
プレ男ムーサって、歌の女神さまだよね? 何人いるの?

メル美ヘシオドスの『神統記』では9人なんだって。しかも、詩人ヘシオドスに歌をさずけたのが、ムーサたちなの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はギリシャ神話のムーサ(9人の歌の女神)です。ヘシオドス『神統記』のはじまりの1〜115行(H.G.エヴリン=ホワイト英訳、1914年、プロジェクト・グーテンベルク)を読みました。ムーサたちの歌くらべの話はムーサとピエロスの9人の娘へ。ギリシャ神話の全体はギリシャ神話の入門へ。

「ムーサとセイレーンの歌くらべの大理石の石棺」(部分)3世紀第3四半期、ローマ帝国。大理石。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
プロフィール
| ムーサ | ゼウスと、記憶の女神ムネモシュネの9人の娘 |
| 生まれた場所 | ピエリア。雪をいただくオリュンポスの頂から少しはなれたところ |
| すむところ | ヘリコン山、そしてオリュンポス |
| 9人の名前 | クレイオ、エウテルペ、タレイア、メルポメネ、テルプシコラ、エラト、ポリュムニア、ウラニア、カリオペ |
| いちばん上 | カリオペ。尊い王たちにつきそう |
| そばにいる神 | カリスたち(英訳では Graces)と、ヒメロス(あこがれ) |
1. ヘリコン山の女神たち
- 『神統記』は、ムーサたちへの呼びかけからはじまります。「ヘリコンのムーサたちから、歌いはじめよう。彼女たちは、大きく聖なるヘリコン山をすみかとし、深い青色の泉と、ゼウスの祭壇のまわりを、やわらかな足でおどる」
- 泉で体を洗ったあと、ヘリコン山の頂で美しくおどり、それから「夜、深い霧につつまれて出かけ、美しい声で歌う」。歌うのは、ゼウス、ヘラ、アテナ、アポロン、アルテミス、ポセイドン……そして、エオスやヘリオス、セレネ、大地、オケアノス、夜など、とこしえの神々の一族です
2. ヘシオドスへのおくりもの
- 「ある日、ムーサたちは、聖なるヘリコン山のふもとで羊を飼っていたヘシオドスに、すばらしい歌を教えた」
- ムーサたちはまず、こう言いました。「荒野の羊飼いたちよ、はずかしい、みじめな者たち、ただの胃袋よ。わたしたちは、うその多くを、本当のことのように語ることができる。けれど、そうしたいときは、本当のことを語ることもできる」
- そしてムーサたちは、じょうぶな月桂樹の枝を折ってヘシオドスにわたし、神の声をふきこみました。これから起こることと、むかし起きたことを歌えるように。そして、とこしえの神々の一族を歌い、いつも、はじめとおわりには、ムーサたち自身を歌うように、と命じました

メル美「ただの胃袋」って、なかなかきびしい…! でも、そんな羊飼いに歌の力をあたえたんだね。
3. ゼウスとムネモシュネの娘
- ムーサたちは、ピエリアで、記憶の女神ムネモシュネがゼウスとのあいだに生んだ娘たちで、「わざわいをわすれさせ、悲しみを休ませるもの」として生まれました
- 1年がめぐって、ムネモシュネは、心をひとつにする9人の娘を生みました。みな歌に心をよせ、うれいのない心をもっていました
- 彼女たちのそばには、カリスたち(英訳では Graces)と、ヒメロス(あこがれ)がくらしている、とされます
4. 9人の名前
- 「大いなるゼウスの9人の娘、クレイオ、エウテルペ、タレイア、メルポメネ、テルプシコラ、エラト、ポリュムニア、ウラニア、そしてカリオペ。カリオペは、9人の中でいちばん上で、尊い王たちにつきそう」
- 『神統記』のこの部分には、9人それぞれが何をつかさどるかは書かれていません
5. 王の言葉と、悲しみをわすれる歌
- ムーサたちが生まれたときに目をかけた王の舌には、あまいしずくがそそがれ、その口からはやさしい言葉がながれます。その王は、正しい裁きで、大きなあらそいさえもすぐにおさめ、人々をやさしい言葉で説得する、と書かれています
- 「ムーサたちと、遠矢のアポロンによって、地上に歌い手や竪琴ひきがいる」
- 「たとえ心に新しい悲しみがあっても、ムーサたちにつかえる歌い手が、むかしの人々のほまれと、オリュンポスの神々を歌えば、その人はすぐに重い心をわすれ、悲しみを思いださなくなる」

プレ男歌を聞くと、悲しいことをわすれられる…。それがムーサのおくりものなんだね。

『神統記』では、ムーサにつかえる歌い手が、むかしの人々のほまれと神々を歌えば、悲しみをかかえた人も、すぐにその重い心をわすれる、と書かれています。
まとめ
- ムーサは、ゼウスと記憶の女神ムネモシュネの9人の娘
- ヘリコン山でおどり、夜は霧につつまれて神々を歌う
- 羊飼いのヘシオドスに月桂樹の枝をあたえ、神の声をふきこんだ
- いちばん上はカリオペ。ムーサが目をかけた王の口からは、やさしい言葉がながれる
- ムーサにつかえる歌い手の歌は、人に悲しみをわすれさせる
- ムーサの歌くらべのムーサとピエロスの9人の娘、竪琴の神アポロン、『神統記』のガイア(大地)もどうぞ
参考文献
- Hesiod. Theogony, ll. 1–115(英訳:H. G. Evelyn-White、1914年). In: Hesiod, the Homeric Hymns, and Homerica. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/348 (閲覧日:2026年10月12日)
- メトロポリタン美術館. Marble sarcophagus with the contest between the Muses and the Sirens, 3rd quarter of 3rd century CE(10.104、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/248205 (閲覧日:2026年10月12日)
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