Vafthruthnismol 1–4; Grimnismol(序文と前書きの散文、1–3節). Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/73533 (閲覧日:2026年10月10日)
- Rasmus B. Anderson(英訳). The Younger Edda(1879年). Gylfaginning 20, 36. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/18947 (閲覧日:2026年10月10日)
- Carl Emil Doepler. Frigg und ihre Dienerinnen(Wilhelm Wägner, Nordisch-germanische Götter und Helden, 1882年のさし絵). Wikimedia Commons, File:Frigg by Doepler.jpg(パブリックドメイン). https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Frigg_by_Doepler.jpg (閲覧日:2026年10月10日)
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