
プレ男大地から乳をしぼる!? どういうこと?

メル美インドの『ヴィシュヌ・プラーナ』では、大地が牛のすがたになって、その乳が穀物や野菜になったんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はインド神話のプリトゥ王と大地の牛です。『ヴィシュヌ・プラーナ』第1部第13章(M.N.ダット英訳、1896年、プロジェクト・グーテンベルク)を読みました。同じ『ヴィシュヌ・プラーナ』のドゥルヴァやヴァーマナもどうぞ。インド神話の全体はインド神話の入門へ。
プロフィール
| プリトゥ | ヴェーナの子。最初の王(目次の説明) |
| しるし | 右手にヴィシュヌの円盤のしるし |
| 生まれたとき | 天から、ハラの弓ピナーカと、天の矢とよろいが落ちてきた |
| 大地 | 牛のすがたになってにげた |
| 子牛にしたもの | マヌ(スヴァーヤンブヴァ・マヌ) |
| 大地の名 | プリトゥの娘という意味の「プリティヴィー」 |
1. 愛された王
- プリトゥが生まれると、天から弓ピナーカと、天の矢とよろいが落ちてきました。生きものたちはみなよろこび、海や川は聖なる水と真珠や宝石をもってやってきて、王の即位をいわいました
- ブラフマーは、プリトゥの右手にヴィシュヌの円盤のしるしがあるのを見て、ヴィシュヌの一部がやどっていると知り、たいそうよろこびました。「地上の王となる者は、みな手にヴィシュヌの円盤のしるしをもつ」と書かれています
- プリトゥは人々を大切にしたので、「王」とよばれるようになりました。プリトゥが海をわたると水はかたまり、山は道をあけ、大地はたがやさなくても実りをあたえた、とされます
2. 前もってうたわれた王のほまれ
- プリトゥが生まれたいけにえの祭りで、詩人のスータとマーガダも生まれました。聖仙たちは、ふたりに王のほまれをうたうようにたのみました
- ふたりは言いました。「この王はきょう生まれたばかり。その行いも、そのほまれも、まだ知りません。何をうたえばよいのでしょう」。聖仙たちは「これから王がなしとげる行いと、身につける徳をうたいなさい」と答えました
- これを聞いた王は、「詩人たちがうたう徳は、心をこめて身につけよう。さけるべきだとうたう欠点は、いつもさけよう」と決めました
- ふたりは、「まことをまもり、気前がよく、約束をまもり、かしこく、やさしく、がまん強く……裁きでは、友にも敵にもかたよらない」とうたい、王はそれを心にきざんで、そのとおりに生きました

メル美「こうなるだろう」ってほめられた徳を、ほんとうに身につけていったんだ。すてきな王さまだね。
3. にげる大地の牛
- ある日、飢えにくるしむ人々が、王のもとにやってきました。「王のいなかった時代に、草木の実りはすべてとどこおってしまいました。たくさんの人が、食べものがなくて死にかけています。どうか、わたしたちに草木をください」
- これを聞いた王は怒り、弓ピナーカと天の矢をとって、大地にせまりました。すると大地は、牛のすがたになって、すぐにげだしました
- 大地は、ブラフマーの世界まで、あらゆる世界をにげまわりましたが、どこへ行っても、武器をかまえたプリトゥがいました
- ふるえながら、大地は言いました。「もしあなたが人々のためにわたしをうちとったら、だれが人々をささえるのですか」
4. 大地の乳
- とうとう大地は、王に頭をさげて言いました。「わたしがのみこんでしまった草木を、乳にしてお返ししましょう。人々のために、乳を出せるように、わたしに子牛をあてがってください。それから、土地をたいらにしてください。そうすれば、どこでも同じように、すべての草木のもとになる乳を出せます」
- プリトゥは弓で、何百何千もの山々をどけました。それで、いまも山々は、あちこちにちらばっているのだ、と書かれています
- それまで、大地の表面はでこぼこで、村や町のさかいもなく、畑も牧場も、商人の道もありませんでした。それらはみな、プリトゥの時代にはじまった、とされます
- プリトゥは、マヌを子牛にして、自分の手で大地の乳をしぼりました。すると、あらゆる穀物と野菜がうまれ、人々は、いまもそれで生きています
- 大地に命をあたえたので、プリトゥは大地の父となり、大地は「プリティヴィー(プリトゥの娘)」という名でよばれるようになった、と書かれています
- そのあと、神々や聖仙、魔族、山々、ガンダルヴァ、木々なども、それぞれの器で、必要なだけ大地の乳をしぼりました

プレ男山をどけて畑や道をつくって、大地の乳から穀物と野菜…。世界の農業のはじまりのお話なんだね。

『ヴィシュヌ・プラーナ』では、プリトゥはマヌを子牛にして自分の手で大地の乳をしぼり、あらゆる穀物と野菜がうまれた、と書かれています。大地が「プリティヴィー」とよばれるのは、このためだといいます。
まとめ
- プリトゥは、右手にヴィシュヌの円盤のしるしをもつ王
- 詩人たちが前もってうたった徳を、そのとおりに身につけた
- 人々が飢えると、弓をとって、牛のすがたでにげる大地を追った
- 大地は、のみこんだ草木を乳にして返すと申しでて、プリトゥは山々をどけて土地をたいらにした
- マヌを子牛にして大地の乳をしぼり、穀物と野菜がうまれた。大地は「プリティヴィー」とよばれるようになった
- 同じ『ヴィシュヌ・プラーナ』のドゥルヴァとヴァーマナ、手に円盤をもつ神ヴィシュヌもどうぞ
参考文献
- Manmatha Nath Dutt(英訳). A Prose English Translation of Vishnupuranam(Calcutta, 1896). Contents; Part I, Section XIII. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/66208 (閲覧日:2026年10月12日)
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