
プレ男変装していたのに、傷あとでばれちゃったの?

メル美赤ちゃんのころから育ててくれた乳母だから、気づいたんだって。その傷にも、少年時代の思い出があるの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はギリシャ神話の乳母エウリュクレイアと足の傷あとです。ホメロス『オデュッセイア』第19巻(サミュエル・バトラー英訳、プロジェクト・グーテンベルク)を読みました。オデュッセウスの帰郷の全体はオデュッセウスへ。
プロフィール
| エウリュクレイア | オデュッセウスが生まれた夜に、その子をだきあげ、赤ちゃんのころ育てた乳母 |
| 傷あと | ひざの上の傷。少年のころ、イノシシにつけられた |
| 場所 | パルナッソス山 |
| 祖父 | 母方の祖父アウトリュコス。オデュッセウスの名づけ親 |
| 名前のいみ | 英訳では「怒りの子」(the child of anger) |
1. 足を洗う乳母
- こじきの姿で館にいたオデュッセウスに、妻ペネロペは、足を洗わせようと言いました。オデュッセウスは、「わかい侍女たちには、足にさわらせたくない。わたしと同じくらい苦労をしてきた、年とった、しっかりした女の人がいるなら、洗ってもらおう」と答えました
- ペネロペは、「わたしの夫が生まれた夜に、その子を腕にだきあげ、赤ちゃんのころ育てた、年とった女がいます」と言って、エウリュクレイアをよびました
- エウリュクレイアは、手で顔をおおって泣きながら言いました。「これまで、いろんな旅の人がこの家に来ましたが、背かっこうも、声も、足も、あなたほどオデュッセウスさまに似た人はいません」
- オデュッセウスは、「わたしたちふたりを見た人は、みなそう言います」と答えました
2. 火からそむけた顔
- 乳母がたらいに水と湯を入れていると、オデュッセウスは、火のそばから身をそむけました。足をつかまれたら、ある傷あとに気づかれ、すべてがわかってしまうと思ったからです
- そして、乳母は足を洗いはじめると、すぐにその傷あとに気づきました。それは、オデュッセウスが、パルナッソス山で、祖父アウトリュコスとその息子たちとイノシシ狩りをしたときの傷でした
3. 名づけ親の祖父
- アウトリュコスがイタケへ来たとき、生まれたばかりの孫がいました。エウリュクレイアは、赤ちゃんをアウトリュコスのひざにのせて言いました。「お孫さんの名前をつけてあげてください」
- アウトリュコスは言いました。「わたしは、あちこちの、たくさんの人に腹をたてている。だから、この子をオデュッセウス、つまり『怒りの子』と名づけなさい。大きくなったら、パルナッソス山の、母方の家へ来させなさい。おくりものをしよう」

メル美「怒りの子」って名前だったんだ! つけた理由がおじいちゃんの気分って…。
4. パルナッソス山のイノシシ
- 少年オデュッセウスは、おくりものをもらいにパルナッソス山へ行きました。祖父と息子たちは歓迎し、祖母アンピテアは、孫の頭と目にキスをしました
- 翌朝、アウトリュコスの息子たちは、犬をつれて狩りに出かけ、オデュッセウスもいっしょに行きました。風も雨も日の光もとおさない、深いやぶに、大きなイノシシがひそんでいました
- 犬の声と足音に、イノシシはやぶからとびだし、首の毛をさかだてて、目から火を出すようにしてかまえました。オデュッセウスは、まっさきに槍をかまえましたが、イノシシはすばやく横からつっこみ、ひざの上を深く傷つけました。それでも骨にはとどきませんでした。オデュッセウスは槍でイノシシをしとめました
- 息子たちは傷をしばり、血を止めるまじないの言葉をとなえて、家へつれて帰りました。傷がすっかりなおると、すばらしいおくりものをもたせて、イタケへ送りかえしました
5. 「だまっていておくれ」
- 傷あとにふれたエウリュクレイアは、足をとりおとしました。足はたらいに落ち、たらいはひっくりかえって、水が床にこぼれました
- 乳母の目は、よろこびと悲しみで涙にあふれ、ことばも出ませんでした。そして、オデュッセウスのあごひげにふれて言いました。「あなたは、オデュッセウスさまですね。この手でさわるまで、わかりませんでした」
- 乳母はペネロペのほうを見ましたが、女神アテナがペネロペの注意をそらしていたので、ペネロペは気づきませんでした
- オデュッセウスは、乳母を引きよせて、「20年さまよって、やっと帰ってきたのだ。だれにも言わないでくれ」とたのみました。乳母は「石や鉄のように、口をとじていましょう」とこたえました

プレ男「さわるまでわからなかった」…。赤ちゃんのころからの手の記憶なんだね。

『オデュッセイア』第19巻では、エウリュクレイアは、足を洗っているときに、イノシシ狩りでついたひざの上の傷あとに気づき、主人オデュッセウスだとわかりました。
まとめ
- こじきの姿のオデュッセウスの足を、年老いた乳母エウリュクレイアが洗った
- 乳母は、ひざの上の傷あとにふれて、主人だと気づいた
- その傷は、少年のころ、祖父アウトリュコスのいるパルナッソス山で、イノシシにつけられたもの
- アウトリュコスは、孫を「怒りの子」オデュッセウスと名づけた
- オデュッセウスは、乳母に「だれにも言わないでくれ」とたのんだ
- 同じ傷あとをしるしにした父ラエルテスと果樹園の木、帰郷の物語オデュッセウス、旅のとちゅうのオデュッセウスの冥界くだり、アウトリュコスに才能をあたえたとされる神ヘルメスもどうぞ
参考文献
- Homer. The Odyssey(英訳:Samuel Butler), Book XIX. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/1727 (閲覧日:2026年10月12日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。


