
プレ男コンスって、どんな神さま?

メル美テーベの神さまで、病気の王女を助けに外国まで旅した話があるんだって。神像がうなずくんだよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 神さまの解説、今回はエジプト神話のコンスです。大英博物館のE.A.ウォリス・バッジ『神々の伝説』(1912年、プロジェクト・グーテンベルク)の第6章「コンス・ネフェルヘテプとベクテンの王女の伝説」の英訳と解説を読みました。エジプト神話の全体はエジプト神話の入門へ。

「コンスのペンダント」紀元前1300〜1080年ごろ、新王国時代(第19〜20王朝)。金。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
プロフィール
| 名前 | コンス(バッジの英訳では Khensu) |
| テーベの2つの姿 | 大きな神「コンス・ネフェルヘテプ」と、悪霊を追いはらう「コンス・パ・アリ・セケル(運命を作る者)」 |
| 力 | 悪霊を追いはらい、病をいやす。神の力「サ」を、もう一方の像にうつすことができる |
| すがた(物語の中) | 国王の夢の中で、金のタカになって飛びさった |
1. ベクテンの碑
バッジの解説です。
- この話は、テーベのコンス神殿で見つかった、上がまるい砂岩の碑にきざまれています。シャンポリオンが見つけ、1846年にパリへ運ばれて、いまはフランス国立図書館にあります
- 碑の話はラメセス2世の時代のこととして書かれていますが、エルマンの研究で、じっさいには何百年もあとに書かれたことがわかりました。バッジは、紀元前650〜250年ごろに、コンスの神官たちが、悪霊を追いはらう神の力を広めるために作ったのだろう、と書いています
2. 悪霊にとりつかれた王女
- ラメセス2世が「ふたつの川の国」をおとずれたとき、ベクテンの国王は、貢ぎものの先頭にいちばん上の娘を送りました。王は娘を妻にむかえ、「ラーの美しさ」という意味の名「ラー・ネフェル」をあたえて、エジプトの王妃にしました
- 治世15年目の夏、ベクテンから使いがやってきて、王妃の妹ベント・レシュが病にかかったので、「学者(魔術師)」を送ってほしい、とたのみます
- 王は、テーベの「生命の家」(魔術の学院)の学者たちから、「かしこい心と、器用な指」をもつトトエムヘブをえらんで送りました
- ところが、ベクテンに着いたトトエムヘブは、王女が悪霊にとりつかれていて、自分では追いだせないことを知ります

プレ男エジプトいちばんの学者でも、どうにもできなかったんだ…。
病気を「悪霊のしわざ」と考えるのは、この物語の中の考え方です。
3. 2度うなずいた神像
- ベクテンの国王は、こんどは「神を送ってほしい」とたのむ使いをよこしました。治世26年目の夏のことです
- ラメセス2世は、コンス・ネフェルヘテプの神殿へ行き、神にたのみます。神官たちは、コンス・ネフェルヘテプの像を、悪霊を追いはらう「コンス・パ・アリ・セケル」の像の前に運びました
- 王が「コンス・パ・アリ・セケルをベクテンへ行かせてください」とたのむと、コンス・ネフェルヘテプの像は「2度うなずき」ました。さらに、「神の力(サ)をうつしてください」とたのむと、また2度うなずきました。神の力は「4倍」うつされた、と書かれています
- バッジは、これは神官があやつる、手足の動く神像が使われた例だろう、と解説しています
4. 17か月の旅と、悪霊の願い
- コンス・パ・アリ・セケルは、舟に乗り、5そうの小舟と、両わきを進む戦車や馬にまもられて、ベクテンへ出発しました
- 17か月の旅のすえ、ベクテンに着いた神が王女のもとへ行くと、王女はたちまちいやされました
- 追いだされた悪霊は、コンス・パ・アリ・セケルを主人とみとめ、「ベクテンの国王が、わたしのために祭りをひらいてくれるなら、もといた場所へ帰ろう」と言います。国王と兵士たちは、神と悪霊の話を聞いて、たいへんおそれました
- 国王は神の教えにしたがって大きな宴をひらき、悪霊は「自分の好きな場所」へ帰っていきました
5. 金のタカになって
- よろこんだベクテンの国王は、神をエジプトへ帰すまいと考えました。神像がベクテンに3年9か月とどまったころ、国王は夢を見ます。神が金のタカの姿で社から出て、空へまいあがり、エジプトへ飛んでいくのです
- 「神の霊がやどらない像は、役に立たない」とさとった国王は、神官たちに像をもたせて、たくさんのおくりものとともにエジプトへ帰しました
- 神官たちは、おくりものをひとつものこさず、コンス・ネフェルヘテプにささげた、と碑は結んでいます

メル美上のペンダントのタカの姿は、夢の中の「金のタカ」みたいだね。

バッジは、ベクテンの碑はラメセス2世の時代よりずっとあとに、コンスの神官たちが神の力を広めるために作ったものだろう、と考えています。
まとめ
- コンスは、テーベでまつられた神。「コンス・ネフェルヘテプ」と、悪霊を追いはらう「コンス・パ・アリ・セケル」の2つの姿があった
- 「ベクテンの碑」では、悪霊にとりつかれたベクテンの王女のために、神像が送られた
- 神像は2度うなずき、17か月の旅のすえ、王女をたちまちいやした
- のちに国王の夢の中で、神は金のタカになってエジプトへ飛びさった
- バッジは、碑は紀元前650〜250年ごろに神官たちが作ったものだろうと考えた
- 同じバッジの本のクヌム、トト、エジプト神話の入門もどうぞ
参考文献
- E.A. Wallis Budge. Legends of the Gods: The Egyptian Texts, edited with Translations(1912年). VI. A Legend of Khensu Nefer-hetep and the Princess of Bekhten(解説). Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/9411 (閲覧日:2026年10月10日)
- メトロポリタン美術館. Khonsu pendant, New Kingdom, Ramesside, ca. 1300–1080 BCE(65.194.1、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/545874 (閲覧日:2026年10月10日)
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