
プレ男鍾馗さんって、ひげもじゃで剣を持った、こわい顔の人だよね。あれって神さま?

メル美中国の皇帝の夢にあらわれて、病気をなおしたっていう話があるんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回は中国の鍾馗(しょうき)です。北宋の学者沈括(しんかつ)が書いた『夢渓筆談(むけいひつだん)』補筆談の原文(ウィキソース)を読みました。中国神話の全体は中国神話の入門へ。

葛飾北斎「赤い鍾馗」(英題 Red Zhong Kui, the Demon Queller)1846年。絹に墨と色、掛け軸。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
プロフィール
| 名前 | 鍾馗 |
| 自分で名のったこと | 「武挙(武官の試験)に受からなかった者」 |
| やくめ | 「天下の妖(あやしいもの)をのぞく」 |
| すがた(夢の中) | 帽子をかぶり、青い衣を着て、片方のうでを出し、足には革の長ぐつ |
| 出てくる本 | 沈括『夢渓筆談』補筆談(北宋) |
1. 呉道子の鍾馗の絵
- 沈括によると、宮中には、むかしから唐の画家呉道子(ごどうし)がえがいた鍾馗の絵がありました
- その巻物のはじめには、唐の人の書きつけがそえられていて、絵ができたいきさつが書かれていた、といいます。ここからは、その書きつけの内容です
2. 玄宗の熱病
- 唐の玄宗(明皇)は、開元年間、驪山(りざん)で軍事の演習をしたあと宮殿にもどると、体の調子をくずし、熱病(瘧〈おこり〉のような病)にかかって、1か月あまりたちました
- 巫者(みこ)も医者も、わざをつくしたが、なおすことができなかった、と書かれています
3. 夢の中の2匹の鬼
- ある夜、玄宗は夢を見ました。大きな鬼と小さな鬼の2匹です
- 小さな鬼は、赤い服を着て、片足ははだしで、片足にくつをぶらさげ、大きな竹の扇をこしにさしていました。そして、楊貴妃(太真)の紫の香袋と、玄宗の玉の笛をぬすんで、宮殿のまわりをかけまわっていました
- 大きな鬼は、帽子をかぶり、青い衣を着て、片方のうでを出し、両足に革のくつをはいていました。大きな鬼は、小さな鬼をつかまえて、退治してしまいました
- 玄宗が「おまえはだれだ」とたずねると、大きな鬼はこう答えました。「臣は鍾馗と申します。武挙(武官の試験)に受からなかった者です。陛下のために、天下の妖をのぞくとちかいます」

メル美試験に落ちた人が、魔をはらう神さまになったんだ!
4. 目ざめると病がなおった
- 玄宗が目をさますと、熱病はたちまちなおったようで、体はかえって前より強くなっていました
- 玄宗は画家の呉道子をよび、夢の話をして「ためしに、わたしの夢のとおりにえがいてみよ」と命じました
- 呉道子は、まるでその姿を見たかのように、すぐに筆をとってえがきあげました。玄宗は、その絵をしばらく見つめ、机をなでて言いました。「おまえは、わたしと同じ夢を見たのか。どうしてこんなにそっくりなのだ!」
- 玄宗は呉道子に褒美をあたえ、「年の暮れの悪いものばらいのとき、みながこの姿を知っておくのがよい。邪なものや魔物をはらい、あやしい気をしずめるために」と、この絵をひろめるよう命じた、と書かれています

プレ男年末の魔よけとして、絵を配ったんだね。お守りのポスターみたい。
5. 北宋の宮中でも
- 沈括は、自分の時代のことも書いています。北宋の熙寧5年、皇帝は画工にこの絵をうつさせて版木にほり、印刷して大臣たちに1枚ずつあたえました。その年の大みそかには、宮中の役人が、役所に鍾馗の像をくばったといいます
6. 「鍾馗」という名前は、もっと古い
- ただし沈括は、「この書きつけを見ると、開元のころにはじまったように見える」と書いたうえで、こうつづけます
- 南朝の宋の宗愨(そうかく)という将軍の母の墓から出た石の墓誌には、宗愨に「鍾馗という名の妹」がいたと書かれていた。また北魏には李鍾馗、隋には喬鍾馗・楊鍾馗という人がいた
- 「だから、鍾馗という名前は、ずっと前からあったのであって、開元のころにはじまったのではない」——沈括は、言い伝えをそのままうのみにせず、記録と見くらべているのです

沈括は、鍾馗の話は開元のころにはじまったように見えるけれど、鍾馗という名前の人はもっと前からいた、と記録とくらべて書いています。
まとめ
- 鍾馗は、魔をはらう神さまとしてえがかれてきた人物
- 『夢渓筆談』補筆談によると、熱病に苦しむ唐の玄宗の夢にあらわれ、宝物をぬすむ小鬼を退治した
- 鍾馗は「武挙に受からなかった者」と名のり、「天下の妖をのぞく」とちかった
- 目ざめると病がなおり、玄宗は呉道子に姿をえがかせ、年の暮れの魔よけとしてひろめた
- 沈括は、「鍾馗」という名前はもっと前からあったと、記録をくらべて書いている
- 中国のふしぎな獣九尾の狐、饕餮、中国神話の入門もどうぞ
参考文献
- 沈括『夢溪筆談』補筆談(鍾馗の条). ウィキソース. https://zh.wikisource.org/wiki/夢溪筆談/補筆談 (閲覧日:2026年10月10日)
- メトロポリタン美術館. Katsushika Hokusai, Red Zhong Kui, the Demon Queller, 1846(14.76.37、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/45818 (閲覧日:2026年10月10日)
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