
プレ男「ラドン」って、怪獣の名前じゃなかったっけ?

メル美ギリシャ神話にも、黄金のりんごを守る竜「ラドン」がいるんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 世界の幻獣、今回は黄金のりんごの番人ラドンです。ヘシオドス『神統記』(H.G.エヴリン=ホワイト訳、1914年)とアポロドーロス『ビブリオテーケー』(J.G.フレイザー訳、1921年)の英訳をPerseusデジタル図書館で、アポロニオス『アルゴナウティカ』(R.C.シートン訳)の英訳をプロジェクト・グーテンベルクで読みました。
プロフィール
| 名前 | ラドン(名前が出てくるのはアポロニオス。ヘシオドスとアポロドーロスでは「蛇」「竜」) |
| 役目 | 黄金のりんごの番人。りんごの園には、ニンフ(森や泉、川の源、山などに住む、女性の姿の精霊)のヘスペリデスもいる |
| 姿 | アポロドーロスでは「100の頭をもつ不死の竜」。いろいろな声で話す |
| 親 | ヘシオドスでは、ポルキュスとケトの末の子。アポロドーロスでは、テュポンとエキドナの子 |
| 出典 | ヘシオドス『神統記』333〜336行/アポロドーロス『ビブリオテーケー』第2巻5章11節/アポロニオス『アルゴナウティカ』第4巻 |

エルコレ・プロカッチーニ(子)「ヘスペリデスのりんご」(「ヘラクレスの功業」より)17世紀。ペン、インク。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
ヘシオドス:世界の果ての「金のりんごの蛇」
- ヘシオドスは、ケトがポルキュスと結ばれて、いちばん末の子として「黒い大地の奥深く、果ての境で、全部が金でできたりんごを守る、おそろしい蛇」を生んだ、と書いています
アポロドーロス:ヘラクレス11番目の功業
- ヘラクレスの11番目の功業は、ヘスペリデスの黄金のりんごを持ち帰ることでした。王エウリュステウスが、アウゲイアスの牛小屋とヒュドラの功業を数に入れなかったためです
- りんごは、ゼウスがヘラと結婚したとき、大地からゼウスに贈られたもの。場所は「リビアだという人もいるが、そうではなく、ヒュペルボレオイ人の国のアトラスのもと」とアポロドーロスは書いています
- 守っていたのは、テュポンとエキドナの子の、100の頭をもつ不死の竜。いろいろな声で話しました。ヘスペリデスのアイグレ、エリュティア、ヘスペリア、アレトゥサも見張りについていました

プレ男100の頭の竜!どうやってりんごを取ったんだろう。
アトラスとの「天をささえる」とりひき
- アポロドーロスによると、ヘラクレスはプロメテウスの助言で、天をささえている巨人アトラスに、りんごを取りに行ってもらいます。そのあいだ、ヘラクレスがかわりに天をささえました
- 3つのりんごを取ってきたアトラスは、天をささえたくないので「自分がエウリュステウスにとどける」と言い出します
- ヘラクレスは、プロメテウスの助言どおり「頭にあて物をするあいだ、少しだけ天を持っていてほしい」とたのみます。アトラスがりんごを地面において天を受けとると、ヘラクレスはりんごを拾って立ち去りました
- ただし、「アトラスからもらったのではなく、番人の蛇を殺して、自分でりんごをもいだ」という説もある、とアポロドーロスは紹介しています
- りんごはのちにアテナがもとの場所にもどしました。りんごはどこにおいてもよいものではなかったからです
アポロニオス:ラドンの最期
- アポロニオス『アルゴナウティカ』第4巻では、アルゴー船の英雄たちが、のどのかわきに苦しみながら、アトラスの園の神聖な野にやってきます
- そこは、「この国の蛇ラドンが、きのうまで黄金のりんごを見張っていた」場所でした
- けれどもラドンは、ヘラクレスに打たれて、りんごの木の幹のそばにたおれていました。しっぽの先だけがまだ動いていましたが、頭から背中まではもう息がありません
- 矢が傷口に残したレルネのヒュドラのにがい胆汁で、傷にたかったハエまでかれて死んでいました
- そばではヘスペリデスが、金の髪に白い腕をかかげて、高い声で嘆いていました

メル美「きのうまで」守っていたって…。英雄たちは、ほんの少しの差で間に合わなかったんだね。

アポロドーロスによると、黄金のりんごを守っていたのは、テュポンとエキドナの子で、100の頭をもち、いろいろな声で話す不死の竜でした。
まとめ
- ラドンは、ヘスペリデスの園で黄金のりんごを守る竜(名前はアポロニオスに出てくる)
- ヘシオドスではポルキュスとケトの子、アポロドーロスではテュポンとエキドナの子で、100の頭、いろいろな声
- ヘラクレスの11番目の功業で、ヘラクレスはアトラスをだましてりんごを手に入れた(蛇を殺したという説も)
- アポロニオスでは、ラドンはヘラクレスの矢でたおれ、矢にはヒュドラの胆汁が残っていた
- アルゴー船の旅の巨人はタロス、親はエキドナ、矢の胆汁のもとはヒュドラ、12の功業はヘラクレスの記事で
参考文献
- Hesiod. Theogony(英訳:Hugh G. Evelyn-White、1914年). 333–336. Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0130:card=334 (閲覧日:2026年10月5日)
- Apollodorus. The Library(英訳:Sir James George Frazer、1921年). 2.5.11. Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0022:text=Library:book=2:chapter=5:section=11 (閲覧日:2026年10月5日)
- Apollonius Rhodius. The Argonautica(英訳:R.C. Seaton). Book IV. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/830 (閲覧日:2026年10月5日)
- メトロポリタン美術館. Ercole Procaccini the Younger, The Apples of the Hesperides, from “The Labors of Hercules”, 17th century(80.3.63、パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/340230 (閲覧日:2026年10月5日)
- Homer. The Iliad, Book 20, 7–9(英訳:A.T. Murray). Perseus Digital Library. https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:text:1999.01.0134:book=20:card=1 (閲覧日:2026年10月8日)
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