
プレ男西王母って、きれいな仙女の女王さまの絵をよく見るよね。

メル美いちばん古い本だと、ヒョウのしっぽにトラの歯なんだって。ぜんぜんちがう!
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまの解説、今回は中国神話の西王母(せいおうぼ)です。古い漢文の原文をウィキソースで読みました(書き下しと訳は Claude によるものです)。中国神話の全体は中国神話の入門へ。

狩野養信「西王母」19世紀前半、日本。掛け軸、絹本著色。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
プロフィール
| 住まい | 西の崑崙(こんろん)の丘、玉山など(『山海経』) |
| すがた(古い伝え) | 「人のようで、ヒョウの尾、トラの歯、よくうそぶく。髪はみだれ、勝(かんざし)をつけている」 |
| すがた(のちの絵) | 仙女たちの女王のような、美しい女性 |
| お供 | 3羽の青い鳥(食べものを運ぶ) |
| 持ちもの | 不死の薬(『淮南子』) |
| 自分で言う身分 | 「わたしは天帝の娘」(『穆天子伝』) |
1. ヒョウの尾、トラの歯
地理書『山海経』には、西王母が3つの巻に出てきます。
- 西山経:「玉山、これ西王母の居るところなり。西王母その状(かたち)人のごとく、豹尾虎歯にして善く嘯(うそぶ)き、蓬髪にして勝を戴く」
- 玉の山に住み、すがたは人のようで、ヒョウの尾とトラの歯をもち、よくうそぶく(声を長くひいて鳴く)。髪はみだれ、勝(しょう、玉のかんざし)をつけている
- 郭璞の注は、西王母は「天のわざわいと、5つの刑罰をつかさどる」と説明しています
- 大荒西経:西の海の南、流沙のほとりにある大きな山崑崙の丘の話の中に、「勝をつけ、トラの歯、ヒョウの尾をもち、ほら穴に住む人、名を西王母という」と出てきます。山のまわりは弱水の淵がめぐり、その外には、物を投げこむとすぐ燃える炎の山があるといいます
- 海内北経:「西王母、几(つくえ)によりかかって勝をつけ、その南に3羽の青い鳥がいて、西王母のために食べものを運ぶ。崑崙の丘の北にある」

プレ男弱い水の淵と、燃える山に囲まれた山! たどりつくだけで大冒険だ。
2. 瑤池のほとりで、王と歌をかわす
周の王の西への旅を書いた『穆天子伝(ぼくてんしでん)』巻3です。
- 「吉日甲子、天子、西王母に賓(ひん)す」。周の穆王は、白い玉と黒い玉を手に西王母に会い、にしきや組みひもをおくりました。西王母は2度おじぎをして受けとります
- 翌日、穆王は瑤池(ようち)のほとりで西王母に酒をすすめ、西王母は歌をうたいました
- 「白い雲は天にあり、丘はおのずからあらわれる。道ははるかに遠く、山と川がへだてる。どうか死なないで、また来てくださいますように」
- 穆王はこたえます。「わたしは東の国に帰り、国々をおさめる。人びとがおだやかになったら、またあなたに会いに来よう。3年たったら、またこの野にもどってこよう」
- 西王母はもう1度うたいます。「西の国に行き、その野に住む。トラやヒョウと群れ、カササギとともに住む。よい命(さだめ)はかわらない。わたしは天帝の娘」
- 穆王は、日のしずむ弇山(えんざん)にのぼり、石に「西王母の山」ときざんで、エンジュの木を植えました

メル美「どうか死なないで、また来て」って、すごくやさしい歌。怖いすがたのイメージがかわるね。
3. 羿にあたえた不死の薬
- 思想書『淮南子』覧冥訓には、「羿、不死の薬を西王母に請う。姮娥、窃みて以て月に奔る」とあります
- 弓の名人羿が西王母から不死の薬をもらいましたが、妻の姮娥(嫦娥)がぬすんで飲み、月へのがれてしまった、という話です
- 西王母は、不死の薬をもつ神としても語られていたことがわかります
4. 絵の中の西王母
- のちの時代の絵では、西王母は、仙女たちをしたがえた美しい女王のすがたで描かれるようになります。上の狩野養信の掛け軸も、そのひとつです
- 中国神話の入門では、明時代の扇面「西王母への拝謁」も紹介しています

『穆天子伝』の西王母は、帰っていく穆王に「どうか死なないで、また来てくださいますように」とうたっています。
まとめ
- 西王母は、西の崑崙の丘や玉山に住むとされる女神
- 『山海経』では「ヒョウの尾、トラの歯、よくうそぶく、髪はみだれて勝をつける」すがた。3羽の青い鳥が食べものを運ぶ
- 『穆天子伝』では、瑤池のほとりで周の穆王と歌をかわし、「わたしは天帝の娘」とうたう
- 『淮南子』では、羿に不死の薬をあたえた
- のちの絵では、美しい仙女の女王として描かれる
- 中国神話の全体は中国神話の入門へ。羿と嫦娥、女媧もどうぞ
- 崑崙山の番人陸吾と開明獣、天の川をはさむ星の物語牽牛と織女(七夕)、西王母の使いの黄色いスズメが出てくる捜神記の動物の恩返しもどうぞ
参考文献
- 山海経 西山経. ウィキソース(中国語版). https://zh.wikisource.org/wiki/山海經/西山經 (閲覧日:2026年10月10日)
- 山海経 大荒西経. ウィキソース(中国語版). https://zh.wikisource.org/wiki/山海經/大荒西經 (閲覧日:2026年10月10日)
- 山海経 海内北経(袁珂の校注の引用を含む). ウィキソース(中国語版). https://zh.wikisource.org/wiki/山海經/海內北經 (閲覧日:2026年10月10日)
- 穆天子伝 巻3. ウィキソース(中国語版). https://zh.wikisource.org/wiki/穆天子傳/卷三 (閲覧日:2026年10月10日)
- 淮南子 覧冥訓. ウィキソース(中国語版). https://zh.wikisource.org/wiki/淮南子/覽冥訓 (閲覧日:2026年10月10日)
- メトロポリタン美術館. Kano Osanobu, Queen Mother of the West, second quarter 19th century(36.100.99、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/45736 (閲覧日:2026年10月10日)
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