
プレ男物語のとちゅうで、パピルスがとぎれてるの!? 結末がわからないってこと?

メル美そうなの。いちばんどきどきするところで終わってるんだって。だからこそ、いろいろ想像したくなるお話なの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回は古代エジプトの物語『運命の王子』です。エジプト学者W.M.F.ペトリ編『エジプトの物語』第2集(1895年、プロジェクト・グーテンベルク)の英訳と、ペトリの解説(Remarks)を読みました。運命を告げる女神についてはハトホルの記事でもふれています。ペトリの本にのる、ほかの物語は魔術師デディと難破した水夫へ。
プロフィール
| パピルス | 大英博物館のハリス・パピルス500番 |
| ペトリの英訳 | マスペロの訳をもとに、グリフィスが原文を見なおしたもの |
| 時代 | ペトリの本では「第18王朝の終わり」の物語としてならべられている |
| 運命を告げた者 | ハトホルの女神たち |
| 3つの運命 | ワニ、ヘビ、犬 |
| 結末 | ワニが「わたしはおまえの運命だ」と言ったところで、パピルスがとぎれている |
1. 砂漠の家
- むかし、子どもが生まれない王がいて、神々に子をねがいました。神々はそれをみとめ、王妃は男の子を生みました
- そこへハトホルの女神たちが来て、子の運命を告げました。「この子の死は、ワニか、ヘビか、犬によるだろう」
- 王はたいそう心をいため、砂漠に家をたてて、人と王家のよいものをそろえ、子が外へ出ないようにしました
- 大きくなった王子は、屋根の上から、道を行く男のあとをついていく犬を見て、「あれと同じものがほしい」と言いました。王は「悲しませないように、小さな犬をあたえよ」と言い、王子は犬をもらいました
2. 「思うように生かせてほしい」
- すっかり大きくなった王子は、父に言いました。「なぜ、ここにとじこめておくのですか。3つの悪い運命がさだめられているなら、思うように生かせてください。神は、その心のままになさるでしょう」
- 王たちはそれをみとめ、武器と、愛犬をつけて、王子を東の国へ送りだしました。王子は犬とともに、砂漠の獲物を食べながら北へ旅しました
3. 70の窓の塔
- 王子は、ナハライナの長のもとにたどりつきました。長にはひとり娘しかなく、娘のために、地面から70キュビットの高さに70の窓がある家がたてられていました
- 長は、国じゅうの長たちの息子をあつめ、「娘の窓までのぼった者に、娘を妻としてあたえよう」と言っていました
- 若者たちは王子をあたたかくむかえました。王子は身分をかくし、「エジプトの役人の子で、母がなくなり、父の新しい妻にきらわれて、にげてきた」と話しました
- ある日、王子は若者たちといっしょにのぼり、娘の窓にたどりつきました

メル美70の窓がある高い塔を、のぼりきっちゃうなんて!
4. 娘のちかい
- 長は「エジプトからにげてきた者に、娘をやれるか。帰らせよ」とおこりました
- けれども娘は、王子の手をとってちかいました。「ラー・ハラクティにかけて、この人をつれさるなら、わたしは食べず、飲まず、そのときに死にます」
- 長が王子を殺させようとしても、娘は「この人と引きはなされたら、日がしずむまで生きていない」とちかいました
- ついに長は、王子と娘をよびよせ、王子をだきしめて「あなたはわたしの息子のようだ」と言い、娘を妻としてあたえ、家と土地と家畜をおくりました
5. 3つの運命
- 王子は妻に「わたしには、ワニ、ヘビ、犬の3つの運命がさだめられている」とうちあけました。妻は「犬を手ばなして」と言いましたが、王子は「小さいときから育てた犬を、手ばなしはしない」とことわりました
- 妻は夫を心配して、ひとりでは外へ出させませんでした
- ある夜、王子がねむっていると、穴からヘビが出てきました。ねむらずにそばにいた妻は、ミルクを用意しておき、ヘビがミルクを飲んで動けなくなったところで、ヘビを退治しました。妻は言いました。「あなたの神は、運命のひとつを、あなたの手にわたしてくれました。ほかの運命も、わたしてくれるでしょう」
- しばらくのち、王子が畑を歩いていると、愛犬が獲物を追って川へ入り、王子も犬を追って川へ入りました。するとワニがあらわれて言いました。「わたしは、おまえの運命だ。おまえを追ってきた……」——パピルスは、ここでとぎれています

プレ男ええっ、ここで終わり!? 王子はどうなったんだろう…。愛犬が王子を助けたのかな。
6. ペトリの解説
- ペトリは、ここでのハトホルの女神たちは、運命を「さだめる」というより、生まれたときに死のようすを見とおす予言者のようで、ギリシャのデルフォイの神託に近い、と書いています
- また、それまでのエジプトの物語(デディや難破した水夫の話)には「運命」という考えが見られず、運命にあらがおうとするこの物語には、新しい考えが入っている、と述べています
- 若者たちの友情、王子の命を2度すくった娘の愛、忠告をきかずに愛犬を大切にする王子など、人の気持ちや性格で物語をひっぱる書き方も、それまでより強くなっている、とペトリは見ています
- ペトリは、ヘビをミルクでさそいだす方法は、いまのエジプトでも知られている、とも書いています

ペトリ編の英訳では、ハトホルの女神たちは王子の死を「ワニか、ヘビか、犬」と告げ、物語はワニが「わたしはおまえの運命だ」と言ったところでとぎれています。
まとめ
- ハトホルの女神たちは、生まれた王子の死は「ワニか、ヘビか、犬」によると告げた
- 王子は「思うように生かせてほしい」と、愛犬をつれて旅に出た
- ナハライナの長の娘の、70キュビットの高さの窓までのぼり、娘のちかいにまもられて妻をえた
- 妻はヘビの運命をふせいだが、ワニがあらわれたところで、パピルスはとぎれている
- 運命を告げた女神ハトホル、ペトリの本の魔術師デディと難破した水夫もどうぞ
参考文献
- W. M. Flinders Petrie(編). Egyptian Tales, Translated from the Papyri, Second Series(1895). “The Doomed Prince” と Remarks. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/7413 (閲覧日:2026年10月12日)
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