
プレ男「雄弁な農夫」? 神様も怪物も出てこないの?

メル美ふつうの農夫が、ことばの力だけで正義をとりもどす話なんだって。古代エジプトで人気があったみたい。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はエジプトの「雄弁な農夫」です。W.M.フリンダーズ・ペトリ編『エジプトの物語(パピルスからの翻訳)第1集』(1895年、プロジェクト・グーテンベルク)の「農夫と職人(The Peasant and the Workman)」と解説を読みました。同じ本の難破した水夫もどうぞ。エジプト神話の全体はエジプト神話の入門へ。
プロフィール
| 農夫(セクティ) | 「塩の国(セケト・ヘマト)」の農夫。妻と子ども、ロバと犬がいる |
| 運んでいたもの | イグサ、ナトロン、塩、木、石、種など |
| ずるい男(ヘムティ) | 大家令メルイテンサにつかえる者の子 |
| うったえた相手 | 大家令メルイテンサ |
| 王 | ネブカンラ王 |
| うったえた回数 | 9回 |
1. 道にしかれた布
- 塩の国の農夫は、ロバに荷をつんで、南の町へ商いに出かけました
- とちゅう、ある土手の道で、ひとりの男が農夫のロバに目をつけ、「よい神さまが、あの農夫の荷をぬすませてくれたらなあ」と思いました
- その道は、腰布の幅ほどしかないせまい道で、片がわは水、片がわは男の麦畑でした。男は家から布をもってこさせ、道いっぱいにしきました。布のはしは水に、ふさは麦畑にかかっています
- 「気をつけろ。わたしの服をふむつもりか」。農夫が畑のがわをよけて通ろうとすると、「わたしの麦の上を行くのか」。そのとき、ロバが麦のひと房を口に入れてしまいました
- 男は「麦を食べたから、ロバをもらう」と言いはり、農夫をむちで打って、ロバと荷をうばってしまいました

メル美わざと道をふさいで、通れないようにしてから言いがかりをつけるなんて…。ひどい!
2. 王の命令
- 農夫は、その土地の主である大家令メルイテンサのもとへうったえに行きました。農夫のうったえは、とても美しい言葉でした。「あなたは、みなしごの父、やもめの夫、見すてられた女の兄、母のない子の衣。……うそをほろぼし、正義をはげます方」
- メルイテンサは王のもとへ行き、「ことばのすばらしい農夫を見つけました」と言いました
- 王は命じました。「その者のうったえを、長くつづけさせよ。どの言葉にも返事をするな。話させたいなら、だまっていよ。言葉は書きとめて、わたしたちにとどけよ。けれども、その者の妻と子どもをやしない、本人にも食べものをあたえよ。ただし、おまえがあたえていると知られないように」
- 農夫には毎日パン4つとビール2杯が、友人をとおしてとどけられ、妻には毎日3人分の穀物がとどけられました

プレ男返事をしないのは、もっと言葉を聞きたいから!? でも、家族の食べものはこっそり送ってたんだね。
3. 9回のうったえ
- 農夫は2回、3回とうったえました。3回目には、メルイテンサの部下に杖で打たれてしまいます。それでも農夫は6回目もやってきて、こう言いました
- 「ゆたかさが飢えをとりのぞくように、衣がはだかをおおうように、あらしのあとの晴れた空がこごえる人をあたためるように、火が生のものを煮るように、水がかわきをいやすように、わたしの身の上を見てください」
- そして、とうとう9回目。農夫は、また打たれるのではとおそれましたが、メルイテンサは言いました。「おそれるな。おまえの言葉は、王の心をよろこばせた。おまえは、とこしえにおぼえられるだろう」
4. 正義がもどる
- うったえはすべて、新しいパピルスの巻物に書きとめられ、王にとどけられました。王は、国じゅうのなによりもそれをよろこび、「おまえ自身で裁け」とメルイテンサに命じました
- メルイテンサは、農夫の家族(6人)と、牛やヤギ、麦、ロバや犬のことをしらべさせました。そして、ずるい男の財産と役目をすべて農夫にあたえました。農夫は王に愛され、家族とともに王のよいものを食べた、と書かれています
- ペトリの解説によると、この物語は3つの写本(ベルリンのパピルスなど)にのこっていて、写本の多さから、むかしから人気のある物語だったと考えられる、といいます

ペトリの英訳では、王は「返事をせずに、うったえを長くつづけさせよ。けれども、妻と子どもをやしない、本人にも食べものをあたえよ」と命じました。
まとめ
- 塩の国の農夫は、ずるい男に道をふさがれ、ロバと荷をうばわれた
- 大家令メルイテンサにうったえると、その美しい言葉を聞いた王は、返事をせずに話をつづけさせ、家族をこっそりやしなわせた
- 農夫は9回うったえ、最後にずるい男の財産をすべてあたえられた
- 写本がいくつものこる、むかしから人気の物語だった(ペトリの解説)
- 同じペトリの本の難破した水夫と魔術師デディと3人の王の誕生、エジプトの神トトもどうぞ
参考文献
- W. M. Flinders Petrie(編). Egyptian Tales, Translated from the Papyri, First Series(1895). “The Peasant and the Workman” と Remarks. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/7386 (閲覧日:2026年10月10日)
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