
プレ男ヤマって、閻魔(えんま)さまのもとになった神さま?

メル美インドの古い聖典では、死んだ人たちを道案内する王なんだって。少年と問答する話もあるの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまの解説、今回はインド神話のヤマです。R.T.H.グリフィス訳『リグ・ヴェーダ』(第2巻、インターネット・アーカイブ)と、スワミ・パラマーナンダ訳『ウパニシャッド』(1919年、プロジェクト・グーテンベルク)の英訳と注を読みました。インド神話の全体はインド神話の入門へ。

「死の主ヤマ、南方の守護者」9世紀、スリランカ(アヌラーダプラ時代)。青銅。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
プロフィール
| 名前 | ヤマ。「ヴィヴァスヴァットの子」(英訳では Vivasvan’s Son) |
| 立場 | 死者の王。グリフィスの注では「もとは、はじめて死んだ者で、祖先たちの魂に、死者のすむところへの道を示した」 |
| すまい | 「最高の天」。祖先(父祖)たちとともにいる |
| 使い | 4つの目をもち、まだら毛の2匹の犬(サラマーの子) |
| よび名(ウパニシャッド) | 「死」、「ヴァイヴァスヴァタ」 |
1. 祖先たちへの道を見つけた王
『リグ・ヴェーダ』第10巻14番です。グリフィスの注によると、この歌はとむらいの歌で、一部は死者の神ヤマに、一部は火葬される人の魂によびかけています。
- 「そなえもので王をたたえよ。ヴィヴァスヴァットの子ヤマを。人びとを集める者。高い天へ旅し、多くの者のために道をさがし出して示した者を」
- 「ヤマが、はじめてわたしたちのすむ場所を見つけた。この牧場は、わたしたちから決してうばわれない。地上に生まれた人びとは、それぞれの道をふんで、むかしの祖先たちが行ったところへ向かう」
- 「ヤマよ、来て、この草の座にすわれ。アンギラスたちや祖先たちとともに」

メル美「はじめて死んだ人」が、あとから来る人のために道を見つけてくれたんだね。
2. 死者への語りかけ
同じ歌の7節からは、亡くなった人の魂への語りかけです(グリフィスの注)。
- 「行け、行け、むかしの道を。わたしたちの祖先たちが先に行った道を。そこで、聖なる食べものをたのしむ2人の王、ヴァルナの神とヤマを見るだろう」
- 「ヤマに会え、祖先たちに会え、最高の天で、おこないのむくいに会え。罪と悪をすて、あらたなすまいをさがし、光にかがやく、もうひとつの体をまとえ」
- 「ヤマは、この人に、昼と光と水でかざられた、やすらぐ場所をあたえる」
3. 4つの目の犬
- 「サラマーの子の、まだら毛で、4つの目をもつ2匹の犬を走りぬけよ。しあわせな道を行け」
- 「ヤマよ、あなたの2匹の犬は見はり番。4つの目で人びとを見て、道をまもる。王よ、この人を犬たちにまもらせ、ゆたかさと健康をあたえよ」
- 「鼻が広く、あきることのない、ヤマの2人の使いは、人びとのあいだを歩きまわる。どうか、きょうここで、わたしたちがよい命をとりもどし、太陽の光を見られるように」
- グリフィスの注によると、サラマーは、雷の神インドラの猟犬です

プレ男4つの目の犬が、死者の道の番犬! ギリシャのケルベロスみたいだ。
4. 少年ナチケータス
『カタ・ウパニシャッド』第1部です。
- ヴァージャシュラヴァスは、天のむくいをのぞんで、持ちものをすべてささげる祭りをしていました。ところが、さしだされた牛は、もう乳も出ない年老いた牛ばかりでした
- それを見た息子のナチケータスは、父にたずねます。「お父さん、わたしはだれにさしだすのですか」。2度、3度とたずねると、父は怒って「おまえは死神(ヤマ)にやる!」と答えました
- ナチケータスがヤマの家に行くと、ヤマは留守でした。少年は3日のあいだ、食べず飲まずで待ちつづけます
- 帰ってきたヤマは言いました。「とうといお客よ、あいさつをおくる。3晩も食べずにわたしの家にいたのだから、3つの願いをえらびなさい」
5. 3つの願い
- 1つ目の願い:「父が、わたしのことで心をいためず、怒りをしずめ、帰ったわたしをむかえてくれますように」。ヤマは「父は、死の口からはなたれたおまえを見て、怒りをわすれ、夜はやすらかにねむるだろう」と約束しました
- 2つ目の願い:天にいたる火の祭りを教えてほしい。ヤマは教え、よろこんで、この火の祭りを「ナチケータスの火」とよぶことにし、色とりどりの花輪もあたえました
- 3つ目の願い:「人が死んだあと、どうなるのか。あるという人も、ないという人もいる。それを知りたい」
- ヤマは答えをさけようとします。「むかしの神々さえ、これにはまよった。ほかの願いにしなさい。100年生きる子や孫、牛、ゾウ、金、馬、広い土地をもとめなさい。地上の王になりなさい」
- ナチケータスは答えました。「それらは、うつろいゆくもの。いちばん長い命でも、短いのです。富で人は満たされません。あなたに会ってしまったのに、富をもってどうなるでしょう。わたしは、ほかの願いはもとめません」

メル美どんなごほうびより、「死んだらどうなるのか」を知りたかったんだね。
- このあと、ヤマは「よいものと、こころよいものは、べつのもの」と語りはじめ、教えをさずけていきます(パラマーナンダ訳の第2部)

グリフィスの注によると、ヤマはもとは、はじめて死んだ者で、祖先たちの魂に、死者のすむところへの道を示した存在でした。
まとめ
- ヤマは、死者の王。もとははじめて死んだ者で、祖先たちのすむところへの道を見つけた
- 『リグ・ヴェーダ』では、とむらいの歌で、死者に「むかしの道を行け」とよびかけられる
- 道は、4つの目の2匹の犬が見はっている
- 『カタ・ウパニシャッド』では、少年ナチケータスに3つの願いをかなえ、富や長寿よりも「死んだらどうなるのか」を知りたがる少年に、教えをさずけた
- ヤマから夫の命をとりもどした王女サーヴィトリー、アグニ、シヴァ、インド神話の入門もどうぞ
参考文献
- Griffith, Ralph T.H.(英訳). The Hymns of the Rigveda, Vol. II. Book X, Hymn XIV(訳注を含む). Internet Archive. https://archive.org/details/in.gov.ignca.16312 (閲覧日:2026年10月10日)
- Swami Paramananda(英訳). The Upanishads(1919年). Katha-Upanishad, Part First. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/3283 (閲覧日:2026年10月10日)
- メトロポリタン美術館. Yama, Lord of Death: Regent of the South, Sri Lanka, Anuradhapura period, 9th century(2005.468.1、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/72302 (閲覧日:2026年10月10日)
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