
プレ男オシーンって、常若の国へ行った人だよね。どうやって生まれたの?

メル美お母さんは、魔法でシカに変えられた乙女だったんだって。せつないお話なの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はケルト神話(アイルランド)のオシーンの誕生です。T.W.ロールストン『フィンの偉業 ― 古代アイルランドの詩人の物語』の第14章「オシーンの誕生」(プロジェクト・グーテンベルク)を読みました。父フィンのことはフィン・マックールへ。オシーンが常若の国へ行く話は常若の国のオシーンへ。
プロフィール
| サバ | 妖精の国のドルイド「闇の者」の愛をことわり、シカの姿に変えられた乙女 |
| フィン | フィアナ(戦士団)の長。アレンの丘のとりでにすむ |
| 2頭の猟犬 | ブランとスコローン。フィンの母の妹ティレンが、魔法で犬の姿にされていたときに生んだ子で、「人の心をもつ」 |
| オシーン | フィンとサバの子。シカの母と、かくれた谷で育った |
| のちのオシーン | 名高い戦士で、それ以上に歌と物語の詩人として知られた |
1. 子ジカの乙女
- ある日、フィンたちが狩りから帰るとちゅう、美しい子ジカがとびだしました。追ううちに、のこったのは、フィンと2頭の猟犬ブランとスコローンだけになりました
- 子ジカが谷でとまって横になると、2頭の犬は、そのまわりでじゃれて、顔をなめはじめました。フィンは「だれも、このシカをきずつけてはならない」と命じ、子ジカは犬とあそびながら、アレンのとりでまでついてきました
- その夜、フィンが目をさますと、ベッドのそばに、見たこともないほど美しい女性が立っていました
- 「わたしはサバです。今日、あなたたちが追った子ジカです。妖精の国の『闇の者』というドルイドの愛をことわったので、魔法でシカに変えられ、3年をすごしました。アレンのとりでまでたどりつけば、どんな魔法からも守られ、もとの姿にもどれると聞いたのです」
- フィンは答えました。「乙女よ、おそれることはない。わたしたちフィアナは自由で、客人もまた自由だ。ここで、あなたにむりじいする者はいない」
2. まぼろしのフィン
- サバはフィンの妻となり、ふたりはふかく愛しあって、何か月もはなれずにすごしました
- しかし、ダブリンの湾に北の国の軍船が来たという知らせがとどきました。フィンは「アイルランドの人々は、外からの敵を防ぐために、わたしたちにみつぎものとおもてなしをくれている。それをうけながら、約束をはたさないのははじだ」と言って、戦いに出ました
- 7日後、フィンが敵を追いはらってもどると、サバの姿がありません。人々は話しました。「ある日、あなたそっくりの姿が、ブランとスコローンをつれて近づいてきたのです。狩りの角笛も聞こえました。サバは門へかけだし、止められませんでした」
- 「近くまで行くと、サバは立ちどまって、大きな悲しいさけび声をあげました。すると、あなたの姿をした者が、ハシバミの杖でサバをうち、そこにはもう女性はいなくて、1頭のシカがいたのです」。追いかけたときには、もう何も見えず、足音と犬の声も、やがて消えてしまいました

メル美フィンの姿に化けてさそいだすなんて…。サバは、フィンが帰ってくるのを、ずっと待っていたのに。
3. 7年の旅
- フィンは胸を手でうち、ひとことも言わずに自分の部屋にこもりました。その日も、次の日も、だれもフィンを見ませんでした
- それからフィンは、フィアナの仕事をもとのようにおこないましたが、7年のあいだ、アイルランドじゅうの谷や森やほら穴をめぐって、サバをさがしつづけました。つれていく犬は、ブランとスコローンだけでした
4. 木の下の少年
- ついにあきらめたフィンが、スライゴーのベン・グルバンで狩りをしていると、犬たちのほえ声が、けものとあらそうような声に変わりました
- かけつけると、大きな木の下に、長い髪の少年がいて、犬たちがとびかかろうとするのを、ブランとスコローンがふせいでいました。少年は、おそれもせずに戦士たちを見つめていました
- フィアナは少年をつれて帰りました。フィンはだまって、少年の顔をじっと見つめつづけました
- やがてことばを話せるようになった少年は、こう語りました。「父は知らず、母はやさしいメスジカだけでした。がけにかこまれた緑の谷でくらしていました。ときどき、背の高い、黒い顔の男が来て、母にやさしく、またおどすように話しかけましたが、母はいつもおそれてさけていました」
- 「ある日、男はハシバミの杖で母をうちました。母は、ぼくをふりかえって悲しそうに鳴きながら、男についていきました。追おうとしても、からだが動かず、気をうしないました。気がつくと、ベン・グルバンの山にいて、あの谷は二度と見つかりませんでした」

プレ男ブランとスコローンが少年を守ったのは、サバの子だってわかっていたからなのかな…。
5. オシーン
- メスジカの母と闇のドルイドがどうなったかは、だれも知らない、と物語は語ります
- フィンは少年をオシーンと名づけました。オシーンは名高い戦士となり、それ以上に、歌と物語をつくる詩人として名を知られました
- 物語は、フィアナについて語られることには、いまも「フィンの子、詩人オシーンはこう歌った」と言われるのだ、と結ばれています

ロールストンの『フィンの偉業』では、ベン・グルバンで見つかった少年はフィンにオシーンと名づけられ、名高い戦士となり、それ以上に詩人として知られた、と語られています。
まとめ
- フィンが狩りで追った子ジカは、闇のドルイドの魔法でシカに変えられた乙女サバだった
- アレンのとりでで人の姿にもどったサバは、フィンの妻となった
- フィンが戦に出ているあいだ、フィンの姿をしたまぼろしにさそわれ、ふたたびシカに変えられた
- 7年後、フィンはベン・グルバンの木の下で少年を見つけ、オシーンと名づけた
- 父フィン・マックール、常若の国へ行ったオシーン、フィアナの戦士ディアルミドもどうぞ
参考文献
- T. W. Rolleston. The High Deeds of Finn, and Other Bardic Romances of Ancient Ireland(1910年). Chapter XIV “The Birth of Oisín”. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/14749 (閲覧日:2026年10月12日)
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