
プレ男死の神さまから、夫の命をとりもどした人がいるの!?

メル美インドの王女サーヴィトリーのお話なんだって。力ずくじゃなくて、言葉で死の神の心を動かしたの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はインド神話のサーヴィトリーです。『マハーバーラタ』森の巻(ヴァナ・パルヴァ)の「パティヴラター・マーハートミヤ」の章(K.M.ガングリ英訳)を読みました。森でくらすユディシュティラ王に、聖仙マールカンデーヤが語る話です。インド神話の全体はインド神話の入門へ。

「サーヴィトリー」(カルカッタ・アート・スタジオの刷り)1878〜83年、インド・コルカタ。石版画に手彩色。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
プロフィール
| サーヴィトリー | マドラ国の王アシュヴァパティの娘 |
| 名前の由来 | 父が18年祈った女神サーヴィトリーのめぐみで生まれたので、同じ名に |
| 夫 | サティヤヴァット。目が見えなくなり、国をうばわれて森でくらす王デュマットセーナの息子 |
| 夫の名の意味 | 父も母もまこと(サティヤ)を語るので、サティヤヴァットと名づけられた |
| 相手 | 死の神ヤマ。赤い衣に冠、手には縄 |
1. 「1年以内に死ぬ」
- 王アシュヴァパティは、子がなく、18年のあいだ女神サーヴィトリーに祈りつづけ、ようやく娘をさずかりました。娘はあまりにりっぱで、だれも結婚を申しこめませんでした
- 父は「自分で、ふさわしい夫をさがしておいで」と言い、サーヴィトリーは老臣たちと国じゅうの森をめぐりました
- 帰ってきたサーヴィトリーは、森でくらす盲目の王の息子サティヤヴァットを、心の中で夫にえらんだと言いました
- すると、そばにいた聖仙ナーラダが言いました。「かれには、ひとつだけ欠点がある。どんな努力でもうち消せない欠点だ。今日から1年以内に、サティヤヴァットは命がつきる」

メル美ほかはぜんぶすばらしいのに、1年しか生きられないなんて…。
- 父は「べつの人をえらびなさい」と言いました。でもサーヴィトリーは答えます。「命が短くても長くても、わたしは一度、夫をえらびました。二度はえらびません」
- ナーラダもその心がゆらがないのを見て、結婚をみとめ、ふたりは森の庵で結婚しました
2. その日
- サーヴィトリーは日をかぞえ、夫が死ぬ4日前から、3晩のあいだ断食の誓いをたてて祈りました
- その日、サティヤヴァットが斧をかついで森へ木の実とたきぎをとりに行くと、サーヴィトリーは「今日は、あなたとはなれていられません」と言って、義理の両親のゆるしをえて、いっしょに森へ行きました。顔はほほえんでいても、心はさけるようでした
- 木を切っていたサティヤヴァットは、「頭がいたい。立っていられない。ねむりたい」と言い、サーヴィトリーのひざにまくらをして横になりました
3. 死の神ヤマ
- そのとき、赤い衣を着て冠をかぶり、太陽のようにかがやく、手に縄をもった大きな人が、サティヤヴァットのそばに立って、じっと見つめていました
- サーヴィトリーは夫の頭をそっと地におろし、ふるえる心で「あなたは神さまですね。どなたで、何をなさるおつもりですか」とたずねました
- 「わたしはヤマである。おまえの夫サティヤヴァットは、命の日がつきた。この縄でしばって、つれていく」
- 「ヤマさまの使いが人をつれにくると聞いていました。なぜ、あなたご自身が?」。ヤマは答えました。「この王子は、徳と美しさをそなえた人だ。使いにつれていかせるのはふさわしくない。だから、わたしが来た」
- ヤマは、サティヤヴァットの体から親指ほどの大きさの「人」をとりだして縄でしばり、南へ向かって歩きだしました

プレ男魂が「親指くらいの人」として出てくるんだ…!
4. どこまでもついていく
- サーヴィトリーは、ヤマのあとについていきました。ヤマは「もどって、夫のとむらいをしなさい。ここまでで十分だ」と言います
- サーヴィトリーは答えました。「夫がつれていかれるところへ、わたしもついていきます。それが永遠のならわしです。賢い人は、7歩いっしょに歩けば友になると言います。その友として、お話しさせてください」
- そして、正しい人の道について語りました。ヤマはそのことばによろこび、「夫の命のほかなら、何でも1つ願いをかなえよう」と言いました
- サーヴィトリーは、話をするたびに、願いを1つずつかなえてもらいました
| 願い | |
|---|---|
| 1つ目 | 義理の父(盲目の王)の目が見えるように |
| 2つ目 | 義理の父が国をとりもどすように |
| 3つ目 | 自分の父に100人の息子が生まれるように |
| 4つ目 | 自分とサティヤヴァットのあいだに100人の息子が生まれるように |
5. 最後の願い
- ヤマは言いました。「おまえが、意味ぶかく、やさしく、正しいことばを語れば語るほど、わたしはおまえを敬う。くらべるもののない願いを言いなさい」
- サーヴィトリーは言いました。「あなたがくださった4つ目の願いは、夫がいなければかないません。サティヤヴァットを生きかえらせてください。夫がいなければ、わたしは幸せも、天国さえものぞみません。そうすれば、あなたのことばはまことになります」
- ヤマは「そのとおりにしよう」と言って縄をほどき、「おまえの夫は、病気もなくなり、おまえとともに400年の命をえるだろう」と告げて、帰っていきました

『マハーバーラタ』では、サーヴィトリーはヤマのあとをついていき、ことばでヤマをよろこばせて、最後に夫サティヤヴァットの命をとりもどします。
6. 夜の森から
- もとの場所にもどったサーヴィトリーが、夫の頭をひざにのせると、サティヤヴァットは目をさましました。「ずいぶん長くねむってしまった。なぜ起こしてくれなかったの? わたしをつれていこうとした黒い人はどこへ?」
- 「明日、ぜんぶお話しします。もう夜もふけました。ご両親のもとへ帰りましょう」
- 翌朝、庵には、デュマットセーナの国から使いが来ました。国をうばった敵がたおれ、人びとが「目が見えても見えなくても、この方こそわれらの王」と言っている、というのです。そして使いたちは、王の目が見えるようになっているのを見て、おどろきました
- デュマットセーナは国にもどって王位につき、やがてサーヴィトリーには100人の息子が、その父にも100人の息子が生まれた、と語られています
まとめ
- サーヴィトリーは、「1年以内に死ぬ」と言われたサティヤヴァットを、えらびなおさずに夫にした
- その日、夫の命をつれていく死の神ヤマのあとを、どこまでもついていった
- 正しい人の道を語って、願いを1つずつかなえてもらった(義父の目、義父の国、父の息子、自分たちの息子)
- 最後に「夫がいなければ、4つ目の願いはかなわない」と言って、夫の命をとりもどした
- 同じ森の巻の問答ユディシュティラとヤクシャの問答、恋の物語ナラとダマヤンティー、死の神ヤマ、インドの大洪水の話マヌと魚、インド神話の入門もどうぞ
参考文献
- Kisari Mohan Ganguli(英訳). The Mahabharata of Krishna-Dwaipayana Vyasa, Volume 1. Vana Parva, Pativrata-mahatmya Parva, Sections CCLXLI–CCLXLVII(ガングリ訳での章番号). Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/15474 (閲覧日:2026年10月10日)
- メトロポリタン美術館. Calcutta Art Studio, Savitri, emblematic of ideal womanhood, 1878–83(2021.211、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/849512 (閲覧日:2026年10月10日)
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