
プレ男子ジカをかわいがりすぎて、シカに生まれかわっちゃった!? どういうこと?

メル美インドでは、死ぬときに心にあったものが、次の生まれかわりにつながると考えられていたんだって。そのあとの話が、とても深いの。
こんにちは、Dr. Taro です。 神話の解説、今回はインド神話のバラタ王と子ジカです。『ヴィシュヌ・プラーナ』第2部第13章(M.N.ダット英訳、1896年、プロジェクト・グーテンベルク)を読みました。この話は、聖仙パラーシャラが、弟子マイトレーヤに語る形で書かれています。同じ『ヴィシュヌ・プラーナ』の話はドゥルヴァとプリトゥへ。
プロフィール
| バラタ | 地をおさめた王。王国も、むすこも妻もすてて、聖地サーラグラーマで修行した |
| 修行 | いつもヴィシュヌの名をとなえ、夢の中でも、ほかのことばは口にしなかった |
| 子ジカ | マハーナディー川で、流されそうになったのを助けた |
| 生まれかわり | シカに生まれかわり、そのあとバラモンに生まれかわった。どちらも前の生をおぼえていた |
| 人足として | ソーヴィーラの王のこしをかつぐ役にかりだされた |
| 王への問い | 「わたしは疲れていない。こしをかついでいるのは、わたしではない」 |
1. 川の子ジカ
- バラタは、サーラグラーマで長く修行し、「ヤジュネーシャ、アチュタ、ゴーヴィンダ、マーダヴァ、アナンタ、ケーシャヴァ、クリシュナ、ヴィシュヌ、フリシーケーシャ」と、神の名だけをとなえていました
- ある日、マハーナディー川で水をあびていると、子をおなかにやどしたメスジカが、水を飲みに森から出てきました
- そのとき、すべての生きものをふるえあがらせるライオンのほえ声がひびきました。おどろいたメスジカが岸へ大きくとびあがったひょうしに、子ジカが生まれて、川に落ちました
- バラタは、流されていく子ジカをすぐにつかまえて、助けました。母ジカは、むりをしたせいで、横たわって息をひきとりました
2. 子ジカのことばかり
- バラタは子ジカをいおりにつれて帰り、毎日えさをやって育てました。子ジカはいおりのまわりで草を食べ、トラをこわがって、バラタのそばにかけよることもありました
- 友も、王国も、むすこも妻もすてたバラタでしたが、この子ジカには、とても強く心をひかれるようになりました
- 子ジカが長く帰らないと、「オオカミにつれさられたのでは、トラに食べられたのでは」と心配して、こう言いました。「地面は、あの子のひづめのあとで茶色になっている。わたしをよろこばせるために生まれたあの子は、どこへ行ったのだろう。……生えはじめた角で、わたしのうでをこすっていた」
- 子ジカのことで心がいっぱいになり、修行の、心をしずめるいとなみは、とぎれるようになりました

メル美家族も国もすてたのに、子ジカだけは手ばなせなかったんだね…。気持ちはよくわかるな。
3. シカに生まれかわる
- バラタは死ぬとき、目の前の子ジカだけを見て、ほかのものは何も見えませんでした
- そのため、バラタは、ジャンブマールガの森で、前の生をおぼえたシカとして生まれかわりました
- 前の生を思いだしたシカは、世の中に心をひかれないように、母をはなれて、ふたたび聖地サーラグラーマへ行き、かれた草や葉を食べてくらしました
- そのシカが死ぬと、バラタは、修行にはげむ家のバラモンとして、やはり前の生をおぼえたまま生まれかわりました
4. わざと遠ざけられる
- バラモンに生まれたバラタは、すべてのものを同じものとして見る知恵をもっていましたが、師について学ぶことも、儀式をすることもせず、聞かれても、ととのわないことばで答えました
- 物語は、「人からうやまわれすぎると、心をしずめることのさまたげになる。人から遠ざけられる修行者は、修行をなしとげる」という考えを語ります。バラタは、そう考えて、わざと人から遠ざけられるようにふるまったのです
- 父がなくなると、兄弟たちに畑ではたらかされ、わずかな食べものしかもらえませんでしたが、バラタは牛のようにじょうぶでした
5. こしをかつぐ人足
- あるとき、ソーヴィーラの王の門番が、バラタを、ただではたらかせてよい者と見て、王のこし(かご)をかつぐ人足にかりだしました。王は、聖者カピラのいおりへ、教えを聞きに行くところでした
- ほかの人足はいそいで進みましたが、バラタはかつぎ棒を見つめて、ゆっくり進むので、こしがかたむきます。王は「疲れたのか。少ししか運んでいないのに。じょうぶそうに見えるが」と言いました
- バラタは答えました。「王よ、じょうぶなのはわたしではありませんし、こしをかついでいるのも、わたしではありません。わたしは疲れていませんし、疲れることもできません」
- 「足は地面に、すねは足に、ももはすねに、……肩はむねにささえられ、こしは肩にのっています。それが、どうしてわたしの荷でしょう。わたしも、あなたも、ほかの人も、元素からできています。たましいは清らかで、ほろびず、ふえもへりもしません」
- それを聞くと、王はすぐにこしからおりて、バラタの足にふれ、「おろか者のすがたをした、あなたはだれですか」とたずねました。こうして、王とバラタの問答がはじまります

プレ男王さまが、人足の話を聞いて、こしからおりたんだ! 見た目だけで人をきめつけちゃいけないってことだね。

ダット訳の『ヴィシュヌ・プラーナ』では、バラタは死ぬとき子ジカだけを見ていたため、前の生をおぼえたシカとして生まれかわった、と語られています。
まとめ
- 修行者となった王バラタは、川で助けた子ジカに強く心をひかれた
- 死ぬときも子ジカだけを見ていたため、前の生をおぼえたシカに生まれかわった
- 次にバラモンに生まれかわると、わざと人から遠ざけられるようにふるまった
- こしをかつぐ人足として、ソーヴィーラの王に「こしをかついでいるのは、わたしではない」と語り、王はこしからおりて教えをこうた
- 同じ『ヴィシュヌ・プラーナ』のドゥルヴァとプリトゥ、バラタがとなえた神ヴィシュヌもどうぞ
参考文献
- Manmatha Nath Dutt(英訳). A Prose English Translation of Vishnupuranam(Calcutta, 1896). Part II, Section XIII. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/66208 (閲覧日:2026年10月12日)
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