
プレ男亡くなったお母さんが、まじないで助けてくれるの?

メル美そうなの。お母さんの歌に守られて、若者は炎にかこまれた館の乙女に会いに行くんだって。古いエッダの詩とはちがう、ロマンチックなお話なんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回は北欧のスヴィプダグとメングロズです。ヘンリー・アダムズ・ベローズ英訳『古エッダ』(プロジェクト・グーテンベルク)の「スヴィプダグの歌」の英訳と解説を読みました。門番との問答は、知恵くらべのヴァフスルーズニルやアルヴィースにもにています。
プロフィール
| スヴィプダグ | 若い主人公 |
| グロア | スヴィプダグの亡き母。まじないの歌を知る。ベローズによると、スノッリの本では、トールをまじないで助けた賢い女性として出てくる |
| メングロズ | 炎にかこまれた館にすむ乙女 |
| フィヨルスヴィズ | 館の前にいる巨人の門番 |
| 2つの詩 | 「グロアのまじない」と「フィヨルスヴィズの歌」 |
| ベローズの説明 | 17世紀より前にさかのぼらない紙の写本にだけのこる、わりあい新しい詩。のちに北欧の多くのバラッドの題材になった |
1. 母をよびおこす
- スヴィプダグは、母の墓の前でよびかけます。「目をさまして、グロア。目をさまして、やさしいお母さん。死者の門で、あなたをよびます。死の丘で助けをもとめよと、あなたは言いましたね」
- グロアが「ひとり息子に、どんなわざわいがあったのか」とたずねると、スヴィプダグは答えました。「父がめとった、いじわるな女が、だれも行けないところへ行って、乙女メングロズをさがせと言ったのです」
- グロアは言いました。「道は長い。長くさまようことになる。けれども、愛もまた長い。運命がめぐみをくれれば、のぞむものを見つけられるかもしれない」
2. 9つのまじない
スヴィプダグが「ぼくを守るまじないを歌ってください。まだ若いので、道で死ぬのがこわいのです」とたのむと、グロアは9つのまじないを歌いました。
- 「いやなものは、肩からふりはらえ。自分自身がたすけになる」
- 「あてのない道をさまようときは、ウルズのかんぬきが、まわりを守る」
- 「あぶない川があっても、水はおまえの前でひく」「敵が来ても、その心はおまえの手にわたされ、戦士たちは平和をのぞむ」
- 「海の嵐でも、風も波もおまえをきずつけず、舟はおだやかに進む」「高い岩山の寒さも、おまえのからだをつかまない」
- 「巨人とことばでたたかうときは、おまえの心には知恵が、口には賢いことばがあふれる」
- そして母は言いました。「さあ、危険の待つ道を行きなさい。わざわいに、愛をへらされないように。わたしのことばがあるかぎり、おまえにはいちばんの幸運がある」

メル美「わざわいに、愛をへらされないように」…。お母さんの、いちばんのまじないのことばだね。
3. 炎の館の門番
- スヴィプダグは、まわりに炎がもえる巨人たちの館にたどりつきました。門番の巨人フィヨルスヴィズは「ここに家はないぞ。オオカミのように去れ」と、追いかえそうとします
- スヴィプダグは、つぎつぎに問いをかけました。館の名は? 館をつくった神々は? 乙女がよこたわる山の名は?
- 山は「リュフヤベルグ」。門番は答えます。「病む人、くるしむ人のよろこびとなる山。長く病んでいた女性も、のぼればよくなる」
- 乙女のひざもとには、エイルたち乙女がすわり、「ささげものをする者を助け、人の子に危険があれば、わざわいから守る」といいます
4. 待っていた人
- スヴィプダグはたずねました。「メングロズの腕にいだかれることのできる男はいるのか」
- 門番は答えました。「スヴィプダグのほかには、だれもいない。太陽のようにかがやく乙女は、かれの花嫁になるとさだめられている」
- 「門をあけよ! ここにスヴィプダグがいる!」——犬たちはじゃれつき、館の門はひらきました
- メングロズは、本当にスヴィプダグかどうか、家族と名をたずね、それから言いました。「ずっと、あなたを待っていました。……愛しあう2人には、待ちこがれた出会いこそ、いちばんのよろこび。これからは、命のおわりまで、いっしょに生きていきましょう」

プレ男運命の相手が、ずっと待っていてくれたんだ…。ハッピーエンドでよかった!

ベローズ訳の「スヴィプダグの歌」では、亡き母グロアは「わざわいに、愛をへらされないように」と言って、9つのまじないの歌を息子にさずけています。
まとめ
- まま母に、だれも行けない場所の乙女メングロズをさがせと命じられたスヴィプダグは、亡き母グロアをよびおこした
- グロアは、川や嵐や寒さ、巨人とのことばのたたかいから守る9つのまじないを歌った
- 炎の館の門番フィヨルスヴィズとの問答のすえ、門がひらいた
- メングロズは「愛しあう2人には、待ちこがれた出会いこそ、いちばんのよろこび」とスヴィプダグをむかえた
- 北欧の知恵の歌ハーヴァマール、問答の詩ヴァフスルーズニルとアルヴィースもどうぞ
参考文献
- Henry Adams Bellows(英訳). The Poetic Edda. “Svipdagsmol: The Ballad of Svipdag”(Grougaldr; Fjolsvinnsmol)と訳者の解説. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/73533 (閲覧日:2026年10月12日)
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