
プレ男大人になっても話さなかった皇子が、鳥の声で話しだすって、どういうお話?

メル美『古事記』の中巻に出てくるの。悲しい生まれと、出雲の神さまがかかわっているんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回は日本神話のホムチワケです。『古事記』中巻の垂仁天皇の段「サホ彦の叛乱」「ホムチワケの御子」を、武田祐吉の現代語訳(青空文庫)と、原文(ウィキソース)で読みました。日本神話の全体は日本神話の入門へ。

八島岳亭「日の輪をわたる白い鶴」(英題 White Crane Flying across the Sun’s Disc)1835年ごろ。木版画(摺物)。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)。ホムチワケが声を聞いた鳥は、原文では「鵠(くぐい)」、武田祐吉訳では「鶴」と書かれています
プロフィール
| 父 | 垂仁天皇 |
| 母 | 皇后サホ姫 |
| 名前の由来 | 稲の城が焼けるとき、炎の中で生まれたので(母がつけた) |
| ふしぎなこと | ひげが胸までのびても、言葉を話さなかった |
| はじめての声 | 空をわたる鳥の声を聞いて「あぎ」 |
1. 炎の中で生まれた皇子
- 皇后サホ姫の兄サホ彦は、妹に「夫と兄と、どちらが大事か」とたずね、天皇をなきものにしようとたくらみました。けれどもサホ姫は、ねむる天皇を前に、悲しくて手をくだせず、その涙が天皇の顔に落ちました
- 目をさました天皇にすべてを話したサホ姫は、そのあと、兄のこもる稲の城へにげこみました。サホ姫は、天皇の子をみごもっていました
- 城の中で皇子が生まれると、サホ姫は皇子を城の外におき、天皇にあずけました。天皇が「子の名は母がつけるものだ。なんとしよう」とたずねると、サホ姫は答えました。「いま稲の城を焼くとき、炎の中で生まれましたから、ホムチワケの御子とおつけください」
- サホ彦が討たれたとき、サホ姫もともに亡くなりました

メル美夫と兄のあいだで苦しんだお母さんが、さいごに名前をのこしてくれたんだね…。
2. 「あぎ」
- 天皇は、二股の杉でつくった小舟を池にうかべて、皇子とあそびました。けれども皇子は、「長いひげが胸の前にとどくまでも、ものをはっきりおっしゃらなかった」と書かれています
- ある日、空を鳥が鳴きながらわたっていくのを聞いて、皇子ははじめて「あぎ」と声をあげました
- 天皇は、山辺のオホタカという人に、その鳥をとらえるよう命じました。オホタカは、鳥を追って、紀の国から播磨、因幡、丹波、但馬、近江、美濃、尾張、信濃をへて、とうとう越の国の「ワナミの水門」で、わなをはって鳥をとらえました
- けれども、皇子は鳥を見て話そうとしても、思うようには話せませんでした

プレ男1羽の鳥のために、日本じゅうを追いかけたんだ! お父さんの必死さが伝わるね。
3. 出雲の大神
- 天皇が心配してねむっていると、夢に神のおつげがありました。「わたしの宮を、天皇の宮殿のようにつくれば、御子はきっと話すだろう」
- うらなうと、それは出雲の大神の心でした。天皇は、アケタツの王とウナガミの王をつけて、皇子を出雲へおまいりに行かせました
- 出雲で大神をおがんで帰るとき、肥の河に仮の宮がつくられ、川下には青葉で山のかたちのかざりが立てられました。それを見た皇子は言いました。「この川下の青葉の山のようなものは、山かと見れば山ではない。これは出雲の大神をおまつりする神主の祭壇か」
- おともの王たちはよろこび、急いで天皇に知らせました。天皇もよろこんで、ウナガミの王をつかわして、出雲の神の宮をつくらせました

『古事記』では、天皇の夢のおつげで出雲の大神の心とわかり、皇子が出雲をおがんだあと、ついに言葉を話しました。
まとめ
- ホムチワケは、垂仁天皇と皇后サホ姫の子
- 兄と夫のあいだで苦しんだサホ姫が、炎の中で生まれたことから名づけた
- ひげが胸までのびても話さなかったが、空をわたる鳥の声に「あぎ」と声をあげた
- その鳥を追って、オホタカは国から国へ旅をした
- 出雲の大神をおがんだあと、皇子は言葉を話した
- 同じ垂仁天皇の段の、常世の国へ木の実をさがしに行ったタヂマモリ、出雲の神大国主、同じく『古事記』中巻の英雄ヤマトタケル、日本神話の入門もどうぞ
参考文献
- 『古事記』武田祐吉訳. 中卷「垂仁天皇」の「サホ彦の叛亂」「ホムチワケの御子」. 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/001518/card51732.html (閲覧日:2026年10月10日)
- 『古事記』中卷(原文). ウィキソース. https://zh.wikisource.org/wiki/古事記/中卷 (閲覧日:2026年10月10日)
- メトロポリタン美術館. Yashima Gakutei, White Crane Flying across the Sun’s Disc, 1835?(JP1039、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/54324 (閲覧日:2026年10月10日)
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